「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年06月27日

結婚話に悩むマツ 第83回

マツはハル(マツの産みの母)に言った
「お母(おかー)、オラが養女にいったのは武造と結婚して子供を産んで家系をつなぐためだったんだべ?」

ハルがこたえて言った
「んだ、あっちのお父とお母から、何か話があったんだか?」

マツは、行商してるときに結婚の誘いがあることや、関衛門とヨネから武造との結婚について話があったこと、また自分は、結婚相手は普通の健康な男がいいと思っていることを話はじめた。

マツが言った
「町の人から結婚の誘いがあったんだ、下駄屋の人からも誘いをうけたんだ、そこの下駄屋の嫁になると行商しなくてもいいし、店番するだけでええーと言うとっただー」

ハルは、すぐにマツの気持ちの動き(武造以外の男との結婚を考えてること)を悟った。

ハルがマツに言った
「オメーは、その下駄屋の息子と結婚してもええと思っているんだか?」

マツがこたえて言った
「その時は、断っただー、行商しなくてもええと聞いたときには、いい話に思えたけど・・」


ハルは、マツが武造のことをどう思っているかを聞いてきた
「んだかー、オメーもいい年頃になっってきたから嫁にもらいたい人はおるべー、んで、オメーは武造のことはどう思っているだかー?」

マツは、少し黙ってから自分が考えていることを話し始めた
「武造は好きだけどオラにとって武造は、あんちゃのようで・・オラ・・・結婚相手は普通の健康な男がええと思うようになったんだ・・」

ハルは、マツの気持ちを理解できますが、養女にだしたときの関衛門とヨネとの約束があった。
また、体が弱かった武造がこの年齢まで生きるとも思っていなかった・・・今となって約束を破ることはできない・・。

ハルが言った
「マツ、オメーが武造と結婚したくないのは武造が耳がきこえねーからか?」

マツはこたえて言った
「んだ、それに村の人たちの目も気になるんだ・・」


ハルは、身体障害者の家に対する村人たちの偏見が強く、マツが武造と結婚したら、その偏見に耐えながら生きていかなければならないことも分かった・・。

ハルが言った
「オメーの気持ちはよーく分かる、でも、あっちの親と約束したんだ、あっちのお父とお母は、自分たちの家系が途絶えてしまうことをとっても心配しておったんだ、それだけではねー・・・オメーが養女にいったころは、うちも皆が食べていくのに苦しかった・・・んだから、オメーも養女にいくとご飯を腹いっぱい食わせてもらえるということだったんだ。」


たしかにマツは、ご飯をてんこ盛りで食べてきた、お腹をすかして寝ることはなかった・・
それでも、いざ結婚となると気持ちが揺らいだ・・。

マツは吾介のことも話した
「この前、吾介と会ったんだ、オラが養女として苦労してきたからせめて結婚相手は、普通の健康な男と一緒になって幸せに暮らしてほしいと思っていると言っておっただ、オラの幸せを考えてると言ってただ・・。」

