「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年04月27日

第20話 さなぶり

  《武造の住む下井村でも、田植えが進み、田んぼが苗の淡い緑色で染まってきました》

 関衛門の家は、他の家より田んぼの数が少なく、田植えの手伝いもマツの実の両親を頼んだだけで比較的早めに田植えが終わりました。

  田植えが終わると、「さなぶり」をします。

  この「さなぶり」は、田植えの骨折りをねぎらうためのお祝いです。
  お餅をたくさんついて祝います。

  関衛門とヨネは、早速お餅をつくための準備に取り掛かりました。
  ヨネは、あんこ餅にするために小豆も煮始めます。

  蒸したもち米の匂いがすると、武造とマツは嬉しくなって側に近寄ってきました。

  武造は、この蒸したもち米を“あつあつ”で食べるのが好きで、ヨネに手を出して、もらいます。

  武造は、それをマツにもあげて二人で嬉しそうに食べました。

  餅をつくために、「臼」と「杵」が準備されました。

  武造とマツは、興味深そうに関衛門とヨネがすることを見てます。
  「臼」に蒸しあがったもち米を入れ、「杵」で“ペッタン ペッタン”とつき始めました。「杵つき餅」です。

餅状に伸びるようになったら、それを丸めていきます!!

  その時は、武造とマツもお手伝いです!!

  武造とマツは、捏ねられて柔らかくなった餅の固まりを程よい大きさにちぎりながら丸めていきました。

  子供の小さな手でちぎって丸めた餅は、それぞれ大きさがまちまちでしたが、子供たちは大満足で楽しそうです!!

  小豆も煮えて、砂糖と塩を加えて美味しい餡子が出来ると、丸めた餅を餡子にまぶしていきました。美味しい「あんこ餅」の出来上がりです。


  ヨネが「あんこ餅」を近所の人に配るので、マツに一緒に来るように言いました。

  (あんこ餅を近所に配ることによって、自分の家の田植えは終わったことを知らせ、ご苦労様!!を分かち合うためでした)

  マツは内心、近所にある自分の実家にも行けることが嬉しく、実家に着くと嬉しい気持ちがすぐに出てしまいました。

 マツ :{お父ー、お母ー、オラだー、マツだー}

 マツの声を聞いて、お姉(マツの実の母親)が:{おーマツかー、餅出来たかー}と言いながら、家の中から出てきました。

  お姉も、マツが養女にいって田植えを頑張っているのを見て、マツを褒めてあげたいと思っていました。

 お姉:{マツ、田植えもよーがんばっとたなー、餅を作るのも手伝ったんだかー?}

 マツ:{ほんだー、オラも餅を丸めたんだー}

  ヨネが、持ってきた「あんこ餅」をお姉に渡します。

 ヨネ:{マツも餅を丸めてくれただー、これが、そのあんこ餅だー田植えはお蔭様で
終わってーほんとに、ありがとう}


  マツは、やはり実家は心地よく家の中に入ろうとします。

 マツ:{ねえちゃんと「お手玉」して遊んでもええかー}

  でも、関衛門の家では「さなぶり」の祝いを家族でするためにヨネとマツの帰りを待っています。

 ヨネ:{マツ、今日はこれで帰るベー}

  マツは残念そうにヨネに連れられて、帰っていきました。

 家では、「フキの葉」に切り餅を包んだものも準備されてました。

 関衛門:{今年も田植えを無事に終えることが出来ただー、皆よーがんばったなー}

  そして、関衛門が「フキの葉」に切り餅を包んだものを一人一人に配りました。

  家族はそれを食べながら、労をねぎらいます。

  「さなぶり」の祝いも終わり、餅でお腹いっぱいになった武造とマツも心地よい眠りに入っていきました。

  田植えも終わり、今度は山に薪拾いです。

  
武造とマツも薪拾いに行きますが、山で起きた騒動については次の記事に続きます。
ラベル:さなぶり
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2008年04月22日

