「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年06月17日

第27話 行商

マツは、言われたとおりに畑で採れたキューリやナスなどを籠の中に入れていきました。

ヨネとマツがそれぞれ、籠に野菜をいっぱい入れ背中に背負って出かけていきます。

最初の家の前にくると、ヨネはマツに話します。

 ヨネ:{ええかーマツ、家の玄関にきたら家の人にまずは挨拶をするんだ、それから、
    野菜を買ってもらえねーか聞いてけろ、オラがやってみるからよーく見ててけろ}


マツは意味もよく分からないままただヨネの言うことを聞いていました。

ヨネが家の人に声をかけます。

 ヨネ:{こんにちはー}

 家の人が出てきました。

 ヨネ:{オラの家で採れた野菜、買ってくんねーかー?}

 家の人:{何の野菜があるだかー?}

 ヨネ:{キューリやナスもあるだー}

ヨネは背負っていた籠を下ろして、りっぱに育った野菜を見せます。

家の人は、採れたての新鮮な野菜を見て欲しくなり、少しの野菜を買ってくれました。

 ヨネ:{ありがとう}

その家を出た後、ヨネはマツに話します。

 ヨネ:{ええかーマツ、家の人が野菜を買ってくれたらちゃんとお礼を言うんだ、分かっ
     たなー}


マツは、ヨネの家の人とのやり取りを見ていて、野菜を売るということが分かってきました。

それでも、自分はただ野菜を背負って、ヨネの後にくっついていくだけだと思っていました。

ヨネは次の家に向かいます。

今度の家の人は、自分の家は今、野菜があるのでいらないと断ります。

ヨネは、また次の家、そしてまた次の家へと野菜を売るために入ります。

数件の家に入った頃、ヨネはマツに言います。

 ヨネ:{マツ、オラがやったように今度はオメーが野菜売ってみろ!!}

マツはビックリしました。自分が家の人に声をかけて野菜を売るなんてできないと思いました。

マツがたじろいでいると、ヨネが話します。

 ヨネ:{マツ、オメーも野菜を売るんだ!この野菜売りはオメーのこれからの仕事にな
    るんだ、だから、オラが教えたとおりに売ってみろ!!}


マツは、この野菜売りが自分の仕事になると聞いてもぴんときません。

それでも、自分が野菜を売るということからは逃れられないことを感じました。

マツは、緊張して心臓が「ドキドキ」してきました。

家の玄関までくると、ますます緊張が高まってきて頬も赤くなってきました。

ヨネが後ろで、家の人に声をかけるように言います。

 マツ:{こんにちはー}

とても小さな声でした。

ヨネは、もっと大きな声を出すように言います。

マツは、緊張しながらももっと大きい声を出して家の人に声をかけると、家の人が中から出てきました。

 マツ:{オラの家で採れた野菜、買ってけろ!}

家の人は、顔の赤らんだ小さなマツを見て、微笑みます。

 家の人:{行商かー、えらいなー}

家の人は、野菜をいくらか買ってくれました。

マツは嬉しくなってヨネの顔を見ると、ヨネも微笑んで家の人に丁寧にお礼を言いました。

 ヨネとマツ:{ありがとう}

ヨネは、マツがちゃんとできたことを褒めて、この調子で家々をまわって野菜を売るように言います。

この日は早めに籠の中の野菜がなくなりました。

家に帰ると、武造も学校から帰ってきていました。

武造は、マツがヨネと一緒に行商に行ったことが分かりましたが、この日のことだけだと思いました。

明日はマツと一緒に学校に行けると思います。

翌朝になりました。マツは学校に行けるんでしょうか?
ラベル:行商
posted by junko at 17:27 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月12日

