「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年05月26日

第24話 マツの学校への偏見

武造とマツの学校も二学期が始まりました。

当時の大正時代には、生活が苦しい家庭がほとんどで女の子は学校に行かせてもらえないのが普通でした。

そんな中、マツが学校に行っていることで、村の人たちの間ではねたみや偏見がありました。

気丈な村人の中には直接、関衛門にそのことを話す人もいました。

 村人:{オメーのところに養女にきたマツが、学校に行ってるなんてええなー、
      おなごん子(女の子)を学校に行かせる金があるんなら、少しでもオラんとこ
      ろに恵んでほしいもんだ!}


 関衛門:{オラの家も金に余裕があるわけではねえ!!学校は出来れば、
      おなごん子も行ったほうがええと思うからマツを学校に行かせてるだ!}


 村人:{おなごん子には勉強なんていらねー、将来は嫁に行ってその家に尽くしたら
      ええ!!勉強なんて贅沢なことだ!!}


関衛門は、その言葉を不愉快に感じましたが、つとめて平静を保ちながらできる限りマツに勉強させたいと思っていることを話しました。

 村人:{オメーの言うことは分かっただー、でもマツもどんどん成長していくだー、
      男ん子がいっぱいいる中で勉強してると、そのうち・・
      マツを気に入る男ん子がいるかもしれねーだー・・・いや、マツの方でも好きな
      男ん子が出来るかもしれねーではねえか・・・そしたらどうする?
      マツだって、耳の聞こえねー男より普通の男の方がええと思うに決まってるで
      はねーか?}


この言葉には、関衛門もただ事には思えませんでした。その村人が言ってることが半ば、当たってるように思えたんです。

確かに、マツだって生長すると周りのこともよく分かってくる、武造が普通ではないことや、他に好きな男が出来るかもしれない・・・そうなったら、マツを養女にもらった意味がなくなる・・・関衛門は、だんだん不安になってきました。

それでも、関衛門はその村人に対して丁寧に対応しました。

 関衛門:{オメーの言ってることはよく分かっただー、耳の聞こえねー武造のために
      マツを養女としてもらっただー、大きくなったら二人を結婚させるためだ・・・
      でも、オメーが言うようにマツも成長していくと武造と他の男との違いも分かっ
      てくる・・・・はっきり言ってくれてありがとう}


その村人が言ったことは、関衛門の思いに大きく影響を与えました。

関衛門はずっとそのことばかり考え続け、ついにヨネにもその村人が言ったことを話すことにしました。

ヨネもこれにはかなり動揺しました。

二人はどんな決定をするんでしょうか?
ラベル:偏見 結婚
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2008年05月20日

第23話 カブトムシ捕りで痛い思い出

  《武造とマツの住んでいる下井村は、四方八方が山で地形的には盆地でした。
  冬は雪がたくさん積もる豪雪地帯でも、夏場は盆地なので気温がとても上がります。》


  大人たちは、田んぼの稲の間に生える草(ヒエなど)取りをしています。(首にかけているタオルで汗を拭きながら、懸命に草を抜いています)

  武造とマツは夏休みに入り、山にカブトムシを捕りにいきました。

  武造とマツ、そしてマツの姉チャと3人で家の裏山に出かけていきました。

   山の中は、とても涼しく3人は気分良くカブトムシを探していました。

  その時、マツが腕に“ちくっ”と激しい痛みを感じました!!

  またすぐに、“ちくっ”とします!!

 マツ:{痛い!!} 

  その声を聞いた姉チャが、マツの方を見るとナント蜂が“ぶんぶん”飛んでいました!!

 姉チャ:{蜂や!蜂が飛んでっぞー、マツ、近くに蜂の巣があるんだ!!離れてけ
      ろ!}

 
  武造は、耳が聞こえないのでマツが蜂に刺されたことも知らずに、一生懸命カブトムシを探していました。

  マツが慌てている気配を感じて、ようやく何かが起きたことに気づきます。

  マツは今にも泣き出しそうです!!

