「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2008年11月28日

第47話 よそ者

祭りの場で大きなショックを受けて帰ってきた武造を見て、マツも心が痛みました。

なんとか武造を励まそうとします。

神様は、けっして武造のことを嫌ってはいない!!と身振り手振りで話します。

武造は、それでも意気消沈して元気が出ません。

マツは、関衛門が村人たちにうまく話して、武造も「みこし」を担ぐのに参加させてもらえると期待しながら関衛門の帰りを待ちました。

一方、関衛門は村人たちに何故、武造を「みこし」を担ぐことに加わらせてもらえないかを聞きました。

 関衛門:{オラんとこの武造は、もう一人前の男になっただー、「みこし」を担ぐことに
      何故、加えてもらえねーだー?}


村人たちは、武造を参加させれないことは当然のように言います。

 村人:{「みこし」を担ぐには、五体満足の健康な男だけだず!}

関衛門は、耳が聞こえない人に対する偏見は良くないことを訴えます。

 関衛門:{武造は耳が聞こえねーけど、皆と同じりっぱな人間だ、オメーたちは、武造
      が「みこし」を担ぐと神様から罰があたると思っているようだなー、それは、
      絶対に違うべずー!神様は人を平等に見てくれるはずだず!!}


村人たちは、聞く耳を持とうとしません。

 村人:{オメーが何と言っても武造には「みこし」を担がせ
     ねーだー、それに、担がせねー理由は他にもあるだー}


関衛門は、それを聞いて、他の理由がすぐに分ります。

関衛門の家族は、武造が耳が聞こえなくなった(豆事件)後に、この村(下井村の遠田)に引っ越してきて、それからは、ずっと村人からは「よそ者」として見られてました。

 村人:{「みこし」は、元々この村で生まれ育った者だけが担ぐことができるだー}

実際に、関衛門はこの村に来てから「みこし」を担ぐことに参加したことがありませんでした。

関衛門は、よそ者として見られるのは自分の世代だけにしてほしいと願っていましたので、村人たちの偏見の根深さにガッカリしました。

 関衛門:{確かに、オメーたちからは、オラたちはよそ者だ、ほんでも、オラたちはこの
      村に来て長く住んでるだー、武造は、赤ちゃんのときからこの村で育ってきた
      だー、他の村のことは知らねーだー、だから武造は、この遠田の人間で
      よそ者ではねーだ!}


関衛門の必死な訴えにも村人たちは冷ややかでした。

 村人:{ほんでも、武造が「みこし」を担ぐことはできねーだ}

関衛門は、ガッカリして帰っていきました。

マツは、関衛門の話を聞いて、武造がますますかわいそうになりました。

耳が聞こえないという偏見だけでなく、よそ者として見られているので、村人から受け入れられないのです。

(やっぱり、武造は自分が結婚してあげないと誰とも結婚できない)とマツは思いました。

このことからマツは、武造との結婚を前向きに考え始めました。

そして、この後武造とマツの結婚式へと物事が順調に進むかと思いましたが・・・・。




posted by junko at 16:19| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月20日

第46話 祭りでの偏見

武造の住む下井村の遠田で、年に一度の祭りが夏に行われました。

昼には、「巫女」の舞があり、お餅がまかれました。

そして夜には、かなり重みのある「みこし」を男の人たち30人ぐらいで担いで、山の頂上まで上ります。

夜に山の頂上まで上るので、「たいまつ」を持つ人もいます。

この「みこし」を担ぐことができるのは、一人前の男です。

武造も年齢的に、一人前の男なので「みこし」を担ぐのに参加できると思いました。

武造は、自分も初めて皆で「みこし」を担ぐことができると思い、朝からワクワクしていました。

夜になり、武造は「みこし」を担ぐために、皆が準備しているところに行きます。

村の人たちは、武造を見ても積極的に接していきません。

武造は、身振り手振りで自分も「みこし」を担ぐといいます。

村の人は、誰も武造と一緒に「みこし」を担ごうとは思っていません。

 村人:{武造、オメーは担がなくてもええ!}

身振り手振りで、武造の参加を拒みます。

それでも武造は、自分も一緒に「みこし」を担ぐんだ!と訴えます。

 村人:{武造、オメーはダメだ!}

武造は、自分と同じ年齢の男が「みこし」を担ぐ準備をしているのを見て、何故、自分はダメなのか納得がいきません!

