「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年11月14日

気持ちが和らぐ甘酒 第113回

ヨネが武造とマツに言った
「甘酒を持っていくどー、そろそろ一服する時間だ!」

約2km離れた隣村の新しい家には、曳き家たちと村の男の人たちがたくさんいた。


突然、
「なんだー!?小吉、オメーどうしてここにおるんだー!?」と怒りと驚きが混じったような声がした。

引っ越し現場を見にきた吾一だった。


小吉は、吾一の怒りを感じてたじろぎ言葉に詰まった・・・。

憤然としている吾一に関衛門がごく普通に言った
「おー、吾一、ありがてー!!引っ越しの加勢にきてくれたんだかー?」と声をかけた。

吾一が言った
「何を言うてるだー、オラ、加勢に来たのではねー、少し見にきただけだ、小吉、帰るど!!」

そう言って吾一は、小吉の手を引っぱり帰ろうとした。

小吉が吾一に言った
「オラ・・ここで手伝うんだ・・」

それに対して吾一が声を荒げて言った
「なんだ・オメー、オラの言うことが聞けねーのか!?オメー、関衛門に何て言われてたぶらかされたんだ?」

少々弱きになりながら小吉が言った・
「たぶらかされてるのではねー・・・」

そこで関衛門が吾一に言った
「引っ越しに小吉がいると助かるから、オラが手伝いを頼んだんだ、オメーも加勢してくれたら有難てーんだが・・加勢してくれねーか?」

吾一が言った
「なんでオラが手伝わないといけねーんだ!?はよー小吉、帰るど!」

吾一は、何が何でも小吉が引っ越しを手伝うのが気に食わない様子だった。


吾一が襖と障子の事件にかかわってる犯人だと知っていた武造は、関衛門が吾一の仕業を暴いて欲しいと思っているようだった・・

マツも武造と同じように思っていた・・

だが・・関衛門は、吾一に対して声を荒げることもなく、疑いの目で見ることもなく、避けることもしなかった・・


関衛門の態度や表情は、ただただ普通に吾一に接しているように見えた・・。


(吾一は襖の犯人なのに・・・なぜ?普通にして何もなかったかのようにしてられるんだろう・・?)とマツは関衛門を不思議に思った。


そこへ・・・・

「仕事の邪魔をするでねー!!」

太くて低くドスの利いた声がした・・

曳き家の棟梁が吾一に対して怒鳴り、その切れ長の目が、“じろり”と吾一をにらんだ・・。


(おっかねー・・・・・(こわい))
マツは自分に対してではないのに、そう思った。


棟梁から怒鳴られ、にらまれた吾一・・

ドスの利いた声の棟梁には刃向かえず・・緊張した雰囲気が現場に流れた・・


そこで関衛門が、棟梁と働き人たちに言った
「そろそろ一服にするべー、甘酒を飲んで少し休んでけろ」

「甘酒だ!有難てー!」
緊張気味だった現場の雰囲気が少し緩和した・・

不機嫌な顔の吾一に関衛門が言った
「甘酒だ、オメーも飲んでけろ!うめーど!」

目の前に差し出された器から甘酒の香りがする・・

吾一は甘酒の良い匂いにつられ・・
「せっかくだから、これだけはいただくべー」

吾一は、美味しそうに甘酒を飲みほした。

甘酒を飲み、気分が少し和らいだ吾一は、小吉のことはあきらめて帰っていった。

帰っていく吾一の後ろ姿を見ながらマツが関衛門に聞いた
「吾一が襖の犯人なのにどうして、何もなかったかのようにするんだかー?」

それにこたえて関衛門が言った
「あのことは、もう終わったことだ!今とこれからが大事だ!終わらせたことを何時までも根に持っていると、それが表面に出てきて普通に接することができなくなるではねーか」

マツが言った
「普通に・・?」

関衛門が言った
「んだ、もし・・避けたり、にらんだりすると相手をますますかたくなにさせてしまうではねーか・・・・・

だから、ただただ普通に接していると、相手もそれ以上はかたくなになることはねー、吾一ともこれからも同じ村で生きていかねばならねーからな」


よそ者として見られ、偏見を耐え忍びながら暮らしてきた関衛門は、自分の言動が村人にどんな影響を与えるかを常に考えていた。


棟梁のますます気合の入った大きな声がした
「皆、甘酒を飲んでますます力が出たベー!よーし!次は枕木を並べるんだ!!家を移動させていくどー!!」

「おー!!」皆の気合いの入った声をが響く!


棟梁の声に合わせて、慎重にロープを引っぱると、ソリをはかせた大きな家が、枕木をレールのように並べた上を“じわじわ”移動してしていく・・・


(あっ!!家が動いた!!)

家がまるごと動くのを見てびっくりするマツ。

武造も目を見開き“じっと”見ている・・驚いているようだった・・!!


(すごい!・・・家がまるごと動くなんて・・)

マツは、枕木の上を慎重に引っぱられて移動していく家に、目が釘付けになった。

武造がそわそわし始めた・・・


ラベル:甘酒
posted by junko at 12:20| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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