「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年01月31日

家系の存続は・・?第65回

「武造、顔色が悪いではねーか・・」

そう言って関衛門が、武造を家の中に連れていった。

「熱はねー(ない)ようだが・・・?寒いからだべか・・?」

武造は、体が弱く原因が分からないまま寝込むことがよくあった。

そこへ、玄関で声がした「居るかー?」

関衛門の両親である。

関衛門の父親・定衛門と母親リンは、関衛門の家の行く末を心配していた・・。

定衛門が言った
「武造は体が弱い、こんなことを言ったら気分害するかもしれねーけど、武造は長生きできるか分からねー・・・」

そして続けて言った
「オラたちは、オメーの家の行く末が心配でならねーんだ・・・ヨネはまだ子どもを産める年齢だ、他に子どもを作ったほうがええんではねーか?」

定衛門の言葉は、関衛門もたびたび考えてたことでもあり・・・

4人はしばし沈黙した・・・

リンが言った
「もし・・・武造が死んでしまったらどうするんだ・・・ヨネが子どもを産める今のうちに、他に子どもを作ってた方が良いんではねーか?」

関衛門が言った
「前にお父たちが言ったとうり、身体障害者を隠すことしねーで育てるのは簡単なことではなかった・・村の人たちの偏見はずっとそのままだ・・」

さらに続けて言った
「武造が死ぬとは限らねー・・武造の他に子どもがいたら、その子どもも周りの偏見で辛い思いをしながら生きていかねばならねー・・そして、やはり、身体障害者のいる家といって、誰もその子と縁組しようとはしねーべ・・?」

ずっと黙っていたヨネが言った
「武造は死なねー」

また4人は沈黙した・・・

話しはそれ以上進まず、定衛門とリンは帰って行った。


関衛門がヨネに言った
「武造がこんなに体が弱いが、オメーはお父たちの考えも間違ったことではねーと思っているべ・・?」

ヨネがこたえて言った
「んだ、けど、武造が死ぬことは考えられねーんだ、武造は生きてマツと結婚するんだ、そのためにマツを養女にもらったんだべから・・・」

ヨネの武造は生き続けるという確信のこもった言葉を聞いた関衛門は、少し間を置いてから言った
「んだ、オメーの言うとおりだ、そのためにマツを養女にもらった、武造によってオラたちの家系は存続するんだ!」

武造によってオラたちの家系は存続する!

その言葉を聞いてヨネは、ますます武造に希望を置いた。

ヨネの希望に満ちた顔を見た関衛門は続けて言った
「武造が生き続けるために、オラたちはできることは何でもするべ?」

ヨネがこたえて言った
「んだ、あたりめーではねーか」

それに対して関衛門がこたえて言った
「一度試してみねーか?この前、宮蔵が言ってた湯治を・・?」

ヨネの顔色が少し曇った・・・けど、以前のようではなかった。

ヨネが言った
「これも武造のためだ、それで武造の体が丈夫になるんなら・・・」

関衛門はヨネの態度が柔らんでいるのでほっとして言った
「湯治のことをもっと詳しく宮蔵に聞いてみるべー」

それから、関衛門とヨネは宮蔵を呼び湯治のことを詳しく聞いた。


一方、マツは寒い中での行商に苦戦していた・・・

しもやけの手は真っ赤でパンパンに腫れている・・

とうとう足までしもやけになった・・

(足が痛てー・・・・帰って囲炉裏に温まりてー・・・)

マツは籠の中を見た・・

(野菜まだまだあるず・・・)

