「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2009年05月30日

第58話 いなくなった花婿は何処に?

涙をこらえ・・“ぐっ”と自分を抑えているマツ・・・

とうとう・・結婚式は三三九度から最後まで花婿は代役で行われました・・・。

いなくなった花婿の武造は何処にいったのでしょうか?

探しに行っていた人たちは、駅や村中、また山へと手分けして武造を探しに行きました。

武造はなかなか見つかりません。

あたりも薄暗くなってきました・・・

{おーい、武造!}

山に探しに行った人たちは、どんどん山の上に登りながら武造の名前を呼び続けます!!

{武造は耳きんか(つんぼ)だから呼んでも聞こえねーではねーか!!}とある村人が言います。

{耳が聞こえねー人をこんな山ん中で見つけるのはたいへんだずー}

{おーい、耳きんかー、何処にいるー!?}

{おーい、耳きんかー}


村人たちが、耳が聞こえない武造をそのように呼ぶのをある村人がとがめます。

{今日は、武造の結婚式ではねーかー、耳きんかと言ってはならねーだー、耳が聞こえなくたって、そんな呼び方をしてはいけねーだー!} 


{耳が聞こえねー一人息子といって、関衛門たちが甘やかして育てたから結婚式にいなくなるという・・こんな・・わがままな人間になるんだ・・}

{ほんだー、これじゃーマツがあまりにも可愛そうではねーかー、だいたい、武造とマツはいいなずけとはいえ、武造にマツはもったいねーと思っていたんだ}

{ほんだー、オラもそう思っていただー、武造は昔から体が弱かったから、この歳になるまで生きるとは思わなかっただー、マツはオラの息子の嫁に欲しかっただー}

{オメーもそう思ってただかー!!オラもそう思ってただー} 

{オメーたちは、武造が早くに死ぬのを望んでいたんだかー?}

{ほんだ、今だから言えるけど・・・だけど・・今となっては・・結婚式まできてしまっただー・・式も代役でしているだー・・}


・・・・・・・・・

{早く、武造を見つけねーとすっかり暗くなるど!}

探していた村人たちは焦り始めます・・

どんどん山を登っていたので皆、ハーハーと息切れしてきます・・

山の頂上に登り着いたころ・・・


{あっ!!あそこに座ってるのは・・武造ではねーかー!!}

{ほんだ、暗くて見えにくいが姿は確かに武造だー!!何か見てるんではねーかー?}



武造は花婿姿のまま山の頂上に座っていて、埼玉の女性からの手紙を「じっ」と見ていました・・・


暗くなってきて武造も周りを見回すと・・・・

大勢の村人たちが息を切らしながら自分のところに向かってきました。

武造は、手紙を大事そうに懐に入れます!

{武造!やっと見つけたぞ!今、懐に入れたのは何だずー?}

そう言って、武造の懐に手を入れて取ろうとしましたが、武造はすばやく身をかわし逃げようとします!!

{武造!逃がさねーど!!}

村人たちが四方から武造を囲み、とうとう武造は村人たちにつかまって山を下りてきました。


山を下った時には、あたりは真っ暗でした!!


結婚式を行っていた家の中では、式も終り、皆で食べたり飲んだり、歌ったりと賑やかでした!!

そこへ花婿姿のまま山に逃げていた武造が村人に引っ張られて連れられてきました。

マツは、一瞬、武造を見ますが、悔しさと怒り・・そして惨めな気持ちで、ずっと下を向いたまま顔を上にあげようとしません・・・


戻ってきた武造を村人たちは、手ぶり身ぶりで怒り始めます!

関衛門とヨネも怒ります!

皆から怒られている武造は下を向いています・・


波乱の結婚式の日は、夜中の12時まで飲み会が続きました・・・


・・・・・・・・・

村人たちが皆帰って家族だけになった時、マツの気持ちは限界まできていました・・・




posted by junko at 16:38| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月22日

第57話 波乱の結婚式

三三九度のときになって、武造が花婿の席からいなくなっていました!

