「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2007年12月31日

第9話 さらなる嫁交渉!!

   思っていたより、「武造の嫁交渉」が難しいと感じた関衛門とヨネは、二人で静かに、囲炉裏で温まりながら、大根の漬物を“パリパリ”と食べながら、ため息をつくばかりでした。

   そこへ、学校から帰ってきた武造は、両親がいつもと違うことに気づきます。

   そして、ヨネの腕を揺すり、いつもの母ちゃんの表情に戻るようにヨネの目をジッと見ます。

   そんな武造を見たヨネと関衛門は、この武造のために!!

   そして、この武造から自分たちの家系が存続するんだ!!

と改めて思い直した関衛門とヨネは、再びお姉のところに行くことに力を得ることが出来たのです。

   《春の雪は解け始めていました》

 関衛門とヨネは、大根の漬物となすの漬物を持って、再びお姉の家に向かいます。

二人は、先回のこともあり・・・どのように話し切り出したらよいだろうか・・・どうしても、マツを養女にくれないと言ったらどうしようか・・・などと考えて、お姉の家に向かう二人の足取りは重かったのでした・・
   


  お姉の家に着いて、二人は顔を見合わせ、うなずきます。

  そして、ヨネが祈る思いでお姉とお兄に声をかけます。

   ヨネ :この前は突然、お姉たちが戸惑うことを言って申し訳なかったなー。

そして、持ってきた漬物を差し出し、お姉たちの感情を乱したことを謝りました

(当時は、食糧が少ない時代、漬物の差し入れは有難いものでした)

お姉は、関衛門とヨネが再び尋ねてきたので、またマツのことかと思い、すぐに帰ってもらおうかと思ったんですが、二人が持ってきた「大根とナスの漬物」を見て、少し気持ちが和みました。

   お姉 :オラたちも、ちょっと感情的になってぇー、つい、オメーたちを追い返してし
       まってぇー・・悪かったず・・。


ヨネと関衛門は、そのお姉の柔らかくなった態度に、少しばかり“ホッ”としたのでした。

そして、お姉たちの気持ちがよ〜く分かるという感情移入をしながらも・・・・自分たちが、家系存続のことを心配してることを話しました。

家系が途絶えてしまう不安が、どんなに大きいものかも分かってもらおうとしたんです。

  関衛門 :オラたちの家系が途絶えてしまうんじゃーねーかと考えると、不安で夜も
        眠れねーんだ。

   お兄 :ほんだかー、それはオメーたちにとっては大変なことだずなー・・・

  関衛門 :ほんだー、それで武造の嫁を今から考えてたんだー、小さい頃からマツを
        養女にしたら、武造が耳が聞こえなくても
        互いのことが、分かり合うんではねーかと・・・・。

   お兄 :そんなことさ考えておったんだなー。


  《ここに、近所に住む吾一が尋ねてきました》

   吾一 :関衛門とヨネではねーか・・・なんだべー深刻な顔さして・・・・
        何かあったんだべか?

  関衛門 :いや、なんでもねー・・お兄、お姉、オラたち今日はこれで帰るべず・・
        


関衛門と吾一は、いつも意見が合わず、互いに冷ややかな目で見ていたんです。

   お姉 :もう、帰るんべか、漬物ありがとう

  《関衛門とヨネは、今日のお兄とお姉の柔らかい態度に安心し、足取りも少し軽やかでした。》

   吾一 :関衛門たち、何だず?何かあったんだべかー?

   お兄 :いや、ちょっと武造のことでオラたちに話しがあったんだー。

   吾一 :オラに話してみてけろ、何でも相談に乗るべから!!


吾一は、悪知恵が働く人で、お兄たちは、この吾一に話したことで、お兄たちの気持ちが大きく揺らぎました。

吾一が、どんな悪知恵を入れたのかは、次の記事に続きます。
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2007年12月27日

第8話 武造の嫁交渉!

  耳が聞こえなくなった武造の嫁をどうするかを話し合って、合意した関衛門とヨネは思い切った行動に出ます!!

