「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年08月26日

第35話 川で洗濯をするマツ

《季節の変わり目で、夜はかなり肌寒くなってきました。》

そのような時は、体の弱い武造は体調を崩しやすくなります。

朝方、武造は体がだるく、とても寒く感じました。

関衛門とヨネは、武造の赤い顔を見て額に手を当てて熱を確かめると、熱が高いことに気づきました。

武造は、朝ごはんも食べれずにぐったりしてます。

ヨネは、水を入れた洗面器とタオルを持ってきて、武造の額や顔、脇などに濡れたタオルを当てます。

関衛門は、町医者のところに行き、往診で来てくれるように頼みます。

マツは、ヨネが武造の看病をしてるところを見てました。

ヨネは、マツに洗面器の水を冷たい水に入れ替えてくるように言うと、マツは井戸に行って洗面器の水を入れ替えます。

町医者が往診に来てくれて、診断して風邪だと分かりました。

薬を処方してくれました!!

でも、武造の熱はすぐには下がらなかったので、ヨネはずっと看病しています。

ヨネが武造の看病に付きっきりでしたので、ヨネはマツに洗濯をしてくるように言いました。

家の近くには小さい川があったので、そこでマツは家族の洗濯物を持っていって川の平らな石の上で洗い始めました。

この日は、天気も回復していて洗濯するにはいいお天気です。

でも、小さいマツにとっては、この洗濯も力がいりました。

水に濡れた着物は、とても重たくなります。

小さい小物を洗うのはいいですが、大きなものになると洗ってない部分をひっくり返して洗うには水を含んで重くなっているので、とても力がいりました。

やっと洗った着物を今度は絞りますが、マツの小さな手で絞るのはたいへんです!!

一つの着物を絞るのに一回では絞りきれません!!

着物の端から手で握れる分だけ少しずつ絞っていきます。

そして、こんどは家の南側の軒下に掛けてある「竹の棒」に洗濯物を干します。

マツは洗ったものを持ってきて干そうとしました。

マツの小さな手と弱い力では、着物をちゃんと絞りきれていません。

着物は、水をたっぷり含んでいて「水がだらだら」と落ちます。

マツはお腹の辺りがぐっしょり濡れながら一生懸命干します。

そこへヨネが、洗面器の水を入れ替えに外へ出てきて、マツが洗濯物を干しているところを見ました。

マツはまだ洗濯物の干し方が分かっていません。

 ヨネ:{マツ、洗濯物はちゃんと“しわ”を伸ばしながら干してけろ!}

マツは“しわ”を伸ばしながら干すと言われてもどうしていいか分かりません。

ヨネは、マツに教え始めました。

着物をぱんぱんと軽くたたいたりして“しわ”を伸ばし形を整えて干します。

 ヨネ:{ええかー、洗濯物はこのようにちゃんと“しわ”を伸ばして着物の形を整えて
     干すんだ!}


マツは、言われたとおりに“しわ”を伸ばしながら干していきました。

水を含んだ重い洗濯物を全部干すのは「くたくた」でした!

この日、マツは洗濯をするのに半日かかりました。

武造は、まだ熱が下がりません。

ヨネが昼ごはんの準備をしている間、マツが武造の看病をしました。

濡れたタオルを武造の顔や額などに当てます。

しばらくすると、タオルが温かくなっています。マツは洗面器の水がぬるくなると井戸にいき、水を入れ替えました。

昼ご飯は、ヨネが武造のために「おかゆ」を作り、武造は少しだけ食べれました。

マツは洗濯でお腹がぺこぺこでしたので、てんこ盛りのご飯を食べて満足します。

ヨネがマツに、午後からは柱磨きのための「くるみの実」を集めにいくように言います。

マツは、くるみの実は好きでしたが、「柱磨き」のために集めると聞いて、また柱磨きをしなければならないと思いがっかりしました。

それでもマツは言われたとおりに、籠を持ってくるみ集めにいきます。

養女としてのマツの試練は続きます!
posted by junko at 16:41| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月19日

第34話 迎えにいく武造

マツは野菜の行商と、「くるみの実」(くるみ油)で柱磨きをすることがイヤで、実家に逃げ出し、泣いてなかなか帰ろうとしませんでした。

お姉(マツの実の母)は、泣いてるマツを見て困ってしまいました。

マツを養女に出したからには、マツが嫌がっても養女としてやっていくように励ますしかありません。

 お姉:{マツ、くるみ油での柱磨きがオメーにとってイヤな気持ちはよ〜く分かるだー、
     ほんでもオメーはあっちの家の養女にいったんだ、
     家の柱を磨いてピカピカにすることは、オメーが住んでる家を大事にしてる
     ことだ、磨いた部分は綺麗だべー!}