ハルは、吾介がそのようなことを言ったことに驚き、そして、吾介がマツに好意を持ってることを悟った。

ハルが言った
「吾介がそんなことを言ったんだかー!・・・んで、オメーは何てこたえたんだか?」

マツは、吾介に結婚のことはまだ考えてないと言ったと話した。

それを聞いてハルは、少し安心した、そしてなるべく早く武造と結婚させなければいけないと思った。

ハルが言った
「武造は耳がきこえねーけど、オメーたちは小さいときから一緒に暮らしてるから互いのことは分かってるベー?」

うなずくマツ・・。

ハルが言った
「武造との結婚はどうしてもイヤだかー?」

マツはこたえて言った
「どうしてもイヤというわけではねーんだ、でも・・結婚した後のことも考えたりすると悩んでしまうんだ」

ハルはマツの気持ちに理解を示しながら、武造の気持ちにマツの注意を向けた。

ハルが言った
「武造はオメーと結婚する気でいるではねーか?オメーが養女にいったときから、武造はオメーのことを本当に可愛がってくれてたでねーか?」

それを聞いてマツは、小さい時からのことを思い出した。


武造が自分の髪を梳いてくれたことや、自分に着物をきせて紐を「ちょうちょ結び」にできたこと・・・

自分が学校に通った少しの間の一緒の登下校・・

「耳きんかの家」と言われ、学校でのいじめに遭ったとき武造が守ってくれたこと・・

また、自分が寒い中、行商に行ったときに武造が、自分の帰りを玄関でずっと待ってて「しもやけ」になった手を武造が自分の手で覆いながら息で暖めてくれたことなど・・・・

マツは武造がいたから養女としてのつらい生活も乗り越えてくることができたと思った・・・。


マツはさらに思った

(身体障害者に対しての村人の偏った見方は今だ変わらねー・・・・・耳が聞こえねー武造は、オラが結婚してあげなければ、きっと誰とも結婚出来ねーんだ・・・)

そう思い、マツは武造を可哀そうに思った。

マツはハルに言った
「武造は耳がきこえねーだ・・オラが結婚してあげねーと、武造は誰とも結婚できねーな・・。」

ハルが言った
「んだ、オメーの言うとうりだず、武造はオメーとしか結婚できねーんだ・・村人たちの目は気にしねーことだ。」

このようにマツが武造との結婚に気持ちが向き始めたころ、村で祭りが行われた。

その祭りでの出来事は、武造を大いに悩ませ、武造とマツの結婚に大きな影響を与えることとなった。

ラベル:結婚話 悩む
posted by junko at 14:34| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月20日

結婚も親が決めたことは絶対! 第82回

十代後半になり法的にも結婚ができる年齢になっていたマツは、自分の配偶者について真剣に考えるようになった。

マツは、幼少のときに親同士で決めたろうあ者の武造との結婚のために、養女として武造の家で暮らしてきた。

自分が養女になった目的を自然と分かってきたが、そのことをこれまでマツ自身が本気で考えたことはなかった。

ところが、いざ、自分が結婚となるとマツの気持ちは揺らいだ・・・。

武造とマツは、仲の良い兄弟のようにして育ってきた。

マツは、武造を兄のように慕い、武造はマツを妹のようにかわいがってきた。

それでも、結婚となるとマツは悩んだ・・


(村の人たちはオラたちの家を身体障害者の家と偏ってみてる・・・オラがほんとにこのまま武造と結婚したら村の人たちはどう思うべか・・?いままで以上にオラたちにたいして悪く思う人がいるんではねーべか・・?)

(普通の健康な男の人と結婚したらどうだべか・・・武造とは出来ないこと、もっといろんな話をいっぱいして笑ったり泣いたりできるんではねーべか・・?)

いろいろな考えが頭を駆け巡り、マツは結婚は普通の男性としたいと思うようになってきた。


そのように考えていたころ、関衛門とヨネからマツに結婚についての話があった。

ヨネがマツに言った
「大事な話がある、そこさ座れ」

マツは何となく感じた・・

(結婚のことでねーべか・・)そう思いながら座った。

関衛門がマツに言った
「マツ、オメーもそろそろ結婚しても良い年頃になってきたなー」

(やっぱり・・)