  朝になり、武造が学校に行く時間になりました。
  
  関衛門は、武造の肩に手を置き、武造の目を見て、{しっかり勉強してくるんだぞ!!}と言います。

  《武造が普段どおりに学校に行った後、湿っぽい春の雪が降り始めました》

関衛門とヨネは近所に住むヨネのお姉の家に行きました。

   ヨネ : お姉、居るかー?

   お姉 : ヨネか〜 どうしただ?二人そろって・・どうしただ・・・?

   ヨネ : 今日は、お姉とお兄に話しがあって来たんだけども・・

   お姉 : 話しが・・?まんず家の中さ上がってけろ!!


   ヨネ : 実は、とても大事な話しだー!!お兄も呼んでけてくれねーかー!!

   お姉 : 裏におるから呼んでくる、待っててけろ!!

   お兄 : オラたちに大事な話しって、何だべ?

  関衛門 : オラんとこの武造が、何故、耳が聞こえなくなったかは知ってると思う
          が・・・・武造は生まれつき耳が聞こえなかったわけではねーと。
  
   お兄 : ほんだなー!!武造は、赤ちゃんの時に耳の中に「豆」をいっぱい詰めら
        れて鼓膜が破れたんだなー・・・従兄弟がひでーことしたもんだー・・・・

  関衛門 : ほんだ・・・その武造をオラたちは、耳が聞こえなくとも、
        人並みに暮らせるように一生懸命に育ててるんだ。武造の将来のことも考
        えてるんだ。

   お兄 : オラもオメーたちが、武造を大事にに育ててることは知ってるだー、だか
         ら、武造は耳が聞こえなくても、明るいもんなー。

  関衛門 : ほんで・・・オラたち、武造の将来のことでおねげーに来たんだが・・。

   お兄 : 武造の将来のこと?・・オラたちに何か出来ることがあるべかー?

  関衛門 : お兄のとこには、子供が5人いるべー・・その中の3番目の娘、マツを
         オラんとこに養女にくれねーかー?

   お兄 : マツを・・オメーのとこに養女に・・?

  関衛門 : ほんだー、今は食べていくにも厳しい時代だー、
          マツにご飯食べさせてあげるから、養女にくれねーかー?

   お姉 : 何を言ってるだー!!マツを養女にやること出来るわけねーべー(怒る)

   お兄 : オメーはちょっと黙っててくんねーかー、・・・・・ほんで、マツをオメーとこ
         の養女にして、武造と一緒にするって事だな・・・

  関衛門 : ほんだー、武造と一緒に育てて、大きくなったら二人を結婚させたいと
         考えているだー・・・どうか、おねげーだ!!マツを養女にくれてけろ!!       
                 
   お姉 : そんなこと、出来るわけねーべー(怒る)

   お兄 : オメーたちも、大したこと考えたもんだずなー・・・だけんど・・
         それは出来ねー・・悪いが、帰ってくんねーかー・・。

   ヨネ : お兄、お姉、おねげーだ!!マツを養女にくれてけろ!!

   お姉 : ヨネ、オメーの頼みでも、これだけは聞けねー、
        いくら食べていくのが厳しくてもマツは、やらねーだー!!

   ヨネ : マツを大事に育てるから、おねげーだー!!

   お姉 : 何度、頼まれてもマツはやらねー、今日は帰ってけろ。

   お兄 : オラも、同じ気持ちだ、帰ってくんねーかー。

  関衛門 : 今日は、オメーたちの気持ちを乱して悪かった・・・・・すまんなー・・
         ヨネ、帰ろう・・・
                    
  関衛門とヨネは、がっくりと頭を垂れて帰っていきました・・。

《真っ白い雪を踏む“ぎゅっぎゅっ”という音だけがもの悲しく聞こえていました》

  しばらく沈黙していた関衛門は、深いため息をつき・・・

一回のお願いではダメだと分かり、数日してから再びお願いに行こうとヨネに話しました。

  それから3日たって、二人は再びお姉の家に向かいます、

  お姉とお兄は、どう応じるでしょうか・・?

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2007年12月17日

第7話 武造の嫁計画!

  【関衛門の思いには、息子、武造の嫁のことで、いろんな事が浮かんできます。】

 (赤ちゃんの時から、耳が聞こえなくなった武造に「嫁」は来てくれるだろうか・・・?

