「武造とマツの物語(新)」

【小説】 身体障害者に理解がない時代にマツは、幼少のとき親同士で決め

た「ろうあ者」との結婚のため養女にいく。偏見や逆境に遭いながらも前向きに生きていく。



2011年12月02日

心の怪我に効く薬 第124回

(お父の言うとおりだ、武造はオラを嫌いではねー、好いてくれてるだー・・)

結婚式という人生の大事な一面で大きく躓いたマツだったが、結婚式よりその後の方が大事だと理解したマツは、心に“ず〜ん・・”とのしかかるような重い気持ちが軽くなり、より前向きに見れるようになった。

マツは、体に力が湧いてくるように感じた。

(腹が減ったず・・)

少し元気を取り戻したマツの体は、すぐにご飯を要求してきた。

お腹の赤ん坊が育つにつれ、空腹がきつくなってくる・・

(ご飯、釜にどんくらいこびりついてるべか・・?)

ご飯を食べながら、マツの視線は自然と釜の中に向く・・・


マツの視野の脇に、ご飯が半分残っ茶碗が差し出されたのに気付いた!

ひもじく感じているマツに「これ、食ってけろ」と武造が、自分のご飯半分をあげようとしていた。

ヨネが言った
「武造、オメーもご飯食わねーと、田んぼ仕事するのに力が出ないではねーか!マツ、ご飯はねーけど味噌汁はおかわりできるど。」

ところが、武造は身ぶり手ぶりでいった
「マツがかわいそうだ、マツはご飯が大好きだから自分の分を半分あげるんだ」

(武造は、オラの気持ちを分かってくれてる)
マツは、そう思い「愛情という薬」を塗ってもらったように感じた。

(でも、武造のご飯をオラが食べたら・・武造に悪いず・・田んぼ仕事も体使うし・・)

マツが躊躇していると、

関衛門がマツに言った
「武造がそう言ってるんだ、食べてもいいではねーか」

それを聞いたヨネが言った
「んだ、食べたらえぇだー」

マツは武造のご飯をもらうことにした。

(旨い!♪)

美味しそうに食べるマツを見て武造も嬉しくなった。

そして自分は味噌汁をおかわりして食べた。

武造からもらったご飯もすぐに食べ終えたマツは、まだお腹が満ちなかった。

(ご飯、腹いっぱい食いてー・・・)

マツは洗い場で、釜の内側にこびりつき、堅くて、しゃもじでは取れないぺったんこのご飯を水でふやかして取り、それを食べた。

(武造、オラの事を気遣ってくれてるだ・・)

愛情という薬を塗ってもらってマツの心は、ふやけて“びちゃびちゃ”した冷たいご飯でもいっそう美味しく感じた。

(なかなか旨いず!♪)


マツは、秋にはふっくらとした白いご飯を食べれることを期待した。

しかし、その期待どおりにはいかなかった・・・

(なんだか、肌寒いず・・)

朝晩は、うわっぱりをはおらないと寒く感じるほど、その年の夏は曇りが多く日照不足だった。

関衛門の家にとって、自分所有の田んぼでの初めての米作りだったので期待は大きかったが、冷夏で米は思うように生育しなかった。

経済的にゆとりを取り戻すことを願って植えた稲は、不作という結果だった。

どこの家の田んぼを見回しても、米の生育が悪くその年の米は不作だった。

ヨネが言った
「今年は、米が不作だけど切り詰めたら大丈夫だ。」

(切り詰める・・・まだ、ご飯腹いっぱい食えないのか・・・)

マツは、経済的に厳しい生活が続くことを知った・・・
ラベル:心の怪我 効く
posted by junko at 10:40| Comment(0) | 新・武造とマツの物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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