「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年09月30日

第40話 湯治

寒さも本格的になってきました!

体の弱い武造のために、関衛門とヨネは毎年「釜湯温泉」に武造を連れて湯治にいきます。

武造が温泉で健康な体になるように願って、毎年冬になると長期で「釜湯温泉」の「三条旅館」に泊まり湯治します。

その「三条旅館」では、長期滞在なので自炊をしての湯治でした。

ヨネは武造の世話をするので一緒にいきますが、

この年からは、マツもいるので関衛門は家に残ることにしました。

武造はマツも一緒に連れて行きたいとヨネに訴えますが、ヨネは首を横に振りマツは一緒にはいけないと言います。

マツはというと、しばらくヨネがいないので怒られなくてすむと思い少し“ほっ”としました。

ヨネと武造が、湯治に出かけてから、マツはいつものように「柱磨き」を始めます。

手が冷たくなって「ハー」と息を吹きかけ手を温めながら柱をクルミの実で磨いていきます。

関衛門は、藁で俵などを作り「藁細工」の仕事をしていました。

関衛門は、マツが「しもやけ」で手が真っ赤になっているので可哀相になり、少し休むように言いました。

 関衛門:{マツ、今日は柱磨きはしなくてええからな、オラがオメーに勉強を教えて
      あげるだー}


マツは柱磨きから解放されることで喜びます。

 マツ:{何の勉強をするだー?}

 関衛門:{オメーは学校に行ってねーから、読み書きとそろばんを教えて
      あげるだー}


そのようにして、関衛門はマツに少しづつ読み書きとそろばんを教えていきました。

マツは、関衛門が優しく教えてくれるこの勉強の時間はとても楽しいひと時になりました!!


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【時は流れて〜〜〜数年が経ち〜〜武造とマツも10代後半になります。】

武造とマツは、成長とともにやはり身体障害者への周りの根強い偏見に直面します。
       
その偏見については次の記事に続きます。

   
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2008年09月23日

第39話 しもやけ

すっかり気温も低くなり、寒くなりました。

マツは、雨の日は行商に行けないので「柱磨き」をします。
暖房がないところで「柱磨き」をするのは寒くて、手が冷たくなりました。

マツは、この「柱磨き」も面白くなく嫌でたまりませんでした。

実家に戻りたいと思いながら、冷たくなった手に「ハー」と息をかけながら、クルミ油で柱を磨きます。

マツの手が、真っ赤になり痛痒く「しもやけ」になってきました。

雪が降る前の寒さです!!

行商もその年は、そろそろ終わるころになっていました。

しもやけで真っ赤になった手でマツは、行商にいきます。

行商ではライバルもいるので、野菜はなかなか減りません!

マツはしもやけで真っ赤になった手に「ハー」と息をかけながら
家々を回ります。

気温もどんどん下がって、ずっと外にいるマツの体も冷え込んできました。

寒くて寒くてたまらなくなって泣きたくなってきたときに思いつきました!!

{そうだ!以前にカステラをくれたおばちゃんの家にいったら野菜を買ってくれるかもしれねー}

マツは、その大島家に向かって歩き始めました!

大島家に着くと、声をかけます。

中から女将さんが出てきました!

女将さんは、マツを見て「手が真っ赤になったしもやけの子供!」とマツのことを可哀相に思います。

以前にもしてくれたように、すぐに中に入れてくれて温かいお茶をマツに飲ませました。

そして、カステラを食べさせます!!

 女将:{野菜、買ってあげるべー、これからも何時でもおいで!
      野菜買ってあげるだー!}


《それから、この「大島家」は、マツの生涯に渡る行商生活での「おとくいさん」になりました。》

女将さんは、マツにカステラの切れ端を一袋いっぱいに入れて、
お土産に持たせてくれました!!

大島家で籠が空っぽになり、カステラのお土産をもらったマツは喜んで家に向かいました。

一方、武造は学校から帰っていて、寒い中で行商に行ってるマツが可哀相でたまりませんでした。

玄関でマツの帰りをずっと待っていました。

マツが帰ってくると、武造はしもやけで真っ赤になったマツの手に、自分の息を「ハー」と吹きかけて温めました。

マツがお土産にもらった「カステラ」を籠の中から出して、武造に
見せると武造は大喜びします!

