「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2010年04月30日

第69話 村人たちのねたみ

マツの妊娠は、すぐに村中に広まりました。

{マツに赤ん坊ができたんだってなー}

{武造の子だな!結婚式ではマツにひどいことしながら、マツを身ごもらせるとは武造のやつ、ひでーやつだ!}

{マツはひでーとこに養女にいったもんだなー!}

{んだー(そうだー)、それにしても小さい時は、あんなに体が弱かった武造が、結婚して子供をもうけるとは・・・}

{マツが養女に行かなかったら武造は、誰とも結婚出来ねかったはずだ!!、マツは関衛門の家のために犠牲にされたよーなもんだず!!}

{関衛門は、うまく仕込んだもんだな!!}


{んだずー(そのとおりだ)・・・それに、関衛門はこの三月に大きい家を買ってここに引いて持ってくるそうじゃーねーか、よそ者のくせに生意気だず!}

{んだんだ(そうだそうだ)、あれほどの立派な家は、ここの村でも1,2件しかねーど!よそ者がこの村で立派な家に住んで大きい顔してええべかー?} 

{よそ者に大きな顔はさせねー}



村人たちは、関衛門に引っ越しの手伝いを申し出ながら、自分たちの間では、ねたみの感情が高まってきていました。


{ほんじゃー、どうするべずー?もうすぐ三月だ、堅雪になったら家を引いてくるべー・・}

{オメー、どんな家だか中も見てきたかー?}

{オラ、中に入って見てきただー、家ん中も立派なもんだー}

{オラも見てきただー、襖と障子も立派なもんだった、それに欄間も、あんな立派な欄間は、オラ初めて見ただー}

{ほんだかー、そんな立派な家を買えるなんて関衛門は、よっぽど金があるんだな!} 

{よそ者のくせに、生意気だず!}




関衛門は、自分たちが村人たちからねたまれてることを知らず、「家系の存続」ということが現実になってきたことで気分が高揚していました。

{マツ、サバ缶、いくらでも買ってやるからな!他にもオメーが食べたいと思うものは何でも言ってけろ!}

マツは関衛門が、心底「家系の存続」を期待し、願っていたことを改めて感じるのでした。

(こんなにも腹ん中の赤ちゃんが喜ばれてるだー、きっとこの家で大事に育てていけるだー)


posted by junko at 16:09| Comment(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月27日

第68話 家系の存続

(もしかして・・武造の子がオラの腹ん中に・・?)

しばらく前から体調の変化を感じていたマツは、医者がくる前から確信していました。

結婚式のつらい思い出を完全に自分の内で処理出来てたわけではなかったマツでしたが、自分のお腹にいる新たな命を愛おしく思います。

自然と手がお腹を優しくなでます。

マツの様子を見ていた武造は、マツに近寄りお腹に手を当てます・・


ヨネが医者を連れてきました。

関衛門は、四角い輪郭で物腰が柔らかそうな医者を急いでマツのところに案内します。

{朝早くからすまねーだ、マツに赤ん坊が出来たから具合を診てもらいてーだ!!}

感情が高ぶっている関衛門は、医者が診断する前からすっかりマツが妊娠してると思い込んでいます。

{まだ診てもらってねーではないか}とヨネ。

関衛門に「マツは、つわりに違いねー」と言ったヨネは意外と冷静になっていました。


医者は目を細め、にこにこしながら{おめでたです}と。

マツは、医者の言葉を聞くとすぐにお腹を見、そして武造の顔を見ます。

武造は意味を悟ると、またマツのお腹にそっと手をあてました。

武造のうれしそうな顔を見、心が和むマツでした。


{やったどー、マツに赤ん坊が出来たど、オラたちの家系はずっと存続していくずー!!}

万歳の体勢をとりながら関衛門は、喜びの声をあげます。

「家系の存続」、マツは自分がこの家に養女にきた目的を果たしていることを感じながら・・・皆が喜んでいる様子をじっと見ていました。

武造を見てマツは、(生まれてくる赤ちゃんは・・耳が聞こえるんだべか・・・)・・・

(でも、武造は生まれた時は、耳も聞こえてたと聞いてるだー、ほんなら大丈夫だ・・・)・・・

(武造は親になって子供とうまくやっていけるべか・・・?)

(耳のきこえねー父親だと村の人たちの偏見で子供がつらい思いをするようになるんではねーべか・・・)

マツは、喜びの反面、様々な心配もありました。


{さー、今日はめでてー日だ! ヨネ、餅をついて祝おうではねーか!}と関衛門。

{ほんだなー、でもマツはもち米を炊く匂いがだめではねーか?}とヨネ。

{そうだったず、マツ、オメーが食べたいものを何でも準備するから言ってけろ!}との関衛門のすすめに、

{サバ缶が食いてー!}とマツ。

posted by junko at 16:30| Comment(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月23日

第67話 マツの身に・・ つわり!?

(なんだか・・・気分が悪いずー・・・朝ごはんの準備を・・・)

薪で炊いた釜の中の真っ白なご飯が一粒一粒“つやつや”です!


