「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年01月30日

第13話 マツの髪を梳く武造!

  マツが関衛門の家に養女に来て、初めて迎えた朝は、武造も学校が休みの日です。

  《空気がまだ冷たく、雪もところどころに残っていました》

  武造は、まだ外がうっすらと明るくなったばかりの早い時間に起きて、マツが起きてくるのを待っていました!!

  武造にしては、いつもより早起きです!!

  武造は、自分に妹が出来た!と思い、早くも兄気分になって“わくわく”していました。

  マツが起きてくるまで、外に出たり中に入ったり落ち着かないようです!!

  耳が聞こえない武造は、マツが寝てる部屋のふすまが早く開かないかと見てばかりでした!!

  ようやく開きました!!  出てきたのはヨネでした!!

 ヨネ :{武造、随分と早くに起きたなー、今日は学校休みでねーかー}と言いながら、
      ヨネは武造の気持ちを察し微笑みました。


  ヨネが、朝ご飯の準備を始めました。

  《薪が“パチパチ”と音をたて、煙が程よく漂い、ご飯が炊けたときの香ばしい匂いがしてきました》

  武造はヨネの横に座り、薪をくべたりしてヨネのお手伝いをします。

  いつもなら、武造は寝ている時間なのに今朝は早く起きて、お手伝いです!!(よほど、嬉しいのでしょう!!)

  ご飯が炊けたときの香ばしい匂いで、マツは目が覚めました。

  (ご飯!!腹いっぱい食べれる!!)と思い、飛び起きました!! そして、部屋から出てきました!!

  武造は、マツが起きたのを見て喜び、ヨネの腕を揺すり・・
マツが起きたことを伝えます。

 ヨネ :{マツ、よー寝れたようだなー、朝ごはん食べる前に顔を洗っておいで!!}

  マツが顔を洗いにいくと、武造もついてきました!!

  武造はマツが顔を洗っているのを“じっ”と見てましたが、側にある「櫛」に目が留まります!!



  ナント、武造はその「櫛」を手に取ると、マツの髪の毛をその「櫛」で梳き始めたんです!!

  マツの髪は、真っ黒の直毛で肩すれすれまで伸びてました。

  武造は、とても嬉しそうにマツの髪を撫でながら、櫛をとおしました!!

  寝起きのマツの髪の毛は、あちこちと絡まったりしていましたが、武造はそれを丁寧に梳かし始めたんです!!

  マツは、ビックリしましたが、自分が大事に思われていると感じ
武造が自分の髪をとかすのを止めませんでした。

  その様子を見たヨネは、武造がよほど嬉しいんだなーと思い、
そのことを関衛門に話し、二人は微笑みます!!

 関衛門 :{マツ、ご飯食べるからきてけろ!}

  薪で炊いたご飯は、香ばしく食欲をそそります!!

  武造は、ご飯を食べながらもマツが気になって仕方ないようです。そして、またもや驚く行動をします。

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2008年01月22日

第12話 武造、心“わくわく”

  マツを養女にと決まった、関衛門とヨネは早速、その準備に取り掛かりました。

  耳が聞こえない武造に、マツが養女にくることをどのように分からせたらいいでしょうか?

  武造は学校から帰ってきました、目を“きらきら”させて顔が赤らんでいます!!走ってきたのでしょう!!

  実は、朝学校に行く前に関衛門から、{学校から帰ってきたら大事な話しがある}と武造に身振りで話していたんです。

  武造は、どんな嬉しいことがあるのか、胸を“わくわく”させていました!!

