「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年10月21日

第43話 結婚の誘い

愛らしい丸顔の乙女マツは、行商に行くと結婚の申し出に直面しました。

育ての親に気を使いながら養女として暮らしてきたマツは、辛抱強さと慎みなど自然と自分の内で上手く生活する方法を身につけてきました。

周りの人は、そのようなマツを見て好ましく思います。

行商で、履物屋にはいります。

 履物屋の奥さん:{行商、ご苦労さんだなー、野菜買ってあげるだー。オラんとこに
      オメーと同じくらいの年の息子がおるだが、嫁にこねーかー?}


 マツ:{野菜、買ってくれてありがとう、オラは、まだ結婚のことは考えて
      ねーだー}


 履物屋の奥さんは、マツを自分の息子のにしたくて、なおも誘います。

 履物屋の奥さん:{オラんとこの息子と結婚すれば、楽して暮らせるようになるだー、
      オメーは寒い中でもよー行商をがんばっておったなー、もう行商はしなくても
      いいだー。ほんだから、嫁にこねーかー?}


 マツは、行商をしなくてもいいと聞き、その申し出に魅力を感じましたがどうしても結婚は考えられませんでした。

マツが、断ると履物屋の奥さんはさらに誘ってきました。

 履物屋の奥さん:{オメーは、遠田に住んでいるようだなー、「遠田には嫁にやるな」と
      昔から言われてることだー、遠田に嫁に行くと、一生こき使われるだー、苦労
      するだー。オラの家は農家ではねー、履物屋だ、店番するだけでええだー}


 マツ:{ありがとう、ほんでもオラはまだ結婚は考えてねーだ}

そして、丁寧に断わります。

行商の帰りに吾一の息子の吾介に会います。

 吾介:{マツでねーか、行商がんばっとるなー。オメー、ほんとに武造と結婚するんか
      ー?}


マツは、また結婚の話かと思い軽く聞き流そうと思います。

 マツ:{オラはまだ結婚のことは考えてねーだー}

そして帰ろうとしますが、吾介はなおも話しかけてきました。

 吾介:{耳の聞こえねー武造と結婚して、オメーは幸せになれるだかー?}

 マツは、武造のことが結婚相手とは真剣に思っていませんでしたが、武造への偏見が気にさわりました。

 マツ:{武造は、耳が聞こえねーけど悪い人ではねー、お父とお母はオラと武造を
      結婚させるつもりだけど、オラはまだ結婚するつもりはねーだー}


吾介は、マツのことを気にかけてることを話します。

 吾介:{たいがいは親の決めたとおりになるだー、ほんでも、オラは、オメーが気の毒
      でたまらねーだー、オメーは小さいときから養女に行って苦労してきただー、
      だから、せめて結婚相手は普通の健康な男と一緒になって幸せに暮らしてほ
      しいと思っているだー}


マツも思いの中で、結婚は普通の人がいいかなーと思ったりもしたことがありました。

 吾介:{オラはオメーの幸せを考えてるだー}

マツは、吾介が自分のことを気にかけてくれてることを嬉しく思いましたが、その場は丁寧に去りました。

マツは、このように結婚の話が出るようになって、自分の結婚相手について真剣に考えるようになってきました。

武造のことが好きでしたが、あんちゃ(兄さん)のようでしたし、耳が聞こえないことの大変さも分かっていました。

関衛門とヨネから、まだ結婚についての具体的な話はなかったので、ほんとに自分は武造の嫁になるんだろうか・・?と考え始めました。

一方、武造はマツのことを妹のように思い、かわいく思っていました。
 
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2008年10月14日

第42話 日露戦争の思い出

関衛門が、勲章授賞式から帰ってきてから、親戚でその祝いをすることになりました。

関衛門の家で祝いの「おもち」を作ります。
「餡子もち」と「納豆餅」をつくります。

その地域(下井村の遠田)では、餡子はややスープ状につくりそれをお椀に入れます。

そして、つきたてのお餅を入れます。

その上から「クルミの実」をすり鉢ですりつぶし、少しだけ水を加えとろとろにしたものをお椀に盛られた「餡子もち」の上に適量かけます。

この「餡子もち」はマツも大好きで、喜んでお餅作りを手伝います。

一方、武造は「納豆餅」が好きでした。武造は納豆餅を食べるときはほとんど噛むことなく飲むようにして食べていました。

(当時、その地域ではお餅を噛んで食べるのではなく、飲むようにして食べることが普通だったようです。)

祝いが始まり、日露戦争のときに軍曹だった関衛門が「勲章」を見ながら陸軍として激戦区で戦っていたときに、銃弾が頭をかすめヘルメットに穴が開いたことを話し始めました。

しかし、関衛門はそれ以上のことは何も話そうとはしませんでした。

マツの実の父親(お兄)が、「勲章」を見ていいます。

 お兄:{オメーは戦争でりっぱな働きをしたから天皇陛下から勲章をもらえたんだ!
      村の人たちに自慢してもええことだ!オメーたちをよそ者としてみてる村の
      人たちを見返してやればええ!}


