「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年11月07日

罰あたりを暴く夢?第109回

関衛門が帰ってから、それほど時間が経っていないのに武造とマツが来たことで小吉は、自分が疑われてることを感じた・・

何食わぬ顔で小吉は言った
「よー、耳きんか(つんぼ)ではねーか、オラの家に何の用だ?」

(耳きんかと言うでねー、武造とちゃんと名前で呼んでけろ!)とマツは心の中でつぶやいた。

マツは関衛門が持たせてくれた“雪菜”を差出して言った
「これ、おすそ分けだ!」

雪菜をもらいと気分を良くした小吉が言った
「おー、これはありがてー、マツ、オメ―赤ん坊ができたんだってなー、うちには何もねーけど“お茶っこ”だけでも飲んでいってけろ!」

そう言って小吉はお茶を準備した。


武造は、玄関に腰かけお茶をごちそうになりながら“ちらっ”と家の中に目をやった。


古くて黄色っぽく変色しボロボロの襖の上部には、立派な“欄間”がはめられていた。


マツは、落ち着かなくなった武造の雰囲気を敏感に感じ取った。



武造が、身ぶりで小吉に話しかけ始める・・

武造の身ぶりの意味を理解できない小吉はマツに言った
「武造は何を言うてるだかー?」


武造は、腕を頭のところに持っていき横にした後、五本指を頭の上で花が開くように“ぱっ”と開きいた。


「武造は、夢を見たと言うてるだー」とマツ。


武造の身ぶりは続く・・

マツは武造の身ぶりの意味を小吉に説明した
「御輿(みこし)をみんなで担いで山に登っていったんだと。」

小吉が言った
「ほー、それは縁起の良い夢ではねーか!武造もそれに加わってたんだかー?」

小吉は、武造が今まで御輿を担ぐことに加わらせてもらえないことを知っててわざと嫌味を言った。


(そんな嫌味を言うでねー)とマツは心の中で言いながら、武造の身ぶりを見て、その意味を理解しようと努めた。


武造の夢の話が続く・・

「みんなで“御輿”を担いで山に登って行ったんだけど頂上になかなかたどり着かない!といった夢のようだ!」

マツは、武造の身ぶりから御輿を担いで山に登った皆が、焦ってきていることが分かった・・・


「山の中をぐるぐると同じ場所をまわっていて、どうしても頂上にたどり着けない・・らしい・・」

興味深そうに小吉が言った
「ほー、それは変わった夢だなー」

マツが続けて言った
「雨も降ってきて、稲光がしてきた・・・・」


ますます身を乗りだしてマツの解説に耳を傾ける小吉。


「御輿を担いでいる皆はとても疲れてきた・・・・そして・・皆が不安そうな顔をしてきた・・・何故、頂上に着けないのか?と・・・。」


さらにマツは、武造の身ぶりを見ながら話しを続けた・・


「これはただ事ではねー、この山は皆が慣れてる山だし、このように頂上にたどり着けないということは今まで一度もねー、これは神様が、御輿を担いできても喜ばないということではねーか・・と・・。」


武造は夢の話を続けた

そしてマツが武造の夢の解説をする。

マツは神妙な顔で言った
「御輿を担いでいた皆が、互いに言い合い始めた・・・・この中の誰かが、“罰あたり”なことをしたんではねーか・・?」

「罰あたり・・・」・・・小吉の表情が少し堅くなってきた。


マツが言った
「武造は、雨と稲光がする中で、『誰が罰あたりなことをしたんだ』と、皆が言い合っているところで目が覚めたということだ」

マツが話し終えたときには、小吉の顔は青くなっていた・・・。


その小吉を見ながらマツは淡々と続けた
「武造は変わった夢を見るもんだなー、誰かが『罰あたり』なことをしたんではねーか・・?という夢を見るなんてなー」


「・・んだなー」と応える小吉の声は弱々しく、やや震えていた。
ラベル:罰あたり
posted by junko at 15:28| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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