しばらく待っても武造は戻ってこないので村人たちが騒ぎはじめました。

関衛門も焦りを感じます・・


村人A:{武造はどうしたんだべー・・?}

村人B:{ほんだ、武造はいつからいなくなったんだべ・・?三三九度に花婿がいねーと
     出来ねーではねーか・・}

村人C:{時間がねーど、関衛門、武造がどうしたか心当たりはねーかー?}



関衛門は、武造がこの結婚式に乗り気ではなく、埼玉の女性に心が向いてたことを思い・・

関衛門:{武造はもしかすると、どこかに行ったかもしれねー・・・オラ、駅に行ってみる
     だー}


村人A:{駅に・・? 関衛門、オメーは花婿の親として結婚式の場から離れてはなら
     ねーだー} 

村人B:{ほんだ、それに武造は駅に行って、一人で汽車に乗れるんだかー?}

関衛門:{武造は一人で汽車に乗ったことねーだー、でも、もしかしたら・・・・・}

村人B:{どうするべかー?今、武造が戻ってこねーと・・時間がねーど!・・・結婚式は
     中止だべか・・}

村人C:{いや、それは出来ねーだ! 昔から村あげての結婚式を中止することはあっ
     てはならねーことだー・・}



花嫁のマツは、そんなやり取りを見てて武造に対して怒りを感じます。

今すぐにでも、花嫁衣装を脱ぎ棄てたい気持ちです・・・・

それでもマツは、自分をじっと抑えます・・・。


村人A:{時間がねーだー・・ほんでも結婚式を中止することはできねーだー!}

村人B:{ほんじゃー、どうすっべーずー!!?}



関衛門は、とにかく武造を探しださないといけないと思います。

関衛門:{何人かで武造を探してきてくれねーか?}

村人C:{時間がねーだ、探しにいく人の人数は多い方がいいではねーか?}

村人B:{ほんだー、半分は探しにいったほうがいいべー} 


村人A:{式はどうすっべずー?誰か、武造の代わりになってくれねーかー?}


それを聞いた関衛門は焦ります!!

関衛門:{武造の代わり?そんなこと出来ねーではねーか!!}

村人A:{もう、時間がねーだ! 式を中止することもできねー、誰かが武造の代わりを
     するんだー}


それを聞いた村人たちは、一斉に

村人たち:{そうだー、もう、そうするしかねー!}

関衛門とヨネは、焦りますが村人たちの勢いに圧倒されます・・

村人A:{誰でもええから、花婿の代わりを務めてくれねーかー?}

村人たちは、互いを見合います・・・

村人Aは、自分の傍にいた人(村人D)に向かって、

村人A:{オメー、花婿の代役をしてけろ!}

村人D:{オラが・・?オラは結婚して妻も子もいるではねーか}

村人A:{分かってるだー、ただ代役をするだけだー、早く、花婿の席に座ってけろ!}

村人B:{ほんじゃー、式は代役で続けてするべー、人数は・・・そうだなー・・半分は、
     このまま式を続けて、後の半分は武造を探しに行こうではねーか!}



そのようにして、結婚式は花婿の代役で続けることになったのです!!

式に集まっていた人数の半分は、そのまま式に出て、あとの半分は武造を探しに出かけました!!


村人A:{ほんじゃー、三三九度から代役でいくずー}

武造の代わりに他の人が・・?マツは、武造に対して怒りがこみ上げますが、じっと我慢しています・・

とうとう、花婿は代役で三三九度が行われました!

マツは、怒りと惨めな気持ちで泣き出したいのを“ぐっ”と堪えてました。


posted by junko at 17:21| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月20日

第56話 いよいよ結婚式!第一日目

武造とマツの結婚式の日がやってきました!!

当時は、親同士が子の結婚を決めることがほとんどで、武造とマツも親の声に逆らえず結婚式という日を迎えました。

結婚式の早朝、武造は関衛門に埼玉の女性からの手紙を見せて、この女性と結婚したい!と訴えます!

関衛門はそれには何も応じず、結婚式の準備はしっかり出来ていることを確認し、大事な一人息子の結婚式に早朝から慌ただしくしています。

ヨネは武造に花婿の支度をさせていきます。

マツの花嫁支度も実の母親や親せきの人たちでしていきます。

花婿と花嫁の支度も整いました!!



村人が関衛門の家に次から次へとやってきました!!