そのお兄の言葉に、周りにいた親戚の人たちは{そうだ!そうだ!}と言いますが、関衛門はちがいました。

 関衛門:{この勲章はオラと一緒に働いた戦友たち皆のものだ!大怪我した戦友、
      死んでしまった戦友・・・・皆・・国のために一生懸命に戦ったんだ! 
      何もオラが自慢することではねー}


そのようにして、関衛門は戦いのことで胸がつまる思いをしながら勲章を見つめました。

その後、勲章は関衛門の家に大事に保管されています。

美味しかったお餅を食べながらの祝いも終わり、次の日からはまた、マツは行商にいきます。

村人で吾一という人が、マツに会い結婚のことを言います。

 吾一:{マツ、いつも行商ごくろうさんだなー、オラんとこの吾介の嫁になら
      ねーかー?}


マツは、戸惑いますが断ります。

 マツ:{オラはまだ結婚はしねーだー}

 吾一はさらにマツに言います。

 吾一:{吾介は気立てのええ男や!オメーを大事にしてくれるだー、
      嫁にこねーかー!?}


マツは、それでも断ります。

 マツ:{オラはまだ結婚は考えてねーだ}

 吾一:{マツ、オメーは関衛門の家に養女にいって行商したりとよー頑張っていると
      思うだー、ほんでも、オメーはもういい年頃だ!オメーの幸せのために結婚
      相手も大事なことだ!そうは思わねーかー?}


マツは、結婚の話はもうええと言い、先に行こうとします。

 吾一:{マツ、よー考えたほうがええぞ! このままではオメーは耳が聞こえねー武造
      と結婚することになる!身体障害者と結婚してもええんかー?}


マツは、吾一のその言葉が心にひっかかりました。

マツは武造を好きでしたが、結婚相手とは真剣に思っていませんでした。

 マツ:{オラが武造と・・?オラは武造と小さいときからずっと一緒だった・・・ほんでも、
      武造は「あんちゃ」(兄さん)のようで・・}


吾一は、戸惑っているマツにさらに話します。

 吾一:{オメーが関衛門の家に養女にいった理由を知っているか?オメーは、武造の
      嫁になるために養女にいったんだ!}


マツは自分が養女にいった理由を聞いていましたが、10代後半になって思いがいろいろ変化する時期になっていました。

さらに身体障害者に対する村人の偏見もマツにとっては気になるところでした。

吾一とそのような話があった後も、ほかにも行商してるときにマツに結婚の誘いがあります。
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2008年10月08日

第41話 勲章

《武造とマツも10代後半になりました!》

マツは、行商と柱磨きが嫌で、数回ほど(養女はイヤだと言って・・)実家に泣きながら逃げ帰ったこともありましたが・・・

何とか・・てんこ盛りの御飯を食べることで元気づき、行商と柱磨きをずっと忍耐強く行ってきました。


【そのころ、関衛門宛てに驚くべき郵便物が届きます!】

差出人は、ナント!天皇陛下からでした!!

関衛門が、日露戦争において日本国のためにりっぱな働きをしたことが認められて勲章の授賞式に出席するようにということでした!!

関衛門は嬉しさのあまり興奮します!

興奮しながら、そのことをヨネに話します。

ヨネもびっくりしました!!

関衛門とヨネが興奮して嬉しそうな顔をしているので、武造は何があったのかを知りたいと思います。

でも、武造は耳が聞こえないので、勲章の意味も分かりませんし、天皇陛下と言っても理解できません。

関衛門は授賞式に行くことを、武造にどのように分からせたらいいでしょうか・・・。

関衛門は、手振り身振りで一生懸命に教えようとします。

天皇陛下は国で一番偉い人であること!  その天皇陛下から働きが認められた人だけにあげるのが「勲章」であることを教えます。

武造は、関衛門の手振り身振りを必死に理解しようと努めました!

東京に一番偉い人「天皇陛下」がいて、自分の父親が天皇陛下から大事なものをもらえるということを理解しました!!

関衛門とヨネの今までに見たことのないほどの嬉しい表情を見た武造は、天皇陛下が“凄い人”であると思うようになります。

天皇陛下が神様のように思いはじめました。

そして、その天皇陛下から認められた自分の父親も偉いんだと思います!

武造は嬉しくなり、父親のことを誇らしく思います!!

そして、村の人に会うと「自分の父親は偉いんだ!」と手振り身振りでいいました!

村人は、相変わらず身体障害者の家には偏見がありましたので、そっけない反応をします。

 村人:{武造、オメーの家には良いことは何もねーべー、
      オメーは耳が聞こえねーからな}


と言い、身振りで武造をバカにします!

武造は、自分が耳が聞こえないことをバカにされたので、“グッ”ときます。

その時代(大正)では、村人の多くが「よそ者」(武造が耳が聞こえなくなった事件以来、この村に引っ越してきたので村人からはよそ者とみられてました)の関衛門と身体障害の武造がいるということで、村人の偏見は根強くなかなか取れませんでした。

武造も年齢も10代後半になってきていて、自分の境遇に関して敏感になっていました!

何で自分は耳が聞こえないんだ・・と・・・・。

一方、マツは野菜が採れるようになると行商にいきます。

10代後半になったマツは、ますます愛らしい乙女になっていました。

そのようなマツを見ると、目をつける村人もいます!!

 そのことは、次の記事に続きます。
posted by junko at 16:50 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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