マツは泣きながらうなずきます。

 マツ:{ほんだー、くるみで磨いたところはピカピカになるだー!
     ほんでも柱磨きは面白くないだー}


そしてマツはまた激しく泣き出し帰ろうとしません。

その頃、武造はマツが実家に行ったのではと思い、自分もマツの実家に行こうと思います。

外に出ようとしたら、傘の本数を見てマツは傘を持って行ってないと思い、傘をマツの分も持っていきました。

マツの実家では、マツがまだ泣いていました。

武造は泣いてるマツを見て、何があったのかを知りたいと思いましたが、話が出来ないのでマツとお姉の様子をじっと見ています。

お姉は、武造に身振り手振りでマツを連れて帰るようにといいます。

マツが何故泣いてるのかを分からないまま武造は、マツの手を取り家に帰ろうとしました。

マツは帰るのはイヤでしたが、武造が迎えにきたことで家に帰ることにしました。

家に帰ると関衛門とヨネが帰ってきていました。

泣いた後の顔をしているマツと、武造が一緒に戻ってきたことで関衛門とヨネはすぐにマツが実家に帰ったことを悟りました。

マツは柱磨きがイヤなんだということも分かりました。

でも、関衛門とヨネはマツが実家に帰ったことで怒ることはしませんでした。

そして、マツの気持ちをほぐすようにします。

 ヨネ:{マツ、オメーの好きな大根の煮物を作るから待っててけろなー、
     それまで武造と遊んでてけろ!}


マツは、大根の煮物が大好きだったので嬉しくなり元気が出てきました。

てんこ盛りのご飯と大根の煮物を腹いっぱい食べて満足したマツは、家の掃除と柱磨きの疲れ、そして泣き疲れが出てきて眠くなってきました。

ちょうど季節の変わり目になっていて、夜は少し肌寒いぐらいでした。マツは腹いっぱいで心地よい眠りにつきました。

季節の変わり目は、体の弱い武造にとっては体調を崩しやすい時期でもありました。

武造が急に高熱を出してしまいました!!

そのことは次の記事に続きます。


posted by junko at 12:54| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月12日

第33話 逃げ出すマツ

野菜の行商に行かない日は、家の中で掃除して「くるみの実」(くるみ油)で柱を磨くことになったマツは、実家にかえりたいという思いが強くなってきました!!

初めて「くるみ油」で柱を磨いた翌日もお天気が悪くなりました。

日本手ぬぐいを袋状に作ったものの中に、「くるみの実」を入れて、それで家の柱を磨きます。磨いたところは光沢がでます。

マツは、この単調な仕事が全く面白くありませんでした。

何時間もこの柱磨きの作業をするのです!!

小さいマツにとって、とっても長い一日です。

とうとうイヤになり、関衛門とヨネがいない間に実家に逃げ出してしまいました。

《マツの実家には、お姉(マツの母親)と姉ちゃたちがいました。

外は雨が降っていたので、姉ちゃたちは野菜の行商には行かず、家の中で「お手玉」をして遊んでいました。》


マツが帰ってきたので、お姉(マツの母親)がマツにどうしたのかと尋ねます。

 お姉(マツの母親):{マツ、今日は行商に行けなかったんだなー、ほんでうちに何か
      用事があって来たんか?}


マツは、「くるみ」での柱磨きが嫌だと訴えます。

 マツ:{くるみで柱を磨くんだ!オラそれが嫌で家に帰ってきたんだ!!}

お姉は、マツが柱磨きをしてることをこのときに初めて知りましたが、養女に出したことなので関衛門たちに任せていました。

 お姉:{マツ、オメーは養女に行ったんだ!ほんで、あっちのお父(おとう)とお母(おか
     あ)の言うことを聞かなくてはいけねーだ!}


マツは、お姉(マツの母親)が自分の気持ちを分かっていないと思います!!

 マツ:{オラ、養女は嫌だ!!うちに帰りてーだー!!}

お姉は、マツの気持ちが分かりますが、ここで甘えを出させたらいけないと思います!!

 お姉:{なんてことを言うんだ!!オメーは養女に行ったんだ!!ほんだから、うちに
     帰ってきてはいけねーだ!}


マツは、悲しくなり泣き出してしまいます。

マツの姉ちゃたちは、マツが可哀相になり一緒に「お手玉」をしようと誘います!!

