「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年04月25日

宮城のお土産「かまぼこ」 第75回

(旨いお菓子!♪)

マツは、生まれて初めて貰えるかもしれないお土産が楽しみになった。

ヨネと武造が宮城の鎌先温泉から帰ってくる日、マツはいつもより早く起きた。初めてのお土産をもらうという期待感から目が早く冷めたのである。

朝ごはんの準備をしている関衛門の手伝いをした。

(いい匂いだ〜♪)

鉄窯で炊くご飯の良い香りをマツは大好きであった。


汽車の時間が待ち遠しく感じる・・・

マツは、土産への期待感からヨネの怖さも忘れていた。

汽車の到着時間に合わせて関衛門とマツは、駅に迎えに行く。(送りに行った日から二週間が経っていた)


ヨネと武造が汽車から降りてくる。両手には自炊に必要だった荷物とさらに新しい包みを持っていた。

マツの目は、新しい包みに向いた

(あの包みがお土産に違いねー♪)


ニコニコしたヨネと武造が元気そうに帰ってきた。

武造のキラキラした目が、関衛門とマツを見る。

そして、温泉の良さを身ぶり手ぶりで話す・・

久しぶりに会った武造の顔は、湯治に行く前の顔より艶があった。


家に着き早速、ヨネが言った
「お茶っこにすっべー(お茶にしよう)土産を食べねーか」

(土産!♪)

マツは初めての土産に胸を躍らせた。

ヨネの手が新しい包みをあける。

ヨネが手にとったものは、何かを竹の棒に筒状に巻いてあるものだった。

「変わったもんだなー、これは何だべ?」と関衛門が言った。

武造が、「これは旨い!」と手ぶりで言う!

ヨネが、竹を抜き取ると真中が空洞になった。

ヨネが、「これは、かまぼこというものだ、旨めーぞ!」と言って食べやすく切った。

※ 現在は「笹かまぼこ」といい形は平たくなっている。


「ほれ、食ってみろ!」とヨネは、関衛門とマツにわたした。

「柔らけーもんだなー」と言いながら、関衛門は口にした。

マツもパクッと口に入れた・・・

(・・??・)

お菓子だと思って食べたマツは菓子のように甘くないかまぼこの味に驚いた!

一切れを食べ二切れを食べる・・・

「これ、お菓子ではねーず、けど旨めーもんだ!♪」


関衛門も言った
「旨めーなー、これは何で出来てるんだかー?」

ヨネが言った
「魚だ、魚の身をすりつぶして作ったんだそうだ」

(魚・・?サバ缶も旨めーけど、このかまぼこはもっと旨いず!)

初めてのお土産「かまぼこ」にマツは満足だった

関衛門が言った
「んで、温泉での湯治はどうだったかー?」

ヨネが言った
「湯治はえろー(とても)良いもんだ!肌がつるつるになるず!」

そしてヨネは、武造を見て言った
「武造も温泉、気にいったみてーだぞ、ずいぶん元気になったようだ。」

さらにつづけて言った
「次は、もっと長く湯治にいってもええなー」


※ それから毎年、ヨネと武造は冬の寒い時期に一カ月近くの期間、宮城の鎌先温泉に湯治にいくようになった。


美味しいお土産「かまぼこ」のことや湯治の話で盛り上がっていたが、ヨネが自分たちのいなかったとき家はどうだったかを聞いてきた

「行商はどうだったかー?野菜は売れたか?」

マツが応えて言った
「んだ、オラ、野菜売ってきただ」

それを聞いてヨネが言った
「んだかー、がんばったなー、えらいぞ!オラがいなくてもちゃんと行商やったんだな!」

ヨネに褒められたマツは嬉しくなり、関衛門に勉強を教えてもらったことを話した

「オラ、お父に勉強を教えてもらったんだ!そろばんも教えてもらったず!」

マツはそのことをヨネも喜ぶと思っていた

ところが・・・

ヨネの目が急にきびしくなった
「オメーは、ちゃんと野菜を一日売る分を売ってからにしたんだか?」

マツはドキッとした・・
「んだ、お得意さんもいたから野菜は全部売れたんだ」

心臓がドキドキしてきた・・

関衛門がヨネに言った
「オラがマツに、勉強を教えたんだ、マツは仕事もちゃんとやったず!だから、何の問題もねー」

ヨネがマツを見ながら言った
「んだかー、だったらいいず。もうそろそろ野菜もねーから行商は休みになるなー、しばらくはマツは柱磨きをしてもらうべー」

(柱磨き・・・)

