「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年03月14日

座敷童子(ざしきわらし)?第71回

「気になることって何だべ?」

マツがこたえて言った
「物音がして誰かがいるように思ったんだけど、誰も返事しないんだ、出てもこねーし・・」

関衛門が言った
「んだかー・・オメーの気のせいではねーか?」

それに対してマツは言った
「その家の近くの下駄屋のかあちゃんも、それはオラの気のせいだと言ったんだ、んだけど、オラどうしても気のせいには思えねーんだ・・・誰かがオラを見てたような気もしたし・・」

「・・・・」

関衛門が言った
「誰かが都合が悪くて出てこなかったんではねーべか?」

マツがこたえて言った
「オラ、その家を出てから途中で振り向いたんだ、そしたら、子どもがオラを見てたように思ったんだ・・・」

関衛門が言った
「子ども・・?その家の子どもでねーか?」

マツが言った
「その家は、前に何度か野菜を買ってもらったことがあるんだ、だけども子どもを見たことがないんだ・・だからオラ、その家は子どもがいない家だと思ってたんだ。」


「んだかー・・・」そう言って関衛門はしばし黙った・・。


(お父は、オラの話が気のせいではねーと思ってくれてるだ。)

マツは関衛門が自分の話を真剣に聞いてくれることが嬉しかった。

マツがさらに言った
「お父、オラ、その家で子どもをほんとに見たんだ。一瞬だったけどおなごん子(女の子)に見えたんだ・・」

関衛門が言った
「おなごん子?いくつぐらいに見えたか?」

マツがこたえて言った
「武造ぐらいか・・ちょっと上か・・?」

「・・・・」

関衛門はまたも黙った・・・

食べてる最中のご飯を御膳に置き腕組みをして、やや下を向き何かを考え始めた・・・

「・・・・」

マツは、何かを考えている関衛門の顔を“じっ”と見た。

そして、関衛門が何かを話し始めるのを待ちながらご飯をもぐもぐ食べた。

下を向いていた関衛門が、マツの顔を見て言った
「マツ、オメーが見たものは“座敷童子(ざしきわらし)”かもしれねーなー・・。」

マツが言った
「座敷わらし?」
posted by junko at 15:20| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月07日

誰もいない・・?第70回

「誰かいますかー?」

マツは再び声をかけた・・

「・・・・」

(やっぱり誰もいねーんだ・・)

マツはその音を気になりながらも次の家に向かった。

途中、気になり振り向いた・・

(・・?)

(誰かいる・?)

誰かが自分を見ていたような気がした・・?

・・・・

その次に訪問したのは、下駄屋である

マツは声をかけた
「遠田から来たんだけども、野菜食べてくんねーか?」

寒さで頬も赤らみ、しもやけで真っ赤になった手をしたマツを見た下駄屋の奥さんは、マツを可哀そうに思った・・

「どれ、見せてけろ、野菜買うべー」

奥さんは、さらに言った
「オメーは何歳になるんだ?」

マツがこたえて言った
「オラ、6歳だ」

奥さんが言った
「んだかー、オラにはオメーと同じ年の男ん子がおって学校に行ってるんだが、オメーはおなごん子(女の子)だから学校に行かしてもらえなかったんだなー」

マツがこたえて言った
「オラ、学校に行ってたんだ、んだけど、途中で学校にいかねーで野菜売るようになったんだ・・」

そう言ってるうちにマツは、また学校に行きたいという気持ちが出てきた・・

マツの表情を見てその気持ちを敏感に感じ取った奥さんが言った
「おなごん子は、だいたい学校には行かしてもらえねーからなー・・この時代だ・・食べて行くのがたいへんな時代だからな、んだけど、オメーは父ちゃん母ちゃんの手助けしてるからえらいぞ!この寒い中でも行商してるでねーか」

褒められたマツは嬉しくなり、元気がでてきた!

マツは下駄屋の奥さんと話しているうちに、先に訪問した家のことが気になり聞いてみることにした。

「あの家、誰かがいたような気がしたんだけども出てこなかったず・・・声をかけても返事もしねーんだ・・」

「・・・」

(・・オラ、いけねーこと言ったんだべか・・?・・)

下駄屋の奥さんの顔色が曇ったように見えた・・・

奥さんが、こたえて言った
「大人はだれもいなかったべ?」

マツが言った
「んだ、いなかったず」

下駄屋の奥さんは言った
「だったら、誰もいなかったんだ、誰かがいたように思ったのはオメーの気のせいだ」

それに対してマツが言った
「気のせいではねーんだ、音も聞こえたし・・」

そうマツが言ってる途中に奥さんがやや強い口調で言った
「誰もいなかったんだ、もう気にすることはねーず!」

(・・・)

強く言われて驚いているマツに、下駄屋の奥さんがあわてて言いなおした。
「強く言って悪かったな、悪気はなかったんだ・・」

それに対してマツが言った
「いいんだず、・・・やっぱりオラの気のせいだったんだず。」

そう言ってマツは微笑んだ。

「めんごい(かわいい)、オメーはめんごい子だなー」

奥さんはさらに言った
「この近くに来たらまた寄ってけろ、オメーの野菜買うべず。」

「おしょうしな(ありがとう)」マツは明るくお礼を言った。

(♪やったず!またお得意さんが出来た!♪)


※ このようにして、下駄屋はマツの生涯に渡る行商のお得意さんになった。


家に戻ってからも、マツはやはり気になっていた・・

(ほんとに、誰もいなかったんだべか・・?)

ヨネの代わりに関衛門が晩御飯を準備している。

野菜たっぷりの味噌汁とサバ缶である。

それにヨネがつくってあったナスと大根の漬物があった。

関衛門が言った
「マツ、腹減ったべー、いっぱい食ってけろな!」

マツは、さっそく真っ白いご飯を先に食べる!

「旨めー♪」

それから、サバ缶、味噌汁、漬物を食べる。

「旨めーず!♪」

先ほどまで気になっていたこともご飯を食べてる時は忘れているかのようである。

関衛門がマツに言った
「行商はどうだかー?お得意さんは出来たか?」

マツは、行商でのことを思い出し気になり始めた・・・

「お父、今日気になることがあったんだ・・」
ラベル:行商 野菜
posted by junko at 15:32| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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