お姉はマツが家の中に上がって、姉ちゃたちと遊ぶのを許しませんでした!!

 お姉:{マツ、オメーが家に逃げ出したことを、あっちのお父(おとう)とお母(おかあ)が
     知ったら何て思うべ!!早く帰ってけろ!}


マツは泣きながらさらに訴えます!!

 マツ:{オラ、帰ったらまた「くるみ」で柱を磨かなければならねーだー、姉ちゃたちと
     「お手玉」して遊びてーだー}


お姉は、けっしてマツの訴えを聞き入れませんでした!!

 お姉:{マツ、オメーはもうここの子ではねーだー、あっちがオメーの家だ!!
     だから帰らなくてはいけねーだー}


マツはお姉が、どうしても聞き入れてくれないのでガッカリしました。

それでも、なかなか帰ろうとはしませんでした!!

その頃、武造が学校から帰ってきました。

そして、すぐにマツがいないことに気づきます!!

外は雨が降ってるのにマツは何処に行ったんだろうと思います。

感の良い武造が取った行動については次の記事に続きます。


posted by junko at 12:26 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月04日

第32話 マツの試練!くるみ油で「柱磨き」

雨が降ってくれたらいい!と願いながら眠りについたマツの耳に、翌朝、雨の音が聞こえてきました。

「今日は雨や!行商にいかなくてもええ!」と思いながらマツは起き上がりました!!

お味噌汁の美味しそうな匂いがしてきます。

外の雨を見て嬉しそうな顔をしたマツにとって、この日の味噌汁の匂いは格別でした!

薪で炊いた香ばしいご飯にお味噌汁、キューリと茄子の漬物、どれもこれも食欲をそそります。

マツは食べながら、関衛門とヨネが{今日は行商に行かなくてもええ!}と言うのを期待して二人をちらちらと見ます。

ヨネが、マツを見て言います。

 ヨネ:{マツ、今日は雨やから行商に行かなくてもええからな!}

そのヨネの言葉にマツは嬉しくて仕方ありません!!

さらに続けてヨネが話します!

 ヨネ:{マツ、今日は家の中のことをしてけろ!}

マツは行商に行かなくてもいいが、家の中のことをすると言われても意味が分かりません。

でも、学校にも行けないことは分かりがっかりします。

武造は、マツの表情を見てマツが可哀相になります。

そして、ヨネの腕を揺すりながら外の雨を指差し、マツと自分が一緒に学校に行けるようにと訴えました!

ヨネは武造の目をじっと見て首を横にふります。

それから関衛門に武造を納得させるように言います。

関衛門は、耳の聞こえない武造に身振り手振りで、マツは家の中で掃除をすることを悟らせました。

武造は面白くない顔をしながらもあきらめて一人で学校に行きました。

ヨネは雑巾と水の入ったバケツを持ってきました。

 ヨネ:{マツ、この雑巾で家の中を拭いて綺麗にするんだ!}

マツは、雑巾を絞り床を拭き始めます!

ヨネはマツの雑巾の絞り方を見て{マツ、そんな絞り方では家の中がべちゃべちゃになるではねえか、もっと雑巾を固く絞るんだ!}と注意します。

ヨネのやや強い口調の言い方をされたマツは、気落ちしてしまいます。

マツはヨネの表情を伺いながら雑巾がけをしていきました。

一通り家の中を雑巾がけすると「くたくた」になりました。

雑巾がけが終わると少し休みます。

《そこへヨネが、日本手ぬぐいで作った袋にくるみを入れて持ってきました。》

 ヨネ:{雑巾がけが終わったら、今度はこれで柱を磨いてけろ!}

くるみ油で家の柱を磨くのです!!

マツは悲しくなりましたが、ヨネが怖くて言われたとおりに「くるみ油」で柱を磨き始めました。

 ヨネ:{くるみ油で磨いた柱は艶がでて綺麗になるから、一本一本磨いてけろ!}

マツは泣きたいのをじっとこらえて、「くるみ油」で柱を磨いていきました。

このようにして、マツは行商に行かない日は掃除と「くるみ油」で柱を磨くという仕事をするようになったのです。

小さいマツにとって、「くるみ油」での柱磨きはちっとも面白くありません。

行商に続いてマツのさらなる試練が始まりました!!

マツは実家が恋しくなり、その思いは強くなってきました。

そして、行動に出てしまいます!!

  
そのことは次の記事に続きます。

posted by junko at 12:33| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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