第26話 野菜の収穫

《関衛門の家の畑にも、キューリやナスが収穫できるように大きくなっていました。》

朝御飯を食べながら、関衛門はマツに話します。

 関衛門:{マツ、今日は学校に行かなくてもいいからな!}

 マツ:{今日は、学校に行かなくてもいいんだかー?何でだべー?}

 関衛門:{今日は、家の手伝いをしてけろ!野菜を採ることを手伝ったり、野菜を売る
      ことを手伝ってけろ!}


 マツ:{武造も一緒に手伝うんだかー?}

 関衛門:{武造は学校にいくんだ}

マツはよく意味も分からないまま、言われたとおり学校の準備をしないでいました。

武造は、マツが学校の準備をしないので、マツの教科書を包んである風呂敷を持ってきて、マツの手を引いて学校に行こうとします。

関衛門が武造に、身振り手振りでマツは学校に行かないことを話します。

武造は、不思議に思いましたが仕方なく一人で学校に行きました。

関衛門とヨネは、マツを畑に連れて行きナスやキューリを収穫するのを手伝わせます。

マツの小さな手にしたら野菜はどれも大きく見えます。

マツは野菜の収穫は初めてでしたので、最初は面白かったんですが、やはり子供です!!すぐに飽きてきました。

マツが座り込んで採れたキューリを並べたりして遊んでいるとヨネが怒りました。

 ヨネ:{マツ、何遊んでんだベー!ちゃんと野菜採ってけろ!}

マツはヨネのその怒った声にビックリして、遊ぶのをやめて収穫を続けました。

収穫の仕事は、小さなマツにとっては時間が長く感じました。

ようやく収穫も程よい量を採れたので、それを籠に入れて家に持って帰ります。

マツも籠に野菜を入れて運びます。

野菜を家に運び終わりました。マツは今度こそ遊べると思いましたが、ヨネがマツに野菜売りを手伝うように言います。

 ヨネ:{マツ、採れた野菜を売りに行くから一緒に来てけろ}

行商にマツも付いて行く事になりました。

家々をまわって野菜を売る仕事です。

マツは何も分からないままヨネについて行きました。

籠に野菜をいっぱい入れていきます。

マツの行商の仕事の始まりでした!!

その行商については次の記事に続きます。
ラベル:行商 学校 収穫 野菜
posted by junko at 11:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月03日

第25話 マツ、学校どうなる?

学校も二学期が始まって、武造とマツはいつもと同じように一緒に登下校をしていました。

関衛門とヨネは、村人が言ったことをかなり気にしています。

 関衛門:{マツが学校に行ってることを気にくわねー人たちがけっこういるようだなー}

 ヨネ:{ほんだなー、おなごん子(女の子)が学校にいくのは贅沢だと思っているん
      だベー}


 関衛門:{ほんだー、ただ贅沢というだけのことだったらいいべけど・・・マツが大きく
      なっていくと・・・他に好きな男ができるんではねーか・・・それが心配だー}


 ヨネ:{武造は耳が聞こえねーから普通の男とは違うからなー、マツが武造と結婚す
      るのを嫌がったら・・・それこそ困ったことになってしまうだー・・たとえ、マツ
      が他に好きな男ができたとしても、武造と結婚させるだー・・}


 関衛門:{オラだってそう思っているだー、どんなことがあっても、武造と結婚させるだ
       ー}


関衛門とヨネにとって、武造は一人息子です。
可愛い息子にマツが心を向けてほしいのは当然のことです。

でも、それと同時に武造が普通と違うこと、また身体障害者に対して、またその家に対して村人たちの偏見は大きいことが気になります。

マツが成長に伴い、いろんなことが分かってきて気持ちが変わってくるのを心配してきたんです。

関衛門とヨネは、マツを学校に通わせることに不安を感じてきました。

マツを養女にもらったのは、耳が聞こえない武造と将来結婚させ、
家系を存続させること、それが目的でした。

それなので、関衛門とヨネの不安は相当なものでした。

《そろそろ畑の野菜も収穫をする時期になってきました》

関衛門とヨネは、畑で野菜の収穫をしながらマツの学校に関して考えることにしました。

マツの養女としての厳しい現実が現れ始めたのはこのころからでした。

マツがどのように厳しい現実に直面してきたかは次の記事に続きます。
ラベル:学校 結婚 家系
posted by junko at 10:50 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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