  人の話は聞こえず、声を出せても言葉にはならない・・・・・

  そんな息子、武造の嫁になって一緒に生涯を送っていく女性はいるだろうか・・・?

  心優しい女性がいて、武造の良い特質に目を留めて、結婚してもいいと思っても、きっと周りの反対でダメになるだろう・・・

  この時代(明治)、ろうあ者のいる家への偏見はかなりのものだ・・・・・

  でも、武造自身からは・・・きっと自然に結びつく人は出来ないかもしれない・・・

  自分の気持ちを相手に、うまく伝えたりして・・細かいところの意思を通わせることが出来ないからだ・・・・)

  関衛門は、日々・・武造の嫁のことを考え続けました。

  そして、ついに!!!ある事を考え出しました!!!

  関衛門は、自分が考えたことを妻のヨネに話しました。

 《時は、深く積もっていた雪も解け始めた頃です》

  関衛門 :{武造の嫁んことだけども、オメーはどうしたらえぇーと思うだか・・・?}

   ヨネ :{オラも武造の嫁をどうしたらえぇーかと考えておったんだ!!耳の聞こえ
        ねー武造だ! 誰も、武造の嫁さ来てくんねーべずー・・}

  関衛門 :{ほんだ・・このままでは武造は、嫁さんもらわんねーべー、武造が嫁さも
        らわねーと、オラたちの家系が途絶えてしまうべず・・・}

   ヨネ :{そなんこと・・・困るべず・・・オラたちの家系・・・絶対、途絶えさせたらいけ
        ねー・・・あぁー・・どうしたらいいべかー?}

  関衛門 :{ほいで、オラに考えがあんべけど・・・・オメーは、どう思うべか・・・?}

   ヨネ :{なんか、えぇ方法があんだべか?}

  関衛門 :{武造は、まだ小学校2年生だ、今から嫁さんを準備するのはどうだべ
        か?}

   ヨネ :{今から嫁さんを準備する・・?どういうことだべ?}

  関衛門 :{オメーのお姉のとこのマツを、オラたちの養女にするのは・・どうだべ
        か・・?マツは今年から小学1年生だ・・・今は、家族皆が食べて
        いくのも厳しい時代だ・・・・マツを食べさせてあげるから、養女
        にくれまいか・・?}

   ヨネ :{お姉のとこのマツをオラたちの養女に・・?}

  関衛門 :{ほんだ、オラたちの家で武造と一緒に養っていくんだ!!そして、結婚
        出来る年になったら、結婚させる!!!・・・どうだべか・・?}

   ヨネ :{ほー!!こりゃまた・・たまげた!!・・凄いこと考えたもんだず!!・・・ほ
        んだなーこうしないとホントに、武造は結婚できねーかもしれねー・・・・
        明日、お姉に聞いてみんべー}

  関衛門 :{賛成してくれたべか!良かった!!明日、一緒にお姉の家に行って、事
        情をよ〜く話して、マツを養女にもらえるようお願いしようなー}

  このようにして、関衛門とヨネの話し合いは一致して、武造の嫁計画が始まったんです。

  両親が、自分のために着々と、将来を準備していっていることを知らない武造は、まだまだ肌寒く気温の低い部屋のお布団の中で、ぬくぬくと眠っていました。

  武造の嫁計画!!いざ!!ヨネのお姉の家に話し合いに!!!
  結果、どうなったんでしょうか・・?

  武造の将来を左右する、その話し合いについては次の記事に続きます。
posted by junko at 16:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月10日

第6話 武造、耳が聞こえないというハンデを乗り越えて!!

  私の夫(マンリ)のお爺さん・武造は赤ちゃんの時にねたみにかられた人から、耳が聞こえなくなるという障害を負わされました。

  その武造も、両親の愛情と忍耐強いお世話で、普通の学校に行けるようになりました。

  言葉を覚える前に、耳がきこえなくなってしまったので言葉も話せません!!

  もちろん声を出しても、言葉にはなりません!!

  耳が聞こえないというハンデを負っているのは、かなりたいへんなことですね。

その武造が、健聴者の皆と一緒に授業を受けることになりました。

  先生が「起立!!」と言うと皆が一斉に立ちます!!