武造は、カステラを食べたことがあり大好きでした。

この日の夕御飯は、マツが好きな「大根の煮物」に裏山で採れたきのこも入っていて美味しさ倍増でした。

マツは、てんこ盛りの御飯と美味しい煮物を食べると、寒い中一日外にいた行商の疲れですぐに眠くなります。

《いよいよ冬がやってきました!》
冬の寒さは体の弱い武造は、体調を崩しやすくなります。

それで、武造は毎年決まって湯治に行ってました。

その湯治については次の記事に続きます。

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2008年09月16日

第38話 行商でのライバル

《山の木々も落ち始めていて、寒い冬が足早に近づいてきてます。》

マツの行商の仕事も、野菜が採れる間は続きます!!

マツは、野菜をいっぱい入れた籠を背負い街に向かいます。

行商が嫌いなマツは、籠を投げ捨てて逃げ出したいという気持ちを、何度も抑えながら家々を訪問しました。

野菜を買ってくれる人、すぐに断る人・・・

家の人の対応の仕方も優しく話す人、ぶっきらぼうに話す人など様々です。

家の人の対応の仕方でマツの気持ちもかなり影響されました。

野菜を買ってくれなくても、 {今はオラの家では野菜あるから買ってあげられねーけど
 頑張ってなー!}

と言って、励ましてくれる人に会ったら、次の家に向かう力を得ることが出来ました。

逆に{野菜か、いらねーだー!}とぶっきらぼうにさっさと断られるとがっかりして、行商なんかやめてしまいたい!と思います。

背中の籠の野菜がなかなか減りません!

さらにマツの行商を困難にすることがありました!

それは、行商でのライバルです!

《当時は、女の子の多くは行商をしていました。》

マツのライバルとなった子は、マツの姿を見るとマツが入ろうとしている家に自分が先に入るのです!

以前に野菜を買ってくれたことのある家にマツが入ろうとすると、

 行商の女の子:{そこの家はオラが入るだー}

そして、野菜を売って出てきます!

行商で街を回っているうちに、野菜をよく買ってくれる家を、他の行商の子も分かってきてそこの家に自分が先に入るのです。

マツがこれから回って入ろうとするところを先に来て、しかも野菜を買ってくれそうな家を先に訪問して売ります。

ライバルに何度も、野菜を買ってくれそうな家を先に訪問され、マツは野菜をなかなか売ることができませんでした。

マツは、冷えた手に“ハー”と息を吹きかけて温めながら、次の家は自分が入って野菜を売ろうとして小走りします。

 マツ:{こんにちは!遠田(マツが住んでいる集落)から来たんだ!オラの家で採れた
     野菜だー、買ってけろ!}


 家の人:{遠田から来たんかー、ずいぶん遠くからきたんだなー、野菜少し買うべー}

マツは、「遠田から来た」と言って自分は遠くから来たことを言うと、家の人が同情して買ってくれることに気づきました!

そのようにして、マツはライバルがいる中でも野菜を売る方法を見つけていきました。

なかなか減らなかった籠の中の野菜も、減り始めました。
それでも、まだ籠に少し野菜が残っています。

あたりは暗くなりはじめてきました。

マツは、野菜を全部売らないと帰ってきてはならないと言われてたので、家に帰るのを恐く思いました。

でも、暗くなったので帰ることにしました。
恐る恐る家にたどり着きます。

ヨネが出てきました!

 ヨネ:{野菜、全部売れたかー?}

マツはドキッとします。

 マツ:{少し、残っただー!}

ヨネは、籠の中の野菜と野菜を売ったお金を調べます。
マツは、ドキドキしながらヨネがお金を調べてるのを見てました。

そこへ関衛門がきます。

 関衛門:{マツ、暗くなるまでがんばったなー!今日は寒かったべー、はやく家の中に
      入って温かいお茶を飲んでけろ!}


関衛門の優しい言葉にマツは「ほっ」としました。

ヨネは野菜が少し残ったのを残念がっていましたが、関衛門の言葉でマツを怒るのをやめました。

これから、ますます寒くなるなかでの行商!
 
マツの試練は続きます。

posted by junko at 12:52 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月09日

第37話 初めてのカステラ

《秋も深まってきてとても寒かった日の行商》

マツの行商と柱磨きの生活は続いていて、寒い中でも行商にいきます。
マツは野菜をいっぱい入れた籠を背負い街の方に出かけます。

曇り天気で気温も下がってきて、小さなマツの手も冷たくなってきました。

全部売れるまで帰ってきてはならないとヨネに言われてたので、マツは野菜を早く売るために家々を訪問します。

でも、すでに他の人が売っていたことも多くありました。

 マツ:{オラの家で採れた野菜、買ってけろ!}

マツは、寒さで頬がいつもより赤くなっています。

家の人は、顔が赤くなったマツを見て申し訳なさそうに言います。

 家の人:{寒い中、行商ご苦労さんだなー、買ってやりてーが、少し前に他の行商の
      娘っこがきて買ったばかりだー、悪いなー}


このように何件も同じ理由で断ります。

背負った籠の中の野菜は、いっこうに減りません!!