  蜂に刺されたところが、だんだん腫れてきました。

  腕に2,3箇所、刺されたところが腫れてました。

  それを見た武造と姉チャは、マツの手をとり急いで山を降りていきました。

  マツはだんだん、息苦しくなり気分が悪くなってきました。

  武造は走っていって田んぼで草取りをしていた関衛門に身振り手振りで、大変なことが起きたことを伝えます。

  関衛門は、武造と一緒にマツのところに来ると、マツの様子を見て蜂に刺されたことを知り、急いで医者に連れて行かなくてはいけないと思います。

  関衛門は、その日、近所に具合の悪い人がいて、そこに医者が往診で来ることを聞いていたので、もしかしたらその家に医者がいるかも知れないと思いました。

  急いでその家にいくと、幸いにも医者が往診で来ていました。

  医者は、マツの症状を診てスズメバチに刺されたことが分かり、すぐに治療をしてくれました。

 医者:{危なかったなー、もう少しで死ぬところだったぞ、蜂の巣に気をつけて見つけ
      たら絶対近づいてはいけねーぞ!!}


  医者の治療のおかげで、その日の夕方になるころにはマツもかなり気分も良くなってきました。

  カブトムシは一匹も見つけることができず、スズメバチに刺されて危なかった日も終わり、新たな朝を迎えます。

  翌日には、すっかり腫れもひいていました。

  《下井村の学校は、農繁期に学校が休みになるので、夏休みの期間も短くされていました。》

  二学期が始まり、武造とマツは学校に通いはじめます。

  そのころから、だんだん関衛門とヨネの気持ちに変化が見られるようになってきました。

  それは、養女のマツが学校に行ってるということに対する周りの偏見と圧力が原因でした。

   どのような圧力があったんでしょうか?
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2008年05月12日

第22話 学校での偏見

 《田んぼに植えられた稲も力強く生育して緑が濃くなってきました。》

武造とマツは、田んぼのあぜ道を歩いたりしながら、二人で登下校していました。

マツも学校生活に慣れてきた頃、ある男子児童がマツを“じっ”と見ています。

 その児童の名前は「源太」といい、だんだん「ガキ大将」としての頭角を現してきました。

マツが、下校する時間になって源太は他に3人の男子児童を連れてマツの後を追いかけてきます!!

 源太:{おーい、マツ、オメェーのとこのあんちゃは、耳が聞こえねぇーんだってなー}

 マツ:{ほんだ、武造は耳が聞こえねぇーだー}

 源太:{オメェーは、耳が聞こえねぇーもんの家にいるだかー}

 その言葉を聞いてマツは、何かしら自分の家や武造に関して、源太が悪いように言ってると感じました。

マツは、気にせずに足早に帰ろうとしました。

それでも、「ガキ大将」の源太と他の3人は、ずっとマツの後を追いかけてきます。

 そして大声で言い続けました。
 
 源太と他3人:{や〜い!耳が聞こえねぇー「耳きんか」(つんぼ)の家、や〜い!}

 マツは、怒り出します。

 マツ:{そげなこと言わねーでけろ!}

源太と他3人は、マツが怒るのを見るとますます面白くなって声をさらに大きくし叫びます。

 源太と他3人:{マツ、耳きんか(つんぼ)の家、や〜い!}

マツは、悲しくなって泣き出しました。そして走っていくと校門から少し離れたところで、武造がマツの帰りを待っていました。

武造は耳が聞こえないので、源太と子分3人がマツに向かって、嫌がらせの言葉を投げかけてたのが分かりません。

マツが泣きながら来るのが見えます。そして後から源太と子分3人が何かを言っているのが見えます!!

武造は、マツがいじめられてると思い、マツのところに走って行きます。

マツは、後ろを指指して、また泣き出しました!!

武造は、源太と子分3人が自分の可愛い妹をいじめたと思い4人に向かっていきました!!

源太と子分3人は、武造の訳の分からない声と手振りの激しさに驚いて逃げていきました。

その日は、それで終わりました。

次の日になって、マツはもう嫌がらせはないだろうと思い学校に行きます。

授業中は、なんでもなかったんですが、下校のときになってまたあの4人が後を付いてきました。

マツに向かって、源太と子分3人が言います。

 源太:{マツ、オメェーのあんちゃは言葉を話せねーのかー!昨日はオメェーの
     あんちゃ、すげぇー変な声だったぞ、耳きんか(つんぼ)の家、やーい}


マツは、怒りと悲しみが込み上げてきて、足元にあった石を取り4人に向かって投げようとします。

それを見た4人は足を止め、マツと距離をおきます。

でも、マツは実の親から教えられていたことを思い出します!!

 【どんなことがあっても、人に向かって石を投げて怪我をさせてはいけないよ】

マツは、石を捨てました。そして思いっきり走り出しました。

武造は、いつものように校門から少し離れたところでマツを待っていました。

マツが走ってくるのを見ると、武造はまた昨日の4人がマツをいじめてると思います。

そして、マツのところに走っていきました。

源太と子分3人は、武造の姿を見るとマツの後を追わなくなりました。

武造は、何故マツがいじめられてるのかを知りたいと思いますが、耳が聞こえないので聞けません!!

