「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年11月08日

作り話の夢 第110回

「顔色が悪いではねーか・・・気分でも悪いんだかー?」とマツは小吉にあえて優しく聞いた。

小吉がこたえて言った
「何でもねー・・・大丈夫だ・・・」

小吉は呆然と武造の顔を見詰めた。


武造はそれ以上話そうとはせず、ぺこりと頭を下げてお茶のお礼をした。

(武造は欄間のことを言うんだべか・・?)

マツはそう思ったが、マツの考えとは違い、武造はそれ以上言おうとはしなかった。

武造はマツの目を見て「帰る」といった。

夢の話しをそれ以上しないと分かったマツは小吉に言った
「お茶ごちそうさま、ほんじゃー帰るべー」

そう言ってマツはぺこりと頭を下げ、お茶のお礼をした。


何も載せていないソリを引いて武造とマツは、小吉の家を後にした。

マツは思った・・

(武造は何のためにソリを持って来たんだべ?欄間を取り返すんではなかったんだべか・・?)


しばらく歩いた時に、後ろで声がした。

「待ってけろ!」と小吉が二人の後を追ってきた。

「オラの家にまた来てけろ!渡してー物があるんだ・・・」

そう言う小吉の顔には困惑の表情が浮かんでいた。


小吉は2人を家の中に招じ入れ、「すまねー・・・」と土下座した。

「この欄間はオラがオメーたちの新しい家から盗んできたものだ・・・やっぱり・・神様の目はごまかせねー・・・持って帰ってけろ・・・」

そう言いながら小吉は何度も額を畳につけて謝った。


小吉は、武造の夢の話しを聞いて、自分が『罰あたり』なことをしたということで神様を恐れた。

何度も謝る小吉にマツが言った
「正直に話してくれてありがとうな」


武造が襖や障子に目をやっているのを見てマツが小吉に聞いた
「ところで、新しい家の襖と障子が古いものと入れ替えられていたんだけど、誰がやったか知らねーか?」

小吉はますます困惑した表情を浮かべ・・・・「言えねーだ・・・」と力なくこたえた。

マツが言った
「んだかー・・・、まーえぇー・・」


欄間をソリに載せて武造とマツは小吉の家を後にした。

マツは、(立派な欄間だなー)とソリに載っている欄間を見ながら歩いた。


二月末の気温はまだまだ寒く、家に向かう二人の息が白くなった。


途中、武造が突然笑い出した・・・。

「武造、どうしたんだかー?」

マツは武造の顔を見た。

武造は立ち止り、腕を頭のところに持っていき横にした後、五本指を頭の上で花が開くように“ぱっと”開いた。

マツが言った
「夢がどうかしただかー?」

武造の身ぶりは・・

なんと、あの夢の話しは「作り話」だということだった。


武造は、小吉が神様を恐れ、自分から白状することを願い、小吉が盗みをしたことを神様は見てたということを、「作り話の夢」で訴えたのだった。

(そうだったんかー・・)

マツも笑いが出てきた

「アハハハ・・・」

武造とマツはしばらく笑いながら家に向かった。


事を荒立たせずに「作り話の夢」で小吉の心を動かし、欄間を取り戻せたことで武造を感心するマツだった。

しかし、やはり気になった・・

(欄間は取り返した、でも・・襖と障子を盗んだ犯人は誰だべ・・・?)

ラベル:作り話
posted by junko at 17:10| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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