「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年11月26日

平和を生み出す性質 第121回

下駄屋の女将がマツに言った
「オラの息子の嫁が今、実家に帰ってるんだ・・嫁は短気で、嫌なことがあったらすぐに怒って実家に帰ってしまうんだ・・・・」

女将は、嫁のことで思い悩んでいた。

女将は、マツをじっと見て話しを続けた
「マツ、オメーと武造の結婚式のことを言うと、オメーが辛くなるかもしれねーが、オラ、あの時オメーが気の毒でならなかった・・・正直なところ、オメーたちが、あのような結婚式の後、うまくやっていけるとは思わなかったんだ・・」

(オラたちの結婚式・・・)

マツは、黙って聞いていた・・


「オメーはあの後、じっと辛抱していたし、武造ともうまくやっている、それは、そう簡単に出来るもんではねー、オメーの人を憎まない、そして、人の良い点を見ようとする性質が平和を生み出すんだ!」


さらに、女将は話しを続けた
「最近、武造を見かけたが、幸せそうだった、オメーが結婚式のことで、武造にきつくあたっていないからだ、オラ、ほんとにオメーを嫁に欲しかったず・・」

女将の真剣な表情には、日頃、嫁との不仲の苦労が表れていた。


女将は「その、山菜もらうべー」と言い、籠に残っていたワラビとゼンマイを買ってくれ、籠は空っぽになった。


マツは、女将に褒められたことが嬉しい反面、複雑な気持ちがした。


(オラ、完全に武造を許しているんだろうか・・?)


マツは、自分の気持ちがはっきり分からなかった・・・

それでも、武造が純真な目で自分を見るときマツは感じることができた・・

(武造の真っすぐな目・・武造はオラを好いてるだー)

確かに、マツを見る武造は幸せそうだった。

武造のマツに対する気持ちは、その純真な目を通してマツに伝わり、マツは自尊心を取り戻していった。


しかし、自尊心を取り戻していっては、また・・・結婚式のことで辛い思いを感じるマツだった・・。


家に戻ったマツは、腰をおろし下駄屋の女将との話しを思い返していた。

時々、「はぁー」とため息をついてるマツに関衛門が気づいた。

マツの後ろ姿が、いつもと違うように感じた関衛門はマツに言った
「行商で何かあったんだかー?」

マツが黙っていると・・

関衛門が言った
「誰かに何かを言われたんだか?元気がねーではないか・・」

自分の気持ちの変化に気づいてくれた関衛門に、マツの心が開いた
「下駄屋の女将が・・オラのこと、褒めてくれたんだ・・・でも、オラ・・・」

そう言うと、マツは言葉に詰まり・・目に涙があふれてきた・・・

ラベル:平和 性質
posted by junko at 15:34| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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