マツは黙ったままでいた・・

関衛門が言った
「オメーを養女にしたのは、武造と結婚させて家系を存続させるためだ、そのことは分かっておるべ?」

マツはうなずいたが黙ったままでいた・・

武造もオメーも結婚できるいい年齢だ、そろそろ結婚はどうかとおもっているんだ、近いうちに式を挙げるのはどうだべか?}

マツは本心を言えないでいた・・もちろん当時では、親の言うことは絶対だった。

親が決めた結婚、子はそれに従う、それが当たり前の時代でマツが普通の男性と結婚したいと言えるはずもなかった。


黙ったまま、何も話そうとしないマツを見て関衛門が言った
「実際に結婚となると誰でも最初は気が引くもんだー、ゆっくり気持ちを落ち着かせて考えたらえぇぞ。」

その関衛門の気遣いある言葉にマツは、すぐに「はい」と言わなくてよかったので少しばかり“ほっ”とした。


マツは、親が決めたことを翻すことは難しいと分かっていたが、武造との結婚を素直に受け入れられなかった・・

ここにきて初めてマツは、自分の人生について考えるようになった。

悩んだマツは、結婚のことを実の親に相談に行くことにした。


一方、武造も関衛門とヨネからマツとの結婚のことを話された。

武造にとってマツは、かわいい妹だった。その妹と結婚する・・

武造は、親がそう言うなら“マツと夫婦になる”・・・素直に受け入れた。


実家に相談にいったマツは、実の母親(ハル)に言った
「お母(おかー)、オラ、結婚は嫌だず・・」
ラベル:絶対 結婚
posted by junko at 15:51| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月18日

結婚の申し込みを受けるマツ 第81回

(武造と結婚・・?)

マツはこの時まで、武造のことが結婚相手とは真剣に思っていなかった。

しかし、吾介の武造への偏見が気にさわった・・。

マツが吾介に言った
「武造は、耳が聞こえねーけど悪い人ではねー、オラのことを小さい時から大事にしてきてくれてる優しい人だー、お父とお母はオラと武造を結婚させるつもりだけど、オラはまだ結婚するつもりはねーんだ」

それにたいして吾介が言った
「たいがいは親の決めたとおりになるもんだ、んだけど、オラは、オメーが気の毒でたまらねーんだ、オメーは小さいときから養女に行って苦労してきたべー、だから、せめて結婚相手は普通の健康な男と一緒になって幸せに暮らしてほしいと思っているんだず」

(普通の健康な男性と・・・)

吾介の言葉はマツの心にひっかかった・・

マツは、武造を好きでしたが、マツにとって武造は優しい兄のようで配偶者になる人とは思えなかった・・

それに、マツも思いの中で、結婚は普通の人がいいかなーというのが正直なところである。

耳が聞こえない大変さも分かり、それによって村人からの偏見もつらいものだった・・・。

マツが黙っていると吾介がさらにマツに言った
「オラはオメーの幸せを考えてるんだ、武造と一緒になるとオメーの将来はずっと苦労の連続になるぞ、人生はオメーのもんだ・・」

吾介はさらに続けた
「オラと一緒にならねーか、オラは小さい時からオメーのことをおもってきたんだ、オメーが学校に行けなくなって暑い日も寒い日もじっと辛抱しながら行商している様子を見て気の毒でしかたなかった・・・」


当時は子供の行商は普通だったが、マツがその行商をつらく思ったのは野菜が全部売れるまでは、途中で家に帰ることを許されていなかったことである。

寒さが厳しい日など、他の行商の子供たちは家に帰ってもマツはそれができなかった。

マツは、手足がしもやけで痛くても野菜を完売した。

そして、家に帰るとヨネが野菜の売上金が合っているかどうかを調べた。

毎回、緊張のひとときである。


(武造と結婚するとずっとそれが続く・・・・)

黙っているマツに吾介がさらに言った
「オラはオメーとだったらオラたちの結婚に親たちがどんなに反対しても乗り切れると思うんだ。」

自分を熱い視線で見る吾介の言葉に戸惑うマツ・・。


マツは、吾介の結婚の申し込みに驚いたが、その場は丁寧に去ることにした。


このように結婚の話が出るようになって、マツは自分の結婚相手について真剣に考えるようになってきた。

関衛門とヨネから、まだ結婚についての具体的な話はなかったので、ほんとに自分は武造の嫁になるんだろうか・・?と考えはじめた・・・。

一方、武造はマツのことをかわいい妹のように思っていた。

ラベル:申し込み 結婚
posted by junko at 15:59| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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