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2011年01月24日

蛇に睨まれた蛙? 第64回

マツが行商に出かけた後ヨネは、あかぎれで亀裂が入った手に、ロウを塗るために家の中に入った。

すると、武造が柱の脇で泣いていた・・

ヨネには、武造の泣いている理由がすぐに分かった・・

ヨネが言った
「武造、そこで泣いてねーで、お父の手伝いをしてきてけろ」

武造は、関衛門にわら細工を教わった。

武造にとって物を作るということはおもしろかった。

関衛門に教えられながら、見よう見まねして作っていった。

夢中になって作っていたが、体がだんだん冷えてきた・・・

関衛門が言った
「冷えてきたからオメーは、家の中に入って温まってけろ」

家に入る武造・・


すると「耳きんか」と小さい声がした・・・

その声が聞こえない武造は、そのまま家の中に入っていった。

ところが、その小さい声をヨネは聞いていた・・・

ヨネが大きな声で言った
「オメーたち、ここに来い」

垣根に隠れていたガキ大将、源太と子分2人が垣根の脇から少し顔を出した・・

ヨネはさらに言った
「そこさ隠れてねーでこっちに来い」

ぐずぐずしている源太たち・・・

ヨネは鋭い目で3人をにらみつけた・・・

こわくなった3人は、恐る恐る垣根の脇から出てきた・・

ヨネが言った
「そこさ座れ」

そう言うヨネの目には力があった・・

3人は地面に正座した。

3人はひどく緊張して正座したまま動けなくなった・・

まるで、蛇に睨まれた蛙のようである・・・。


ヨネは3人に聞きなおした
「さっき、何て言ったんだ!」

3人は、応えられなかった・・

黙っている3人に、ヨネが言った
「オラに面と向かって言えねーことを言ったんだか?」

黙る3人・・・もはやヨネの目を見れなかった・・

ヨネが言った
「耳きんかって言ったんではねーか?耳きんかが良い言葉ではねーと思ってるから正直に言えねーんだべ?正直に言えねーことは言うもんじゃねー」

黙ってる3人・・・

「黙ってねーで応えるんだ」とヨネが言った

子分の1人がすすり泣きを始めた・・・・

それにつられて、もう1人の子分も泣き、そして・・・源太も泣き始めた・・


ヨネが泣いてる3人に言った
「オメーたちも、自分のことを悪く言われたら嫌だと思うべー?」

源太が応えて言った
「んだ・・」

ヨネが言った
「だったら、人に対して嫌なことを言ったらいけねーんだ!」

ヨネは続けて言った
「このまましばらく座って反省しててけろ!」

そう言ってヨネは、その場を離れた・・。

ヨネがいなくなった後も3人は、そのまま地面に正座したまま動けなかった・・・

それから、体が冷えてきてようやく立とうとした・・

ところが、足がしびれて“すくっ”と立てない・・・

そこへ、武造が出てきた。

わら細工をしたくて出てきたのである。

すると、源太たち3人が足が痛そうにしていた・・・

何があったかを知らない武造・・・

不思議そうに自分たちを見ている武造に源太は、“にこっ”とした。

そして、三人は、手を振り帰っていった。


気温は、どんどん下がってきた・・・

わら細工をしていた武造は、気分がすぐれなくなり体がだるくなってきた・・・

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2011年01月17日

柱の脇で泣く武造 第63回

「オラ、カステラという旨めーもの食べたんだ♪」

マツは、身ぶり手ぶりで武造に嬉しかったことを話した。

ふわふわした美味しいお菓子・・・

マツの身ぶりで武造は、それが「カステラ」であることが分かった。

すると武造の身ぶりは「自分も食べたことがある」というものだった。

実は、マツが養女に来る前に武造は、カステラを食べたことがあったが、高価なお菓子だったためヨネたちは、あまり買うことはなかった。

武造は、マツのしもやけで赤くなっている手を見ると自分の手でマツの手を覆った。


気温もどんどん低くなり、“ちらちら”と雪が降り始める・・・

本格的な冬の到来である・・・

マツは、野菜があるうちは寒くても行商に行く・・

マツの手は、寒い中での柱磨きと行商でますます「しもやけ」がひどくなり真っ赤で痛痒くなっていた・・・

(行商に行きたくねー・・・手が痛いず・・・)