お土産を食べた嬉しい気分から、単調な柱磨きという現実に戻されたマツは突然・・

「ヒック ヒック・・」しゃっくりが出始めた・・・

posted by junko at 11:40| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月18日

街の男の子 第74回

(あの家は、おなごん子の座敷わらしが絶対いるず・・オラ、子供だから見えるんだ・・)

マツがおなごん子(女の子)だと思ったのは、髪型がオカッパに見えたからだった。

マツは、座敷わらしのことが気になりながらも行商を続けた。

お得意さんの下駄屋に入り声をかけた
「こんにちは、遠田のマツだ、野菜持ってきただー」

出てきたのは、マツと同じ年の男の子でマツとは初対面である。

短くカットされた髪、きちんとした着物を着た男の子は、どこかしら女の子を思わせるような柔らかい感じがした。

籠を背負い玄関に立っているマツに男の子は言った
「オラ、留守番だ、野菜のことは分からねーなー。」

男の子の声質もやんわりとしたものだった。

(なんだ・・かあちゃん、いねーんだ・・野菜、減らねーず・・)

マツが帰るときも、男の子は見送っていた。

(街の男ん子はどこか違うず・・・)


それから、マツはお得意さんを回って帰った。

家に帰ると関衛門がマツに言った
「明日、お母と武造が湯治から帰ってくるからな」

(お母が帰ってくる・・)

マツは急に緊張した・・

ヨネがいない間、マツはのびのびとしていた

(お母が帰ってきたらオラ、またごしゃかれる(怒られる)・・)

マツはヨネがこわかった・・。

関衛門が言った
「明日の汽車で帰ってくるから一緒に駅まで迎えに行こうな」

急にこわくなったマツは返事が出来ないでいた・・・

関衛門がマツに言った
「何か良い土産を持ってきてくれるぞ!」

マツが言った
「土産・・?」

それに対して関衛門が言った
「んだ、宮城からの土産だ、楽しみにしててけろ!」

マツが聞いた
「土産って、食べるものだべか?」

これまでマツは、お土産というものを貰ったことがなかった。

関衛門が言った
「んだなー、宮城の旨いお菓子かもしれねーぞ!」

(旨いお菓子・・♪)

ラベル: 男の子
posted by junko at 16:11| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月11日

読み書きとそろばん 第73回


「何の勉強をするんだかー?」とマツは聞いた

関衛門が言った
「マツ、オメーは学校に行けてないから読み書きとそろばんを教えてあげるべず」

〜〜〜

そのようにして関衛門は、マツに少しずつ読み書きとそろばんを教えていった。

マツの吸収力は早く、そろばんも“パチパチ”とはじくのが面白かった。

行商に行く日も、勉強をしたくて足早に家々を回り、お得意さんも訪問して野菜が完売したら走って家に帰った。

「お父、オラ帰ったから勉強を教えてけろ!」

藁細工の仕事をしていた関衛門は、そのマツの気持ちに応え勉強を教えた。

マツは、関衛門が教えてくれるこの勉強の時間が楽しかった。

そろばんを寝床に持っていって眠たくなるまでそろばんをはじいた。


そんなある日、マツはあの座敷わらしが気になった・・・

(オラが見たあの座敷わらしをもう一度見ることができるんだべか・・・?)