来る人来る人、皆、男の人です・・・・

当時の下井村では、結婚式の一日目は、村の各家から男の人が一人代表で結婚式に出席するのが習わしでした。

家の中が、村中の男の人でいっぱいになりました!!

そして、いよいよ結婚式が始まりました!!


花嫁の親せきの男の人が花嫁をおぶりました。(おんぶ)

花嫁をおぶって、花嫁が嫁ぐ家の玄関から家の中に入ります。

(これは、花嫁はいったんこの家に入ったら、この家から出ない、この家に生涯尽くすことを意味していました)

それから次は、花嫁が親せきのおばさんに付き添われて、隣近所を一軒ずつ挨拶回りをします。

マツは言われたとうりに、一軒ずつ挨拶していきました。

挨拶回りが終わって、家の中で式が行われ『三三九度』が執り行われるときになりました!


その時になって、武造がいつのまにかその場にいなくなっていました!

すぐに、花婿の席に戻ってくると思いしばらく待っていましたが、武造はなかなか戻ってきません!!

村人がざわついてきました・・・

武造は家の中にはいないことがわかりました・・・・


武造はどうしてしまったんでしょう・・・


ラベル:花婿 結婚式 花嫁
posted by junko at 17:59| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月15日

第55話 結婚式も一週間後に・・

相変わらず武造は、埼玉の女性からの手紙を肌身離さずに持ち歩き、それを眺めては“ぽ〜”としています。

武造は耳が聞こえないので、マツが自分の近くにいることを気づかないことも多くあります。

それで、すっかりのぼせてる武造は、埼玉の女性からの手紙を見ているところをマツに見られてることも気づきません。

マツは、そんな武造を見るたびに不愉快でたまりません。



武造は、その埼玉の女性との結婚にあこがれています。

「天皇陛下のそばから嫁をもらえる!!」


そして、指を一本(人差し指)を額の真中にあてて、その指を東京の方に向けます。



天皇陛下を神様のように思っている武造は、あきらめる気配がありません。

武造は、その女性とどうしても結婚したいのです。


それで、マツの気持ちは全く考えていません。


(でも、マツのことを嫌いではありませんでした。

可愛い妹のように大事に思っています。)



ヨネが二人の結婚式のことについて話にきました。

結婚式はいよいよ一週間後です。

ヨネ:{オメーたちの結婚式の準備はできてるからな、村をあげての式だ!家の中、人
     でいっぱいになるからな}



マツは、武造と結婚したくない!と言いたくても声にだして言えません。


幼い時から、養女として生活してきたマツは、ヨネにたくさん気を使ってきました。

自分の気持ちをそのまま言えなく、ヨネに口答えするのが怖かったのです。



マツは、武造に目をやるとやはり“ぽ〜”としています・・。


マツはすぐにでも家を飛び出して実家に戻り、武造と結婚しなくていいように願いますがヨネが怖くてできません。


結婚式が一週間後となってマツは焦りますがどうしようもありません・・


いっそのこと、関衛門とヨネの気持ちが変わり武造と埼玉の女性との結婚に話が進んだらよいのに!!

マツはそう願いますが・・・そうにもなりません・・・




夕食の時間になり、薪で炊いた香ばしいご飯の匂いがしてきました!


香ばしい匂いで武造はご飯だと分かり、埼玉の女性からの手紙を大事そうに懐に入れて台所にきました。

マツを見ますが、マツはいつものような表情ではなくうつむいています。

武造を見ようとはしません!


武造はご飯をたべながら、マツを見ますがマツはうつむいたままです。


マツは食もあまりすすみません・・


武造はマツにご飯を食べるように促しますが、マツはうつむいたままです。


マツはご飯をあまり食べないでさっさと出ていきました。


ようやくマツが変だ!と思った武造は、自分もご飯をさっさとすませてからマツのところにいきます。



体の具合でも悪いのか・・?と身ぶり手ぶりでマツに聞きます。


マツはそんな武造に対して怒りを感じます!



マツは武造に答えようとしません!うつむいたままです・・。


埼玉の女性にすっかり気を取られてる武造は、マツの気持ちにうとくなってました!