それでもマツは、自分の気持ちを言えなかった・・・

なぜなら、ヨネも「あかぎれ」で手が痛み、ひびから時々血が出ていた・・・

あかぎれで悩まされながらもヨネは、黙々と家の仕事をしていたからである。

ヨネは水で野菜を洗い、マツの行商の籠に入れる・・・

「マツ、今日はいつもより冷えるぞ、厚着していってけろ」

マツは、厚着をし籠を背負った・・

そこに学校が休みだった武造が、マツが行商に行くのを止めようとした・・・

ヨネが武造に言った(身ぶり)
「何だべ?」

武造は、「今日は、とても寒い、マツの手もしもやけで真っ赤だ、行商に行くのは可哀そうだ・・」といった(身ぶり手ぶり)

ヨネがこたえて言った
「これがマツの仕事だ!」

そして、マツに言った
「野菜があるうちは売らないといけねーんだ、だから行商に行ってきてけろ」

それでも武造は止めようとした、マツが可哀そうでたまらなかったのである・・


いくら大変でももっと寒く雪が降り積もる時が来る前に、野菜があるうちは売る!

そう思っているヨネにとって武造の訴えは意味がなかった。

すると武造は、「自分もマツと一緒に行商に行く」と言いだした・・。

ヨネが武造に言った
「オメーは、すぐに熱を出すでねーか、具合が悪くなってまた寝込むからオメーは行ったらいけねー、マツ1人でいくんだ」


マツは、籠を背負い出かけて行った・・・

自分の訴えを聞き入れてもらえず、寒いなかに行商に向かうマツの後ろ姿を見た・・・

そして、家の中に入り柱の脇でマツのことを思って泣いた・・・・

(マツ、かわいそうだ・・)

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2011年01月15日

初めてのカステラ 第62回

秋も深まりシンシンと底冷えがするようになった。

(寒いず・・・)と思いながらマツは、野菜をいっぱい入れた籠を背負い街の方に出かけた。

気温はどんどん低くなりマツの手足は冷たくなっていった・・

(寒い・・・家さ帰りてー・・)

マツは早く野菜を売って家に帰り、囲炉裏で身を温めたいと思った。

けど、「野菜、全部売ってからでなければ帰ってきてはならねーぞ。」とヨネに言われていた。

早く体を温めたい一心で、足早に家々を訪問するマツ。

家の人が出てくるとニコニコしながら言った
「オラの家で採れた野菜、買ってけろ!」

マツの顔は寒さで赤くなっていた・・

赤らんだ顔のマツを見て家の人はもうけなさそうに言った
「寒い中、行商ご苦労さんだなー、買ってやりてーが、少し前に他の行商の娘っこがきて買ったばかりだー、悪いなー」

このように、同じ理由で断る家が何件もある・・・

背負った籠の中の野菜は、いっこうに減らない・・・

マツの手は寒さでかちかんできた・・・

冷たくなった手に“ハー”と息をかけて温めながら行商を続けた・・・

けど、他の行商の人に先を越され、なかなか売れない・・

背中に背負う野菜の籠はいつもより「ずしっ」と重く感じた・・。

寒くて、売れなくてマツは泣きたくなった・・

そんな時、「大島家」というお菓子屋に入った。

(ここもダメかな・・)と思いながら言った
「オラの家で採れた野菜だー、買ってけろ!」

マツは、寒さで顔が赤くなっていただけでなく、手も赤くしもやけになっていた・・

お菓子屋の女将は、マツを見て可哀相になった・・

女将は、手が真っ赤でしもやけの子どもが行商に来たと思い家の中に入れた。

女将が言った
「オメー、手が真っ赤ではねーか・・この寒い中、ずっと行商してたんだかー?今、あったけー(温かい)お茶を入れるから、それを飲んで温まったらえぇーぞ。」

女将は、お茶とさらに、マツにとってめずらしいお菓子を出してきた・・

それは、「カステラ」だった。

(これ、何だべ・?)