寒さもきつくなってきて手がかちかんできます。

マツは冷たくなった手を“ハー”と息をかけて温めながら行商を続けました。

他の行商の人に先を越されて、なかなか売れない野菜の籠は「ずしっ」と重く感じます。

寒くて、売れなくてマツは泣きたくなりました。

そんな時、「大島家」というお菓子屋に入ります。

 マツ:{オラの家で採れた野菜だー、買ってけろ!}

そのお菓子屋さんの女将は、マツを見て可哀相になりました。

 女将:{今日は寒いなー、オメーは行商でずっと外にいたんだべー、
     体が冷えてるではねーか、中に入ってけろ!}


そして、温かいお茶をマツに飲ませます。

さらに、マツにとって初めてのお菓子を出してきました。

それは「カステラ」でした!!

「大島家」では、自家製のカステラを作っていてこれが美味しくて、人気商品となってました。

 女将:{これはオラの店で作ってるカステラだ、ウメーから食ってみろ!!}

柔らかくふわふわしたカステラをマツは、初めてみました。

そして、少し口に入れてみます!!

 マツ:{ウメー!!これ、ウメーなー!!}

女将はマツがとても喜び嬉しそうに食べてるのを見て微笑みます。

それだけでなく、この親切な女将さんは野菜を全部買ってくれたんです。

マツの籠は一気に空になりました。

マツは足取り軽く家に向かいました!!

口の中がまだ、まろやかで程よい甘さのカステラの味が残っています。

行商は嫌でしたが、この日のこのような経験はマツにとって励みになりました。

行商にもライバルのような人はいるものです。
  
マツの行商をさらに困難にするライバルについては次の記事に続きます。

posted by junko at 12:29 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月02日

第36話 クルミ割り

クルミを入れる籠を持って、マツは山に「クルミ拾い」にいきます。

くるみは、あちこちに落ちていたので、籠の中がすぐにいっぱいになりました。

マツがクルミを拾って帰ってくると、ヨネが池に入れるように言います。

 ヨネ:{くるみは麻袋に入れて、池に入れててけろ。クルミが浮かないように石を載せて
     おいてけろ。}


マツは拾ってきたクルミを、庭にあった小さな池のなかに「くるみ」が浮かないように石で重しをして水に浸けました。

そのころ、熱を出していた武造は回復してきて熱が下がってきました。もう大丈夫です!!

武造は熱が引いて元気を取り戻してくると、起きてマツのところにいきマツが拾ってきた「クルミ」を見て喜びます。

武造は、クルミが大好きだったのです!!

その日の晩御飯は、武造も普通に御飯を食べれるようになっていました。

マツもてんこ盛りの御飯と味噌汁、漬物を食べて満足します。

この日も、養女にきたマツの一日は洗濯したり、山にクルミ拾いに行き、それを池に浸けたりとで大忙しでした。

腹いっぱい食べたマツは、一日の働きの疲れでまぶたがおもくなってきました。

布団に入るとすぐに眠り込んでしまいました。

《マツが山で拾って池に入れてあった「くるみ」は、水分をたっぷり含んできました。》

 ヨネ:{そろそろ池からくるみを引き上げてもいいべー。}

引き上げられたくるみは、木槌で軽くたたき実をほぐしてからきれいに洗います。

そして、それを厚手の鍋でいります。

堅い殻に覆われたクルミに割れ目が入ったら、包丁を差し込み割ります。

割れたら、中身を竹串でとりだします。

この中身を竹串でとりだす作業は、マツと武造も手伝います。

武造は、すっかり体調も回復していて大好きなクルミの中身を取り出したらそれを食べました。

美味しくて武造の顔がとても嬉しそうです!

マツも武造の顔を見ると、取り出した中身を食べたくなりました。

武造がマツに食べるように取り出した中身を渡しました!

 マツ:{美味いなー!}

武造とマツは、どんどんクルミの中身を取り出し、また食べました。

ヨネは、クルミが溜まったか見ると、溜まっていません!

 ヨネ:{食べてばかりいねーで溜めてけろ!}

ヨネのやや強い口調で怒られたマツは、食べるのをやめて溜めはじめました。

耳が聞こえない武造も、雰囲気を察して食べるのをやめ溜めはじめます。

マツは、このクルミでまた「柱磨き」をしなければならないのかと思い気が重くなります。

養女としてのマツの生活は楽ではありませんでした。

マツの試練は続きます。
posted by junko at 13:10 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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