  それで、学校から帰ってくるなり、関衛門の腕を揺すりました!!
  関衛門とヨネは、武造をマツの家に連れて行きます。

  お兄とお姉が出てきて、武造を見ると“にっこり”しました。

  マツは、親の後ろに隠れてました。

 《丸顔で、頬が赤らんだ愛らしいマツは、親の背後から顔を出して、じっと武造を見ました》

  武造も、マツを見ると遊びたくなりましたが、

  でも、今日は何だか雰囲気が違うと思い、様子を見てることにしました。

  関衛門は、マツに話しかけます。

  関衛門 :{マツ、オラんとこにきてくれることお父とお母に聞いただー、これからは、
      オラたちの家でこの武造と一緒に暮らすだ!! ご飯も一緒に食べようなー}


  マツはご飯と聞いて嬉しくなりました。(お茶碗に「てんこ盛」のご飯を食べてるところを想像しました)

  マツ :{ご飯、腹いっぱい食べれるんだか〜?}

  マツの率直であどけない言葉に関衛門とヨネは微笑みました!!

  ヨネ :{マツ、オランとこにきたら、なんの遠慮もいらねーだー、腹いっぱい食べてえ
      えからな}


  お兄とお姉は、マツを養女にするための準備を終えたので、マツを連れて行ってもいいと言いました。

  マツの生活用品を、簡単にまとめた「風呂敷」を持ってきて、関衛門の家まで(近所)お兄とお姉も一緒に歩きました。

  武造は、何のことか分からず、ただ成り行きを見ていました!!

  関衛門の家に着いたら、お兄とお姉は帰って行きました!!

  マツは、ちょっと不安になりましたが、ヨネが、これからご飯を作ると言ったら、マツは嬉しくなり、不安も消えました。

  ヨネが夕ご飯を作っている間に、関衛門は武造にマツが養女に来たことを分からせようとしました。

  これからはマツも一緒にご飯を食べ、この家でマツも寝ることなどを「手振り、身振り」で話しました。

  耳が聞こえない分、武造は感が効く子でした!!

  関衛門の手振り、身振りで、そして、親同士のやり取りを見ていて、マツがこれから自分の家で暮らすことが分かりました!!

  武造は、どう思ったんでしょうか・・・・?

  武造は一人っ子でしたので、「自分に妹が出来た!!」と思い、
嬉しくなったのです!!

  武造は、心“わくわく”させてマツを見ました!!

  マツの方はというと、ヨネがご飯を作ってるところを見て、早く腹いっぱい食べたいな〜と思ってました。

  ヨネが、夕ご飯を作り終え、新たに加わった家族の一人、マツを囲んでの初めての食事です!!

  マツが養女に来た“めでたい日”です!!「お雑煮」でした!!



  武造は、嬉しくて・・・「お雑煮」を食べながらもマツを“ちらちら”と見てばかりです。

  マツは、「お雑煮」をおかわりして食べて、腹いっぱいになり嬉しくなりました!!

  関衛門とヨネは、武造がマツが養女になったことを喜んでいるのを見て安心しました。

  ヨネ :{マツ、今日からオラと一緒に寝ようなー、今日からオラをお母(かー)と思っ
      て甘えてええからな}


  マツの養女としての初日、穏やかに過ぎました!!
  
  武造は、興奮していて早く、明日にならないかな〜と思いました!! 自分の「可愛い妹」と遊びたかったんです!!

  心“わくわく”させて寝床に入った武造は心地よい眠りに入りました!!

  マツが養女になって翌日、武造は驚く行動をします!!
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2008年01月15日

第11話 マツが養女に?

