「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年11月15日

結婚式の辛い思い出・・第114回

(武造も家を引っぱることに加わりたいんではねーべか?)

マツは武造の表情から胸の内を察した。

「よ〜し、まずはここまでだ!!」
棟梁(とうりょう)のドスの利いた声で引っぱる作業が止まる。

家を引っぱり移動させていく作業は、慎重に慎重に進められていく。


武造が、「自分も加勢したい!」と関衛門にいった。

関衛門が棟梁に言った
「武造は、耳が聞こえねーけど、感はいい、加わらせてけろ」

「おー、いいどー!」と快く受け入れる棟梁。

喜び勇んで加わる武造。


棟梁(とうりょう)の指図で、家はゆっくりと枕木の上を順調に移動していく。


武造の仕事ぶりを見た棟梁は驚いた!!そして思った。

(武造は、本当に耳が聞こえねーんだべか?オラの声に合わせて、皆と一斉に動いてるではねーか・・?まるで・オラの声が聞こえてるよーだ・・)

棟梁が関衛門に言った
「武造は本当に耳が聞こえねーんだか!?少しは聞こえてるんではねーか?」

棟梁は、武造の感の良さが信じられないようだった!。


関衛門が棟梁に言った
「武造は、全く聞こえねーんだ!」

驚き、すっかり感心した棟梁は、「武造!オメーは大した者だ!」と武造の肩をポンポンとたたいた。

棟梁に褒められて嬉しそうな武造。


村の男の人が言った
「そういえば、以前に軍事教練のことで武造のことが新聞に載ったことがあったなー、武造が皆と一糸乱れずに動いたと褒めておったなー」

「あー、そうだった!そうだった!」と加勢していた村の人たちが、口をそろえて言う。


(軍事教練・・・新聞に載った・・・)

家がまるごと移動する様子に感動していたマツの心が・・急に・・くもってきた・・

(あの軍事教練に武造が行かなければ・・・新聞に載らなければ・・・埼玉のおなごの人からの手紙も来なかったのに・・・・)・・・


マツの目は大きな家を見ていても、その映像が何も脳に映っていないかのようになった・・

頭の中は、結婚式の辛い思い出がいっぱいよみがえってくる・・・・

(武造は・・あの手紙を離そうとしなかった・・結婚式のとき・・山に逃げた・・・武造がなぜ・・?)


花婿代理で三三九度をした場面・・・武造が山から連れ戻されてきた場面・・・そして・・惨めな気持ちになっている自分を村人たちが見ているところ・・・


ちょっとした会話などをきっかけに、結婚式の辛い思い出が、容赦なく呼び起こされた・・。


(オラの人生って・・・)結婚式の辛い思い出がマツの心をくもらせ・・

(やり直しがきかない過去の出来事・・・その記憶が消えてしまえばどんなに楽だろう・・・)


(幸せいっぱいの結婚式・・幸せいっぱいの花嫁・・・オラ・・そうなりたかった・・・)


マツは皆と働いている武造を見た・・・
posted by junko at 16:18| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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