第19話 田植えの手伝い

マツが小学校に入って、武造も登下校をマツと一緒にしていました。

  その二人も田植えの手伝いをする時期になりました。

  《当時の学校は、田植えと稲刈りの忙しい時期は、学校が休みになっていて子供たちは田んぼ仕事の手伝いをすることになっていました。》

  武造の住んでいる下井村でも見渡すかぎり、田んぼに程よく水が入っていて苗を植える準備が出来ていました。

  大人の人は、良く育った苗をどんどん植えていきます。



  子供たちの仕事は、苗代(苗を育てる場所)から運ばれてきた苗を大人たちに渡すことでした。

  武造とマツは、小さな手にいっぱい苗を取って、それを関衛門とヨネがいる田んぼにもって行き渡します。

  関衛門とヨネは、田んぼのぬかる中でもどんどん苗を植えていきます。
 関衛門 :{マツ、早く苗を持ってきてけろ!}

  マツは苗を持っていき、関衛門が田んぼの淵から離れたところにいたので、マツも田んぼの中に入り苗を渡します。

  そこで武造が得意げに、マツに自分のすることを見るように促しました。

  武造は、苗のかたまりを田んぼの中ほどにいるヨネに向かって投げ、苗は程よいところに落ちました。

  それをヨネは、また植えていきます。

  マツは、それを見て面白く思い、自分も苗を関衛門とヨネの側に落ちるように投げていきました。  

  武造とマツは、面白くて苗をどんどん投げていましたが、マツが投げた苗が、中腰になって植えてるヨネの顔の側に“バシャ”と落ちて泥水が顔にかかってしまいました。

 ヨネ :{こらー!何すんだべー、オラの顔めがけて苗を投げるんでねぇー}

  ヨネの怒った声を聞いたマツは、苗代のところに走って行きます、(苗代では、マツの実の親が苗取りをしていました)

  武造もマツの後を追って走って行きました。

  武造とマツは、少し余裕が出来ると、泥をこねて遊び始めました。

  遊び始めると夢中になり、苗が無くなったことに気づきません。
 
 ヨネ :{マツ、苗がねーず、はよー苗を持ってきてけろ!}

  マツと武造は、また苗をいっぱい持ってきます。

  夕方になって、忙しい田植えの一日も終わりです。

  仕事をした後のご飯は、最高に美味しいものです。

  武造とマツは、おかわりをして食べ心地よい疲れを感じて、まぶたが重くなってきました。

  食台の側で寝てしまった二人を、関衛門は布団の部屋に抱えていきました。

  翌日も、そしてその次の日もしばらくは田植えが続きます。

  そして、一ヶ月ぐらいしてようやく田植えも終わりです。

  田植えが終わると、「さなぶり」というご苦労様会が行われます。それは、子供たちにとっても嬉しいひと時です。

 
その「さなぶり」のついては、次の記事に続きます。
ラベル:田植え
posted by junko at 22:06 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月14日

第18話 マツが小学校へ

  《四方八方、山に囲まれた武造の家から周りを見回すと、山の木々が“ぽつりぽつり”と淡い新緑がところどころに見えるようになりました》

  関衛門とヨネは、マツの小学校の入学のことで準備をしています。

  マツも小学校に行けることを喜び、関衛門とヨネが準備するのを
嬉しそうに見ています。

  武造はというと、関衛門とヨネが新しい風呂敷包みを準備して、マツに話しかけているのを見て、自分と同じ学校に行くことを悟りました。



  学校に行くためにマツが新しい着物に着替えようとすると、武造が着せてあげました。

  そして、着物の紐もちゃんと“ちょうちょ”の形に結びます。

 マツ :{武造、ちょうちょの形に結ぶの上手になったなー}

  武造は、マツが自分と一緒に学校に行けることを嬉しくてたまりません。

  準備が出来ると、武造はマツの手を引いて学校に向かいました。

  関衛門とヨネ、そして武造とマツの四人で学校に行きます。

  入学式には、新入生としてはほとんどが男子児童で、女子児童はほんのわずかな人数でした。

  《時代は大正に入っていました》

その大正時代も、生活が厳しくて学校にいかせてもらえたのは多くが男の子でした。

  女の子はその当時、学校に行かせてもらえないのが普通でした。

  そういう時代に、マツが学校に入学出来たのは養女として、関衛門の家にきたからでした。

  マツは、新たな学校生活への期待に胸を躍らせ終始“にこにこ”しています。

  丸顔で、少し頬の赤らんだマツの笑顔は、春の陽気を受けますます輝いて見えました。

 関衛門 :{マツ、これから武造と一緒に一生懸命に勉強するんだぞ!}

  マツは、関衛門の顔を見てうなずきます。

  武造は入学式が終わり、家に帰るときをじっと待っていました。

  そして、ヨネに手を引かれて来るマツの姿を見た武造は、喜んで近寄り自分もマツの手を引いて家に帰りました。

  その時期から、農家では育苗から田植えと忙しくなります。

  関衛門の家も、稲を作り始めていたので養女に来たマツも手伝うことになります。

  田植えの時期になりました。

  
ラベル:入学 小学校
posted by junko at 11:14 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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