  吾一の話を聞いて、それが魅力的に思ったお兄とお姉は、その年に小学一年になるマツを、関衛門とヨネの養女にすることに決めました。

  関衛門とヨネにマツを養女にしても良いことを話し、関衛門たちにとても感謝されたことが嬉しくなりました。

  そして、いよいよマツにそのことを話さなければなりません。

  《マツは、丸顔で頬の赤らんだ可愛い女の子でした》

 お姉 :{マツ、オメーに大事な話しがあるから座ってけろ}

 マツは、お父(とう)とお母(かー)が自分にどんな良いことを話すんだろう・・・・何か自分にくれるんではないかと楽しみになりました。

 お姉 :{マツ、マツはお父とお母の可愛い子だ!!お父とお母もオメーをとても大事
      に思っているだー}


 マツは、ますます何かを貰えるんではないかと思い、胸を弾ませました。

 お姉 :{マツ、よ〜く聞いてけろ、オメーも武造のことは知っておるだー・・・}

 マツは、武造が耳が聞こえないこと、話しも出来ないことを知っていましたが、近所なのでときどき一緒に武造と遊んでいました。



 お姉 :{これからオメーは、武造の家で暮らすんだ。オメーの住む家は、武造の家に
      なるだー}


 マツはお母の思いもよらない話しに訳が分からないでいました。
 
 お姉 :{オメーは、お父とお母の子には変わりはないが、これからオメーは、養女とし
      て武造のお父とお母の子供になるんだ}


 ますます訳の分からなくなったマツは、お父とお母の真剣な表情を見て戸惑いました。

 マツ :{オラの住む家が武造の家とは、どういうことだべ?オラは、ず〜とお父とお母
      の子だべ、ほんなら、何で武造のお父とお母の子になるなんて言うだべ?}

 お姉 :{オメーは、養女になるんだ、だからこれからは、武造のお父とお母が、オメー
      のお父とお母になるんだ、だからこれからは、あの家で住むんだ!}


 マツは、泣きそうになりお父とお母が、本気でそう言ってるのではないと思おうとしました。

 マツ :{オラはお父とお母の子だ、オラはどこにも行かねーだー}

 お兄 :{マツ、武造の家はすぐ近くではねーか、淋しいことはねーだー、武造のお父
      とお母もオメーを大事にしてくれるだー}

 マツ :{オラ、お父とお母の側でねーといやだー!!オラ行かねーだ!!}


 《マツは、悲しくなりわんわん泣き出しました》

  お兄とお姉は、マツが泣き出したことに困り、やっぱりマツを養女にすることをやようかと思いましたが、吾一の話を思い出しました。

 お兄 :{武造の家には、ここよりも食べるものがいっぱいあるだー、ほんだからマツ、
      腹いっぱいに食べさせてもらえるだー}


 マツは、腹いっぱいにご飯が食べれると聞いて、お茶碗にご飯が「てんこ盛」になってるのを想像しました。(いつもご飯をお腹いっぱいに食べれる!!)そう思って嬉しくなりました。

 マツ :{ご飯、お腹いっぱいに食べれるんだか?}

 お父とお母が、そのとおりだと言うと、マツは武造の家にいっても良いように思ったんです。まだ、小さいマツにとって養女の意味も分からず、ただご飯をお腹いっぱい食べれるということだけが魅力でした。

 マツをうまく説得できたお兄とお姉は、実際にマツを養女にする準備をしながら、(武造は体が弱い、きっと早くに死ぬだろう!!そしたら、マツは関衛門の財産を全部受け継いで、誰か健康な男を婿にとったらいい!!)と心の中で思い巡らしました。

 関衛門とヨネは、マツを養女として向かえるにあたって、武造にそのことを伝えなければなりません!!武造はどう反応するでしょうか? 
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2008年01月07日

第10話 吾一の悪知恵!

  耳が聞こえない武造の両親、関衛門とヨネが深刻な顔をしていたことを見逃さなかった吾一は、その理由を知りたくなりました。

  元々、関衛門とは仲が良いほうではなく、冷ややかな関係でしたので、吾一としたらその関衛門に何かあったのでは?と興味津々でした。

  お兄から、武造のことで関衛門から話しがあったことを聞いた吾一は、御節介にもその話に割り込んできます。

  吾一 :{オラに話してみてけろ、何でも相談に乗るべから!!}

  (お兄とお姉は、身内の中での話しなので吾一に話すのは良くないと思い・・・)

  お兄 :{オメーの気持ちはありがてーけど、オラたちの問題だー・・オラたちで、どう
       すっべか考えるだー。}


  (吾一は、オラたちの問題と聞いて、ますます興味をもって、何があったか聞き出したくなりました・・・)