武造は、またも自分が皆と違っていて、不便であることを感じました。

武造は、マツがいじめられてることを関衛門とヨネに話そうとしますが、言葉にならないので身振り手振りで伝えようとします。

関衛門とヨネは、武造の身振りで何となくマツがいじめられてることが分かりました。

 関衛門:{マツ、学校で何かあったんだかー?}

マツは、耳の聞こえない武造のことで嫌がらせを受けていることを話そうと思いましたが、どうしても話せませんでした。

 マツ:{何でもねぇーだー}

関衛門とヨネは、マツが話そうとしないのでそれ以上は聞こうとしませんでした。

マツに対する嫌がらせは、その後数日続きましたが、学校の帰りにはいつも武造が待ち構えていたので、その「ガキ大将」たちは、だんだん嫌がらせをしなくなっていきました。

 《気温も高くなってきて、学校も夏休みに入ります。》

 武造とマツは、他の子供たちとカブトムシをとりにいきました。

      そのとき、ハプニングが起きます。

      
そのことは、次の記事に続きます。
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2008年05月05日

第21話 山での騒動

 《下井村の山も、すっかり濃い緑で山が元気付いてきました。》

 関衛門の家の「薪」も少なくなってきました。

 関衛門:{マツ、武造と一緒に薪を拾ってきてくんねぇかー、
      でも山の奥には入ってはいけねぇーぞ}


 武造とマツは、山に薪を拾いにいきます。(武造の家は山の麓にあったので、山はすぐ裏でした)

 山では「熊」に遭わないようにするため「熊鈴」を付けて入ります。
 武造とマツもしっかり「熊鈴」を付けて「薪」を拾い始めました。

 しばらく「薪」を拾っているうちにマツが武造の姿が見えないことに気づきました。

 マツ:{武造、何処に行っただー!}

 付近を捜しても、武造の姿は見当たりません!!

 マツはだんだん怖くなってきました・・・武造がいない・・・

 マツは、関衛門から{山の奥に入ってはいけない!}と言われたことを思い出し、耳の聞こえない武造なので、山の奥に入って行ったのでは・・・

 マツは、急いで家に帰り関衛門に武造がいなくなったことを話しました。

 関衛門とヨネは{マツ、オメーは家さいててけろ}と言ってから慌てて山に走って行きました。

 それを見た近所の人たちは、{関衛門、そんなに慌ててどうかしただかー?}

 関衛門:{山で武造がいなくなっただー}

 それを聞いた近所の人たちも{それはいけねー、他の人たちにも声をかけて探してくれるようにすっべー}


 {おーい!武造!!何処さいるだかー?}と山では声が響きます。

 でも、なんの応答もありません。

 関衛門とヨネは(武造は、熊に襲われたのでは・・いや、足を滑らせて崖から落ちたのでは・・・皆がこんなに大声で武造を呼んでも、武造は耳が聞こえねぇー・・・)

 そんなことを考えて二人の思いは、不安でいっぱいになってきました。
 日が暮れるまでには、なんとか探し出さないと・・・

 焦って探している関衛門の耳に、マツの声が聞こえてきました!!

 マツが走ってきました!!

 関衛門:{マツだかー?家さいててけろと言ったベー!}

  マツ:{武造が帰ってきただー!}

 その言葉に関衛門とマツは、(武造は無事だ!生きてる!)大きな安堵感を感じ
{おーい、皆!武造が家に帰ってきたとマツが知らせに来ただー!}

 皆、山から下りてきて関衛門の家にきて、武造が怪我などしてないかと様子を見に来ました。

 一方、武造は、怪我もなく山から下りてきてました。

 武造は、耳が聞こえないので「薪」を拾っているうちにマツの動く音も聞こえず、いつの間にか山の奥に入り込んでいたんです。

 それで、いつもとは違う山道を見つけて家に帰ってきたんです。

 武造は、騒ぎやみんなの表情を見て、自分を探しに皆で山に行ったことを悟りました。

 関衛門とヨネが、皆に謝ったりしてるのを見て自分が原因であることも感じました。

 この時初めて武造は、耳が聞こえないことの不便さを感じました。

 (耳が聞こえたら、マツとはぐれることもなかった)と思ったのです。
 それまで、自分にとって音が無いのが普通のことでしたが、自分は皆と違っている・・・と感じ始めたんです。

 武造が耳が聞こえないということは、マツにとっても学校で影響がありました。

 
posted by junko at 18:23 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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