(お父は、座敷わらしが何なのかそのうち分かると言ってた・・・)

座敷わらしが気になったマツは、その家に行商に行くことにした・・

「こんにちは」大きな声で声をかけた

家の人が出てきた
「野菜かー、寒いところご苦労さんだなー、少しもらうべー」

そう言ってお金を取りに家の奥のほうにいった・・

(あのおなごん子、座敷わらしはいるべか・・・)

マツは家の中をのぞいた・・・

(座敷わらし、いねーなー(いない)・・)

家の中は子どもがいる様子ではなかった。

お金を持ってきた家の人にマツは聞いた
「おかあさんの家には、子どもはいないんですか?」

マツは関衛門との勉強で標準語を学び、それを使ってみた。

家の人が驚いたようにマツを見た・・・

それから、やや微笑みながらマツに言った
「オメーは、キレイな言葉も使えるんだなー、んだ、オラの家は夫婦二人暮らしだ・・オメーのようなめんごい(かわいい)子が欲しかったず・・」


(やっぱり・・子どもはいねーんだ・・・)

マツは籠を背負いにこっと微笑んでお礼を言った
「野菜、買ってくれておしょうしな、ありがとうございます」

その家を出て、少しいったところでその家のほうを振り向いた・・・

(・・えっ?・・)

(今、おなごん子がオラを見てたような・・・?)

マツは“ドキドキ”してきた・・

(あの家には子どもはいねーと言ってた・・・あれは・・やっぱり座敷わらし・・?)

posted by junko at 15:44| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月04日

座敷童子とは?第72回

「座敷童子(ざしきわらし)って何だべ?」

それに対して関衛門がこたえて言った
「んだなー・・ある家にいないはずの子どもが住み着いてるということだ・・

マツが言った
「いないはずの子ども?・・・よく分からねーず・・」

関衛門が言った
「世間が言う座敷わらしとは、妖怪の一つで、ある家にいないはずの子どもが住み着いているということだ。

マツが言った
「妖怪!?おっかねーなー(恐い)」

それに対して関衛門が言った
「おっかねーことはないんだ、よその人が誰かがいるかと思って声をかけると“ぴたっ”と音がしなくなるそうだ」

関衛門は、続けて言った
「座敷わらしは、奥の間で遊んだりして物音をたてたり、家の中を動き回ったりすることもあるんだ、んだけど、だれかよその人が来るとその姿を見せることはねーんだ・・

座敷わらしがいる家には、良いことがあると言われたり、逆に、悪いいたずらをすると言って気味悪いと思っている人もいるんだ・・」


「・・・・」

関衛門が言った
「世間では座敷わらしは、その家のものたちにだけは見えると言う人、また子どもだけに見えると言う人もいるんだ・・。」


マツが言った
「だったら、オラが見たのはおなごん子の座敷わらしだべか・・?オラ、子供だから見えたんだべか?」


それに対して関衛門はすぐにはこたえず、マツをじっと見てしばし黙った・・・

それから、やや下を向き何かを考え始めた・・


マツは、好奇心いっぱいの目をしていた・・

(オラ、人が見えないものを見たんだべか・・)

不思議でミステリックな話にマツは興味を持った・・・

そして、関衛門が何かを言うのをじっと待った。


ようやく関衛門が話し始めた
「マツ、世間では座敷わらしのことをあれこれといろんなことを言うもんだ、んだけど、座敷わらしがどんなものかはオメーがそのうちに分かる時が来る・・・」


(そのうちに分かる・・?)


関衛門はそれ以上は座敷わらしのことを言おうとはしなかった・・。


(オラが見たあのおなごん子は座敷わらしにちがいねー・・)

マツは、興味津々のまま寝床に就いた。


翌日は朝から雨が降っていた。

行商に行けないマツは、柱磨きを始めた。

手が冷たくなって「ハー」と息を吹きかけ手を温めながら柱をクルミの実で磨いていく・・


関衛門は、藁で俵などを作り「藁細工」の仕事していたが、マツの手がしもやけで真っ赤になっているのが気になりマツに言った
「マツ、今日は少し休んだらえぇ、手が真っ赤ではねーか、囲炉裏で温まるとしもやけも良くなるべー」

囲炉裏の前に座ったマツは“ほっ”とした。

(あったけー(温かい)♪)

そこへ関衛門が来た
「マツ、今日は勉強教えてあげるからな!」


ラベル:座敷童子
posted by junko at 17:42| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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