  吾一 :{オラも問題があったときに、お兄たちは親身になってよ〜くオラの話を聞い
       て相談にのってくれただ、その時、オラはとっても有難かっただー。
       オラは思っただー、あの時、お兄たちが賢明な助言をしてくれたので、
       オラはうまくやって来れたと!!お兄たちには、とても感謝してるだー・・・・ 
       ほんだから、オラに出来る事があれば、何でもお兄たちの相談にのってあ
       げてーだー。}


  お兄たちは、以前に吾一の家族に問題が起きたときに、自分たちが相談にのってあげた事を吾一がとても感謝してることに嬉しくなりました。

そして、今度は吾一が自分たちの相談にのってあげたいと真剣に言うのを見て・・話してみても良いように思えたんです。

  お兄 :{実は、関衛門とヨネには、耳の聞こえない子ども、武造がおるだー、親とし
       たらその武造の将来・・・いや、関衛門の家系の存続にも気を悩
       ましているだー・・・このままでは、関衛門の家系が途絶えてしまう
       のではねーかと・・}


  吾一 :{ほぉー、なるほど・・・耳の聞こえない武造は、一人っ子だもんなー・・・嫁を
       もらうことできねーと思い悩んでいるってことだな・・?}


  お兄 :{ほんだ、それで関衛門の家系が途絶えたら大変なことだべー・・・ほんで、
       関衛門からオラたちにマツを今から、養女にくれねーかと相談があっ
       たんだ、そして大きくなったら二人を結婚させるってーことだー}


  (マツを養女に・・・そして二人を結婚させるという思いもよらなかった話に吾一は驚きました)

  吾一 :{ほんで、お兄たちは何て答えたんだべ?}

  お兄 :{マツを養女になんてやれねーと断っただよ、関衛門たち可哀相だけど・・・
       マツをあげることできねーもんなー}


  (吾一は、お兄たちの気持ちが、もっともだと言って話しを聞きながら、ある考えが浮かびました)

  吾一 :{いくら身内からの頼みであっても、やっぱり親としたら、自分の可愛い
       娘っこが耳の聞こえない男のところに嫁にいくより、五体満足の健康な男の
       ところに嫁としてだしてーもんだよなー・・・・}


  お兄たちは、吾一が自分たちの気持ちを理解してくれてることが嬉しく思います。そして、さらに吾一の話しに耳を傾けました。

  吾一 :{でも、こういう見方もあるでねーかー?・・・・・・・見てのとおり、武造は一人
       っ子でとても大事にされてる・・・大事にされ過ぎて武造は体が弱い、
       病気がちだから・・・きっと、長生きできねーはずだ・・}


  お兄たちは、吾一の言うように確かに武造が、病気がちで体が弱いと思っていました。それで、吾一が言うことに関心を持ち始めたんです。

  吾一 :{武造はきっと結婚出来る年齢になるまでには、病気で死んでしまうだー・・
       ほんだから、今からマツを関衛門たちの養女にしていたら、関衛門た
       ちの財産はマツのものになるだー}


  お兄とお姉は、この吾一の考えに驚き戸惑いました。
お兄たちと吾一は、しばらく黙っていましたが、また吾一が語り始めます。

  吾一 :{関衛門たちの財産がマツのものになったら、オメーたちも助かるでねー
       か? 武造が死んだらマツは健康な普通の男を婿にとったらええでは
       ねーか?}


  実は吾一は、武造が死んだら関衛門の財産(関衛門は職業軍人でお金はあったのである)をマツが受け継ぎ、そのマツと自分の息子の吾介を結婚させようと密かに思ったのです。
  
  吾一 :{だから、マツを養女にやっても損はしねーとオラは思うだ}

  お兄とお姉は、吾一の話が自分たちに都合の良い魅力的なことに思えてきました。

  そして、吾一が帰った後、お兄とお姉は関衛門とヨネを呼んで、マツを養女にすることの話をすすめたんです。

  マツを養女にするため、お兄とお姉はマツをどのように説得したのでしょうか?
posted by junko at 16:34 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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