マツにとってカステラは初めて見るものだった。

「大島家」では、自家製のカステラを作っていて、これが美味しいと評判で人気商品となっていた。

女将がマツに言った
「これはオラの店で作ってるカステラだ、うめー(美味しい)から食ってみろ!!」

マツは、カステラを手に取った・・・(ふわふわして柔らけー・・)

そして、少しちぎり口に入れた・・・

「♪旨めー!これ旨めーず♪」

マツは驚いた!こんなに旨いお菓子があることを初めて知った。

マツの喜ぶ顔を見た女将は微笑みながら言った
「オメーの籠の中の野菜、全部買うべー」

「全部?」

「んだ、全部だ!」

マツの籠は、一気に空っぽになった。

空の籠を背負い、足取り軽く家に向かった。

口の中がまだ、まろやかで程よい甘さのカステラの味が残っていた。

(カステラ、毎日食えたら良いな〜♪)

一方、武造はこの寒いなかにマツが行商に行き、帰りが遅くなってることで可哀そうでたまらなかった・・・

今か今かとマツの帰りを待っていた・・・

帰ってくるマツを見ると、走って迎えにいった・・・

posted by junko at 16:57| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月10日

温泉での湯治のすすめ 第61回

(武造はいいなー・・・オラは野菜売りと柱磨きだ・・)

マツは柱磨きの日は、学校に通う武造が帰ってくる時間が待ち遠しかった・・

(オラ、武造が帰ってくると柱を磨かなくてもいいんだ!)

武造の帰りが柱磨きから解放される時間だったのである。

「おーい、居るかー?」

マツが冷たくなった手に“ハァー”と息をかけ温めながら柱を磨いてると玄関で声がした。

(誰だべ?)

マツは、玄関に行った。

たまに家に来るおじさん(宮蔵)だった。

宮蔵がマツを見てニコニコして言った
「お父は居るか?」

マツは、小屋で藁(ワラ)仕事をしている関衛門を呼びに行った

宮蔵は、豆事件の後もたまに関衛門の家に顔を出していた(ツネは、まだ来れなかった・・)

宮蔵が関衛門に言った
「武造は、体が弱いべー、丈夫な体になるには温泉でしばらく滞在して湯治をすると良いようだぞ」

関衛門が言った
「湯治?」

宮蔵がこたえて言った
「んだ、温泉のお湯は体にいいべー、長期でゆっくり温泉に入ると病気も癒されるようだぞ、武造もその湯治をさせてみてはどうだべか?」

関衛門が言った
「湯治といっても・・長期となると・・泊まりながらと言う事だべ?」

宮蔵は言った
「んだ、長期泊まって湯治が出来る良い温泉旅館があるんだ、ここの村から離れているが、宮城県に鎌先温泉の一条旅館というところがある。」

「鎌先温泉・?」

「んだ、そこの温泉のお湯は武造の体を丈夫にしてくれるかもしれねーぞ」

関衛門が宮蔵に言った
「そんな温泉の事をオメーがどうして知ったんだ?」

宮蔵が言いにくそうに言った
「オラも聞いたことだ」

関衛門が言った
「誰から聞いたんだ?誰かがそこの温泉で湯治したんだか?遠いところにわざわざ行くには、それなりの確信がないと行けねーべー」

宮蔵がこたえて言った
「実は・・・ツネから聞いたんだ・・ツネは、あの後(豆事件)から自分がしたことをずっと悔んでいて、武造が体が弱いことを聞いて何とか体を丈夫にする方法がないかと考えてるときに、湯治のことを知ったらしいんだ。」

宮蔵が続けて言った
「鎌先温泉の一条旅館もツネが人に聞いたことなんだ・・」

そこへ、話声がするのが気になってヨネが来た・・

一時、話がとまった・・・

ヨネが言った
「何の話しだべ?」

関衛門が宮蔵が言った事をヨネに話した。

ヨネは、武造の体を丈夫にすることの話しで関心を示し乗り気になった。

「泊まりだとオラが武造と一緒に行くから心配はいらねーだ。」


そして、最後にツネの事が出た・・

関衛門と宮蔵が心配したとおりだった・・

ヨネが言った
「ツネの言うことなんか信用できねー」

湯治の話しはこれからすすまなかった・・・

ツネの話しが出たことでヨネは不機嫌な顔になった・・

マツは、そのヨネの顔を見た・・(お母・・・おっかねーず・・)
posted by junko at 16:38| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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