身振り手振りで、自分も「みこし」を担ぐといい、村人たちの中に入ろうとします。

村人は、武造の手をとり脇へ連れて行き、参加は出来ないといいます。

村の人は、縁起を考えて、耳が聞こえない身体障害者が“神聖なみこし”を担ぐと縁起が良くないと考えます。

また、神様からの罰があると思います。

 村人:{武造、オメーが「みこし」を担ぐと神様から罰があたるだー、山の頂上で皆死ん
     でしまうかもしれねーだー}


村人の身振り手振りを見て、勘のいい武造は、自分が「みこし」を担ぐと神様から罰を受けると思っていることを悟ります。

武造は大きなショックを受けました!!

ガッカリして家に帰っていきます・・・涙が出てきました・・。

何故?・・・神様は本当に・・自分が「みこし」を担ぐことを許されないんだろうか・・・? 耳が聞こえない身体障害者を神様は嫌っているんだろうか・・・・?

武造は、村人たちの偏見だけでなく、神様からも受け入れられないのだろうか・・・?

そのことが、武造を悩ませました。

マツは、ガッカリして帰ってきた武造を見て、村人たちの偏見で武造が「みこし」を担がせてもらえないことがわかります。

武造はすっかり元気がありません。

マツは武造がかなりショックを受けていることを悟ります。

マツは関衛門に、そのことを話します。

関衛門は、武造を励まそうとします。

武造は、感情を抑えられなくて激しく泣きだしました!

武造は、村人が自分が「みこし」を担いだら神様から罰があたると思っていることを身振り手振りで話します。

関衛門は、村人たちに怒りを感じますが、冷静さを保ち、{自分が村人たちに話してくる}と言って出かけていきました。

posted by junko at 11:15| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月12日

第45話 結婚話に悩むマツ

関衛門とヨネから武造との結婚話をされてから、マツは実の親に相談することにしました。

 マツ:{お母(おかー)、オラが養女にいったのは武造と結婚して子供を生んで家系を
     つなぐためだったんだべー}


 お母:{ほんだー、オメーの言うとおりだー、あっちのお父とお母から、何か話しがあっ
     ただかー?}


 マツは、行商してるときに結婚の誘いがあることや、関衛門とヨネから武造との結婚について話があったこと、また自分は、結婚相手は普通の健康な男がいいと思っていることを話はじめました。

 マツ:{行商してると町の人から結婚の誘いがあるだー、履物屋の人からも誘いをうけ
     ただー、そこの履物屋の嫁になると行商しなくてもええらしいだー、店番するだ
     けでええーと言うとっただー}


マツの実のお母は、すぐにマツの気持ちの動き(武造以外の男との結婚を考えてること)を悟りました。

 お母:{オメーは、その履物屋の息子と結婚してもええと思っているだかー?}

 マツ:{履物屋の女将には断っただー、行商しなくてもええと聞いたときには、いい話に
     思えたけど・・・}


お母は、マツが武造のことをどう思っているかを聞きます。

 お母:{ほんだかー、オメーもいい年頃になっただー、嫁にもらいたい人はおるべー、
     ほんで、オメーは武造のことはどう思っているだかー?}


マツは、少し黙ってから自分が考えていることを話始めました。

 マツ:{武造は好きだけども、あんちゃのようで・・オラ・・・結婚相手は普通の健康な男
     がええと思うようになっただー}


お母は、マツの気持ちを理解できますが、養女にだしたときの関衛門とヨネとの約束があります。

また、体が弱かった武造がこの年齢まで生きるとも思っていませんでした。今となって約束を破ることはできません。

 お母:{マツ、オメーが武造と結婚したくないのは武造が耳がきこえねーからか?}

 マツ:{ほんだー、村の人たちの目も気になるだー}

お母は、身体障害者の家に対する村人たちの偏見が強く、マツが武造と結婚したら、その偏見に耐えながら生きていかなければならないことも分かります。

 お母:{オメーの気持ちはよーく分かるだー、ほんでも、あっちの親と約束しただー、
     あっちのお父とお母は、自分たちの家系が途絶えてしまうことをとっても心配し
     ておっただー、それだけではねー・・・オメーが養女にいったころは、うちも皆
     が食べていくのに苦しかっただー、ほんだから、オメーも養女にいくとご飯を腹
     いっぱい食わせてもらえるということだっただー}


マツは、たしかにご飯をてんこ盛りで食べてきました。
でも、いざ結婚となると気持ちが揺らいでしまいます。

 マツ:{この前、吾介と会っただー、オラが養女として苦労してきたからせめて結婚
     相手は、普通の健康な男と一緒になって幸せに暮らしてほしいと思っていると
     言っておっただー、オラの幸せを考えてると言ってただー}


