「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年11月23日

竹を割ったような性格 第118回

(武造がまた何かを考えたんだべか・・?)

漬物を持って出かける武造にマツはついて行き2人は吾一の家に向かった。

マツは思った・・・

(今度も作った夢話をするんではねーべか・・?)


吾介の嫁の「タケ」が吾一の家から出てきた。
タケは、やや大柄で「竹を割ったような性格の人」だった。

武造は、持っていた漬物をタケに渡し、頭を下げ・・手ぶり身ぶりで田んぼの上を通してほしいと頼みはじめた・・

武造の表情はいかにも物悲しげだった・・・!

武造はタケに言った
「移動中の家で中途半端に住むのはわびしく、落ち着いて眠れない」

武造の言ってることが、よく理解できないタケはマツに言った
「武造は何と言ってるんだかー?」

マツが言った
「武造は、人の田んぼの中で住む中途半端な生活では、夜眠れなくて辛いと言ってるだー」

タケが言った
「でもなー・・オラ、この家に嫁に来て長くねーから・・オラが決めることは出来ねーんだ・・」


それでも武造はあきらめず、何度も頭を下げる・・・

その様子を見て、マツも頭を下げタケに田んぼの上を通らせてくれるように頼んだ。

2人の様子をじっと見たタケが言った
「分かったず!オラがお父に話してみるから・・」

さっぱりと応えるタケは、どこかしら自信がありそうだった!


武造とマツが帰っていくところを帰宅途中の吾一が目にした・・

吾一がタケに言った
「武造とマツが何しにうちに来たんだかー?」

タケが吾一に言った
「漬物のおすそ分けを持ってきてくれたんだ・・・お父、村の人たちがしてる“ひそひそ話し”のことだけど・・」と話しを切り出した・・

「何の“ひそひそ話し”だ?」と吾一。

「オラたちの家が武造たちの家を通さないことの“ひそひそ話し”だ・・」

タケはさらに続けた
「村の人たちは、関衛門たちはよそ者だけど、田んぼの上を通ることぐらいは、大したことではねー、吾一が2週間も通さないのは、同じ村人として恥ずかしいことだ・・と話してるんだ」

「なんだと・・?村の人がそんなことを言うてるだかー?」と驚く吾一。

タケが続けて言った
「吾一は、よそ者として肩身の狭い思いをしている関衛門たちをいじめていると言うてるんだ、吾一は意地が悪いと。」

腹に力が入った声で、ハキハキと言うタケ。

少々戸惑いながら吾一が言った
「オラが・意地が悪い・・?村の人たちがそんなことを・・・オメーは誰からそんなことを聞いたんだかー?」

タケがこたえて言った
「誰でもいいではねーか!とにかくオラは、そんな意地悪な人の家に嫁に来たと思われるのは嫌だず!」

「そんなこと言われても・・・」と言う吾一にたいしてタケが言った

「ぐずぐずしてるんだったら、オラは今すぐに実家に帰るから!」。


嫁が実家に逃げ帰ったと思われるのを恐れた吾一はタケに言った
「分かったず!通してやるから、実家には帰らねーでけろ。」


実は、タケは義理のお父さんがしてることに、内心いら立っていた! タケが言ったことは自分の思っていたことだった。

また、実際にタケと同様に感じている村人もいた。


このようにして、ようやく吾一の田んぼの上を通るという通行許可がでた。

(やっと目的地に着ける!)

関衛門の家族は皆喜んだ。

が・・喜んだのもつかの間で、吾一が通行料として多額のお金を要求してきた。

吾一が言った
「オラの田んぼは、他の人の田んぼより大きいし距離もある、んだから、それ相当のお金を払ってもらわねーといけねーな!」

金の蓄えが無くなってきていた関衛門の家計が、窮地に追い込まれていたところに吾一の要求だった。

関衛門はすでに自分の家計は苦しく、要求されてるお金を払うことはできないことを話した。

嫁や村の人に自分は意地悪な人だと思われたくない吾一は、少し情け深い表情をして言った
「仕方ねーな、だったら少しまけてあげるだー、金がないと言ってるオメーからむしり取るほどオラは根性悪くねーからな!」

少し金額が下がったとしても他の人に払った金額よりは多いものだった。


吾一への通行料を払い、関衛門の家庭は経済的に苦しい生活の始まりになった・・・


外見は大きな立派な家で、いかにも金持ちのように見えたが、実際は、金がなく食べていくのに難儀をする生活が始まった・・・。


マツは武造に何故、タケに話したのかを聞いた。

武造は、関衛門たちと何度も吾一の家に行ってるうちに、タケが申し訳なさそうに自分たちを見ていたとのこと。

ハキハキして「竹を割ったような性格」のタケだったら、なんとか吾一を説得できるのではないかと思ったようだった。

たしかに、武造の思ったとおりだった。


家の引っ越しは、予定より遅れて一カ月以上かかった。


関衛門の子孫への思い(よそ者ではなく、この村の人として村人に受け入れられるため)で購入した家と田んぼで新しい生活がはじまった。

関衛門の家が所有する田んぼで、初めて米を作ることが始まり、経済面をゆとりあるものにするため、米作りに意欲を燃やした!

ところが・・・・状況は順調にはいかず、マツも養女としてきて、初めて経験する試練に直面する・・・

posted by junko at 15:36| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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