「養女にいったら、白いご飯を腹いっぱい食える!」・・・マツが唯一、魅力を感じて養女にいく気持ちになったのはこの白いご飯でした。


ところが、その香ばしい炊きたてのご飯の匂いが・・・・


{マツ、武造にご飯だ!と言ってきてけろ!}

ヨネは手際良く、ご飯、味噌汁、漬物を家族四人分飯台に置いていきます。

朝早く起きて、馬に餌を与えるのが日課の武造は、大きなあくびをしながら馬小屋から出てきました。


(今日は、なんだか・・・ご飯の匂いがいやだず・・・)


もしかしたら・・・・・


武造の後ろ姿を見ながら・・・・

(武造は、耳が聞こえねー・・・オラの気分悪さを分かってくれるべか・・・?)


{武造、オラ朝ごはんはいらねーだー!}

マツの身ぶりで意味が分かった武造は、ご飯が大好きなマツが、そのご飯をいらないと言うので不思議に思います・・・。

どうしたのか?と聞く武造。

{オラ、気分が悪いだー・・・ご飯の炊いた匂いがよけいに気分を悪くするずー}

感の良い武造は、マツがご飯の匂いがダメだということが分かります。

不思議に思いながらも武造は、マツを食卓ではなく自分たちの部屋に連れて行きました。


お盆に味噌汁と漬物をのせて、部屋に持っていく武造!


{マツがどうしただかー?}

マツがご飯の匂いがダメだということを身ぶりでヨネに言う武造。


{あんなにご飯が大好きなマツなのに、ご飯の匂いがダメなんて・・?今日はどうしただべー?}

関衛門が不思議に思っていると、ヨネが・・

{もしかしたら・・!!つわり・・ではねーべか・・!?}

ヨネのその言葉に、関衛門はしばらく沈黙し・・・

それから・・声が少しうわずったようになり・・・つわり・・・マツが・・本当だずかー・・!?)

つわりに違いねー!人によると妊娠したら食べ物の匂いがダメになるもんだ、マツもそうに違いねー}

{マツが妊娠!武造の子だな!}

{あたりめーだ!! 何を言うてるだー、}

{武造の子!! やったどー!!これで藤原家、オラたちの家系は確かに途絶えることなく続いていくだー!}


関衛門とヨネは興奮して、いつの間にか互いの手を取り合ってました。

{すぐにでも医者を呼んできてけろ!}と関衛門。


朝ごはんも食べずに、すぐに医者を呼びにいくヨネ!


関衛門も嬉しさのあまり朝ごはんどころではなく、すぐにマツのところに行きます。

{マツ、具合はどーだー?}

{少し気分が悪いだー}

{医者を呼ぶから診てもらってけろなー}

{おしょうしな(ありがとう)}



何も手につかない状態になっている関衛門は、「あっちうろうろ こっちうろうろ」しながら医者が来るのを待っていました!


武造はマツの様子が気になり、さっさとご飯を食べてすぐに部屋に行きます。

マツは、味噌汁を少し食べてから横になっていました。

(オラ、もしかしたら・・・赤ちゃんができたんではねーべか・・)


ラベル:つわり 妊娠
posted by junko at 18:44| Comment(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月05日

第66話 立派な家を買う

{隣の村だけど、家を売ってもえぇーと言う人がおったど!!それが、広くて立派な家だー、建てて100年ぐらいは経っておるけど使ってる材料も立派なもんだー、襖や欄間もすごく立派なもんだー、広さは80坪はあるどー!!}と関衛門は声を弾ませてヨネに言います。

{そんな立派な家を売ってもいいとは、何でまた・・?}

{その家の人は、とても金に困っておるんだと!!どうしても金が必要で家を売る気になったそうだ}


{ほんじゃーその家を買うべー!でも・・・隣の村だと・・・・オラたち、また引っ越すことになるべー、また、その村で一から「よそ者」としてやっていかなければならねーなー・・・}と少し不安がるヨネ・・。

{その家の場所から、ここまでは、だいたい2kmぐらいだー、曳家(ひきや)を頼んでこの場所に家を持ってきてもらうのはどうだべ・・?}と関衛門。

{ほんだなー・・それがえぇー!!雪が固まる3月ぐらいだと運びやすいなー、だとすると来年だなー・・。}

関衛門とヨネの話を脇で聞いていたマツは、藤原家存続のために自分たちに大きな期待を抱いていることを改めて感じ、複雑な気持ちになるのでした・・。



たちまち、関衛門が隣村から家を買うということが、村中に知れ渡りました。

{家を引いて持ってくるときは、オラたちも手伝うだー}

{隣村の何処の家だー?}

{あの家は、隣村でも1,2を争うりっぱな家だー、それを関衛門、オメーが買うんだかー・・」


村の人たちは、関衛門たちが曳家(ひきや)を頼んで、引いて持ってくる立派な家に興味津津でした!


<その年の冬は寒くて雪がいっぱい降りました。>


田んぼと道の境が分からないほどの大雪「銀世界」です。

{3月になったら堅雪になるべー、家を引いてくるには十分の雪が降ったなー}

{ほんだー、良かったずー}


外を眺めながら、関衛門とヨネは家を買うことに胸を弾ませていました。

マツも外の銀世界を眺めていましたが、突然、体に異変を感じます・・・・。



posted by junko at 15:20| Comment(0) | 武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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