お母は、吾介がそのようなことを言ったことに驚きます。そして、吾介がマツに好意を持ってることを悟ります。

 お母:{吾介がそんなことを言っただかー!・・・ほんで、オメーは何て答えただか
     ー?}


マツは、結婚のことはまだ考えてないと言ったと話します。

それを聞いてお母は、少し安心します。そしてなるべく早く武造と結婚させなければいけないと思います。

 お母:{武造は耳がきこえねーけど、オメーたちは小さいときから一緒に暮らしてる
     から互いのことは分かってるベー、}


マツはうなづきます。

 お母:{武造との結婚はどうしてもイヤだかー?}

 マツ:{どうしてもイヤというわけではねーだー、結婚した後のことも考えたりすると悩
     んでしまうだー}


お母は、武造の気持ちにマツの注意を向けます。

 お母:{武造はオメーと結婚する気でいるではねーかー?オメーが養女にいったとき
     から、武造はオメーのことを本当に可愛がってくれてただー}


それを聞いてマツは、小さい時からのことを思い出しました。

武造が自分の髪を梳いてくれたことや、自分に着物をきせて紐を「ちょうちょ結び」にできたこと・・・

自分が学校に通った少しの間の一緒の登下校・・

また、自分が寒い中、行商に行ったときに武造が、自分の帰りを玄関でずっと待ってて「しもやけ」になった手を武造が自分の息で暖めてくれたことなど・・・・

マツは武造のことがかわいそうになってきました。

耳が聞こえない武造は、自分が結婚してあげないと他に結婚してくれる人がいないと思えてきました。

 マツ:{武造は耳がきこえねーだ・・オラが結婚してあげねーと武造は誰とも結婚でき
     ねーかもしれねーだー}


マツがその気になってきたことでお母は安心します。

 お母:{オメーが武造と結婚してからも悩みがあったらいつでも相談にのるからな、
     村人の目はあまり気にしねーことだー}


このようにマツが武造との結婚に気持ちが向き始めたころ、村で祭りが行われました。

その祭りでのことは武造を悩ませました。

 
そのことは次回に続きます。
ラベル:行商 養女 家系 結婚
posted by junko at 17:54| Comment(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月07日

第44話 結婚に対するマツの思い

マツが、村の人たちから結婚の誘いをされるようになって、マツも配偶者について真剣に考えるようになりました。

十代後半になっていて法的にも結婚できる年齢で、気持ちも揺れ動く時期に入っていました。

マツにとって武造は、あんちゃ(お兄さん)のようで、武造が耳が聞こえないことに伴う大変さも分かってました。

また、身体障害者のいる家に対する村人の強い偏見も気になっていました。

いろんなことが、頭を駆け巡り・・・結婚相手は普通の人がいいかな〜・・と思えてきました。

そのように考えていた頃、関衛門とヨネからマツに結婚についての話があります。

 関衛門:{マツ、オメーも年頃になっただー、そろそろ結婚してもいい時期ではねーか}

マツは、黙っています。

 関衛門:{オメーを養女にしたのは、武造と結婚させて家系を存続させるためだ、
      そのことは分かっておるべー}


マツは、うなずきますが黙っています。

ヨネも武造との結婚について話します。

 ヨネ:{武造もオメーも結婚できるいい年齢だー、そろそろ結婚はどうかとおもっている
      だー、武造は耳が聞こえねーけどオメーと結婚すると思っているだー、
     近いうちに式を挙げるのはどうだべかー?}


マツは、自分の本心をなかなか言い出すことが出来ません。

武造との結婚は親によって小さい時から決められていましたので、ここで普通の健康な男がいいと考えてることを話せません。

マツが黙っているのを関衛門とヨネは気になります。

 関衛門:{実際に結婚となると誰でも最初は気が引くもんだー、ゆっくり気持ちを落ち
      着かせて考えたらええ!}


マツはうなずきます。その結婚の話があってからマツは悩み始めました。

親が決めたことを翻すことは難しいのは分かっていました。

マツは悩み・・実の親のところに相談に行くことにしました。

一方、武造にとってマツはかわいい妹のようですが、マツとの結婚に関しては悩むことはないようです。

マツの思いはうまく処理できるのでしょうか・・?
posted by junko at 14:42 | TrackBack(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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