  それを見た武造は、自分も立つんだ!!ということを悟りました。

  武造は、耳が聞こえない分、人一倍、感が利きました!!

  先生の話しも皆の声も聞こえないのですが、周りの人からは

  武造が、耳が聞こえない人とは思えないくらいでした!!

  文字も、感で分かりました!! 漢字を書くことができました。

  でも、何故か?ひらがなは書けませんでした。

  何故?漢字の方を覚えたのでしょうか?

  武造の家族の話によると、武造は文字を「絵」のようにして覚えたのではないかと言っています。

  漢字には意味があるので分かったのではないか?と!!

  学校の先生も、武造の感の良さにビックリでした!!

  それで、武造を特別扱いするのではなく、他の生徒のように普通に分け隔てなく指導していきました。

  また、子供にとっては遊びも大切ですね!!

  武造は、感の良さでごく普通に他の子供たちと一緒に遊ぶことが
できました。

  ですから、武造は学校がイヤではありませんでした。
  むしろ、楽しかったのです!!

そんな、息子の様子をみて関衛門とヨネは、胸をなでおろしました。

  でも、関衛門とヨネには次の心配がありました!!

  明治時代のことです!!自分の家系を世々に残すのは重大なことですね!!
  関衛門とヨネは、早くも武造の結婚について考えました。

  耳の聞こえない息子に嫁は来てくれるだろうか・・?

  それで二人は、ある事を考え出しました!!

  その、武造の嫁計画については次の記事に続きます。
posted by junko at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月03日

第5話 武造、普通の学校へ!

  耳が聞こえないというハンデを負いながらも、

  両親(関衛門とヨネ)の深い愛情につつまれ、“スクスク”と育っていった武造もついに・・学校にいける年齢になりました!!

  関衛門は、自分の子が耳が聞こえないのを特別扱いにしないように、普通の学校に入れることに決めました!!

  学校で勉強をする!!ということを、武造にどのように分からせたら良いでしょうか・・・?

  説明することも出来ないので、まず武造の手を引いて「学校」に連れて行って見せて、これから「ここに来るんだ」ということを分からせました。

  武造は、親が真剣に自分に何かを伝えていることを感じたようです。
  学校にいく初日、武造は親に学校の準備をしてもらいながら・・

自分は、これから新たなことを始めることを感じたようです。

  親に連れられて学校に行きました・・・・第一日目です!!

  武造は、ちょっと“わくわく”してました。何があるんだろう!!期待に胸が弾みました!!

  目を“きらきら”させて、親の顔を見ました!!

  関衛門は、“じっ”と武造を見つめ、{いいか武造、これからお前はここで、皆と一緒に勉強するんだぞ!!}

  と目で言い聞かせました。

  そして、武造の手を離し関衛門とヨネは帰ろうとしました。

  (とうちゃん、かあちゃんがいなくなる・・!!)

  武造は、まさか親が自分を置いて帰るとは思っていませんでした!!学校は親も一緒にいるものだと思っていたのに・・・

  一人残されることを感じ取り激しく泣き出したんです!!不安がこみ上げてきたんでしょう!!

  親のあとを追いかけて、自分も帰ろうとしました。
 
  (もちろん、ご想像されたと思いますが)・・・関衛門とヨネは、武造が初めて自分たちの側から離れて、たった一人で学校に行くことが心配でなりませんでした。

  それでも、武造が普通の学校に行くのは本人のためになるという
強い信念があったので、武造が学校に行きたがらなくても

  毅然とした態度で、終始一貫して学校に行かせ続けたんです!!

  武造は、学校は自分と同じ年齢の子供がたくさん集まることを
見て知っていきました。

 耳が聞こえなくても、皆が席に座れば・・自分も座るものだと分かり、皆が立てば・・自分も立つんだ・・というふうに

  見よう見まねで・・学校というところに馴染んでいきました!!

  学校から帰ってきた武造の表情を見て、関衛門とヨネは、武造が
だんだん、学校に慣れてきたことが分かり安心しました。

  さらに、学校での武造については次の記事に続きます。
posted by junko at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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