「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年11月21日

通行料?第116回

「オラの田んぼの上を通るな!」

自分の田んぼの上を通ることを拒否する村人は、関衛門が家を買って、それを引いてくるのを快く思わず、(よそ者のくせに生意気だ!)と思っていた。


関衛門は、自分に対しての強い偏見を感じながらも自分を制し・・

穏やかな口調で田んぼの持ち主に言った
「すまねー、オメーの田んぼの上を通らねーと進まねーんだ、通してくれねーか・・」

「ダメだ!通さねー!」と断固拒む村人。


どうしても通してくれないと分かった関衛門は、酒を持って行き
「この酒はオメーの田んぼの上を通してもらうお礼だ、受け取ってけろ!」


ところが、村人が言った
「こんなものでオラの田んぼの上を通るつもりだかー?持って帰ってけろ!」


関衛門は、ヨネと話し合いお金を渡すことにした。

これは、予定外の出費になった。

どうしても田んぼの上を通さないと言い張る村人に、関衛門は言った
「どうか・・酒と・・この金を受け取ってけろ、これでオメーの田んぼの上を通してもらえねーか・・?」


関衛門が差し出したお金を見た村人は言った
「そうだなー・・これはオラの田んぼの上を通る通行料ってことだな、それなら通ってえぇーど。」

村人はすぐに金を受け取り、通行を許可した・・その田んぼの上を大きな家がゆっくりと通っていく・・。


家が移動する距離は、目的地まで約2kmあった。

それまでに何人もの人たちの田んぼの上を通らなければならなかった。


マツは心配になって関衛門に言った
「このことが村の噂になって・・田んぼの持ち主が皆、通行料だと言って酒とお金を要求してくるんではねーべか・・?」

関衛門がマツに言った
「心配しなくてもえぇー、これまでの人たちは通してくれたんだ、確かにオラたちはこの村ではよそ者として見られてるけど、村人皆が同じようにオラたちに敵対しているわけではねー」

マツは、力を込めて家を引く仕事をしている男の人たちや、結婚式のときに自分を慰めてくれたお年寄りたちのことを思い浮かべた・・・。

(んだなー・・皆が、通行料を要求することはねぇー・・)

関衛門がマツに言った
「この村の人たちを十把一絡げに見ないようにしないといけねーな。」


その後、家は毎日、順調に移動していき・・・

関衛門が言ったように、田んぼの持ち主の皆が通行料を要求することはなかった。

中には、「引っ越しはたいへんだべ!がんばれよ!」と言って励ましてくれたり、漬物をくれたりする人もいた。


(お父が言ったとおりだ・・・親切な人たちもいるだ・・)


ところが、

田んぼの持ち主の数人は、通行料を要求してきた。

「オラの田んぼの上を通るな!」

そのたびに、酒とお金を渡して通してもらうことになった・・・。


ヨネが不安そうに言った
「この通行料は、引っ越しのための計算に入れてなかった・・・これからの生活費だったもんだ・・あと・・・これから吾一の田んぼがある・・通してもらえるべか・・・」

通行料として払ったために、この時点で、関衛門の家の経済状況は厳しくなってきた。

(吾一の田んぼが・・・簡単には通してもらえねーかもしれねー・・)マツは心配になった・・・。

posted by junko at 13:03| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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