マツは武造を避けるようにその場を離れました。



そんなマツを見ても武造は、また手紙を取り出し、眺めては“ぽ〜”としています・・。



二人の様子を見て心配になった関衛門は、武造に手紙を自分に渡すように言います。


そして、一週間後にマツと結婚するんだ!といいますが、武造は手紙をはなしません!


そして、指を一本(人差し指)を額の真中にあてて、その指を東京の方に向けます。


自分は、この女性と結婚する!と訴えます。



関衛門は、ダメだ!!と言いますが武造は納得しません。



関衛門は、武造が納得しなくてもマツと結婚させることを変えません!




武造は、天皇陛下の近くにいる女性と結婚したい!!

一方、マツは、普通の男性と結婚したい!!



そんな気持ちのまま・・・


とうとう村をあげての結婚式!!その日がやってきました・・



posted by junko at 12:13| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月01日

第54話 結婚はやはり普通の男性と・・

天皇陛下の近くにいる女性と結婚したい!という武造の気持ちを知った関衛門とヨネは、困ってしまいました。

このことで、マツの気持ちも変わってしまうのではないかと心配になったのです。

武造は相変わらず、その手紙を肌身離さずに持っています。

そして、関衛門に手紙を見せながら、「この女性と結婚する!」と言います。

関衛門はそれはダメだと首を横に振り、マツとの結婚に注意を向けようとしますが武造は聞きそうにありません。

マツは、武造がその手紙を常に持ち歩いているのを見てだんだん気持が揺らいできました。

(耳が聞こえない武造が可哀そうで、自分が結婚してあげようとしたのに・・・

結婚相手はやっぱり健康な普通の男性が・・・・・)

そんな思いが心をよぎってきました。


ヨネがマツに近づき武造との結婚式について話し始めました。

ヨネ:{マツ、武造とオメーの結婚式だが準備は順調にいってるからな、昔からの
    しきたりで村をあげての式だ、オメーは
    まもなく武造の嫁になってこの家を継ぐんだ。}


ヨネの言葉にマツは返答できませんでした!気持が既に揺らいでいたからです。

黙っているマツを見たヨネは、マツの気持ちをある程度察しますが、武造と結婚させるという目的は変わりません。

関衛門とヨネは、結婚式のために着々と準備をしていきました。

マツは、悩み・・実の親のところに相談に行きました。

マツ:{オラ、武造と結婚はしたくねーだー}

マツの実の母親は、マツの気持ちが揺らいでいることを知り何があったか聞きます。

{オメーは武造と結婚することを決めたんではなかったかー・・結婚式の準備も進んいるではねーか・・今になってどうしただー・?}

マツ:{オラ、やっぱり普通の男性と結婚したいだー・・}

結婚式を目前にしてマツの気持ちが揺らいでいるのでマツの実の母親は戸惑います。



マツの気持ちは分かるけど・・・


関衛門の家にマツを養女に出したのは一人っ子の耳が聞こえない武造とマツを結婚させて、関衛門の家系を存続させること!それが目的でした。

親としては、可愛い娘を養女に出して自分のもとから離れるというのは、つらいことでしたが、当時は家族が食べていくのも大変な時代でしたので、やむなくマツを養女に出したのです!

関衛門たちは、マツを養女にもらい、マツには腹いっぱいご飯を食べさせてあげる!ということで合意したのです。

今になって、マツが結婚を普通の男性と!と言ってもそうするわけにはいきません。

{マツ、オメーと武造は「いいなずけ」ではねーかー、武造が嫌いになっただかー?}


マツ:{武造は嫌いではねーだー・・・でも武造は他の女性に気を取られてるだー・・・}

マツは武造が埼玉の女性からの手紙を肌身離さずに持っていることや、武造が汽車でその女性に会いに行こうとしたことなどを話し始めました。

事情を知ったマツの母親は、武造に怒りを感じますが自分を抑えます。

{武造はその女性からのプロポーズにのぼせてるだけではねーかー?
それに、その女性と一度も会ったこともねーことだし、その女性だって本気かどうかさえ分からねーではねーか、武造はその女性と結婚できねーだー}


そして、マツに武造以外の男性との結婚はできないことを言います。

マツは納得できないまま自分の家に帰って行きました。


武造とマツ・・・仲良くしていた二人の間に少しづつ・・変化が生じてきました。


posted by junko at 18:38| 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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